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平成12年函審第52号
件名

貨物船第三勘成丸貨物船ハッピー スター衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年3月22日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(酒井直樹、大石義朗、織戸孝治)

理事官
東 晴二

受審人
A 職名:第三勘成丸一等航海士 海技免状:三級海技士(航海)

損害
政宝丸・・・釣り機等を損傷、船尾外板に破口
大彦丸・・・船首球状部に亀裂

原因
政宝丸・・・気象、海象に対する配慮不十分

主文

 本件衝突は、第三勘成丸を追い越すハッピー スターが、動静監視不十分で、第三勘成丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第三勘成丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年5月28日01時36分
 北海道恵山岬北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三勘成丸 貨物船ハッピー スター
総トン数 492トン 3,997トン
全長 35.69メートル 36.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 514キロワット 404キロワット

3 事実の経過
 第三勘成丸(以下「勘成丸」という。)は、主として北海道函館港から北海道南部の諸港に砕石を輸送している船尾船橋型の鋼製貨物船で、船長GがA受審人ほか3人と乗り組み、平成11年5月27日11時30分砕石850トンを載せて北海道函館湾上磯町日本セメントシーバースを離れ、同日12時45分同シーバース沖合に投錨仮泊して荷ならし作業を行ったのち、船首2.75メートル船尾4.80メートルの喫水をもって、19時30分同錨地を発し、北海道苫小牧港に向かった。
 G船長は、抜錨したとき、航行中の動力船の灯火を表示し、目的地までの航海時間が約8時間であったことから、船橋当直を同人と一等航海士の2人による4時間交替の単独当直とし、発航操船に引き続いて船橋当直に当たり、機関を約10ノットの全速力前進にかけて恵山岬の南東方約2海里の地点に向け東行したのち22時52分同地点を通過したとき苫小牧港に向け左転し、翌28日00時00分恵山岬灯台から、034度(真方位、以下同じ。)10.6海里の地点に達したとき、針路を020度に定め、苫小牧港入航時刻調整のため機関を半速力前進に減じ、8.5ノットの対地速力で自動繰舵により進行した。
 G船長は、00時30分恵山岬灯台から030度14.7海里の地点に達したとき、右舷船尾3度6.5海里にハッピースター(以下「ハ号」という。)の白、白、紅3灯を初めて認め、その動静監視に当たっていたところ、数分後に自船を追い越す態勢で北上中であることを知った。
 01時00分G船長は、恵山岬灯台から028度18.9海里の地点に達したとき、次直のA受審人が昇橋したので、レーダーによりハ号の映像の方位及び距離を確認し、自船の針路及び速力のほか右舷船尾5度3.5海里にハ号が自船を追い越す態勢で北上中であることなどを同人に引き継がせたのち降橋し、自室のベッドで休息した。
 A受審人は、当直を引き継いだとき、ハ号の前示灯火を視認し、操舵室前面左舷側のレーダーにより同船の映像の方位及び距離を確認したのち、同室前面右舷側に立ったまま前路遠方のいか釣り漁船群の灯火を見ながら続航中、01時25分恵山岬灯台から026度22.5海里の地点に達したとき、右舷船尾17度1.0海里に接近したハ号が左転して白、白、緑3灯を見せるようになったが、このことに気付かなかった。
 A受審人は、01時31分恵山岬灯台から026度23.3海里の地点に達したとき後方を振り返って左舷船尾25度920メートルに接近したハ号の前示灯火を認めた。しかし、同人は、同船が自船の左方に向け転針していたことから、自船の左舷側を追い越し、遠ざかってゆくものと思い、衝突のおそれの有無を判断できるよう、ハ号の動静監視を十分に行わず、操舵室右舷側に立ったまま前路遠方のいか釣り漁船群の灯火に気を取られていたので、同時31分半ハ号が左舷船尾34度900メートルに接近したとき突然、同船が右転し、その後、自船の左舷側の衝突するおそれのある態勢で接近したが、依然、動静監視を行っていなかったので、このことに気付かず、警告信号を行わず、更に接近しても右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとることなく進行中、同時36分わずか前、レーダーを見ようとして左舷方に向いたとい、左舷船尾至近に迫ったハ号の船首部を認め、危険を感じて右舵一杯をとり機関を全速力後進としたが効なく、01時36分恵山岬灯台から026度24.0海里の地点において、勘成丸は、原針路、半速力のまま、その船尾部左舷側がハ号の右舷船首に後方から15度の角度で衝突した。
 G船長は、自室で就寝中、衝突の衝撃で目を覚まし、急ぎ昇橋して事後の措置に当たった。
 当時、天候は曇で風力3の南西風が吹き、潮候は高潮時にあたり、視界は良好であった。
 また、ハ号は、コンテナ輸送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、船長E及び二等航海士Fほか12人が乗り組み、コンテナ及び貨物2,234トンを載せ、船首4.40メートル船尾6.30メートルの喫水をもって、同月26日01時15分(現地時刻)大韓民国プサン港を発し、苫小牧港に向かった。
 発航後E船長は、航海中の船橋当直を一等航海士、二等航海士及び三等航海士の3人による4時間交替の3直制とし、各直に甲板手1人を配置して2人で当直を行わせ、日本海を北上したのち津軽海峡を東行し、翌27日22時30分北海道渡島半島の汐首岬の南西方3.5海里ばかりのところで昇橋し、船橋当直の三等航海士に対し、恵山岬の南東方約4海里の地点を通過したとき苫小牧港に向け転針すること、苫小牧港の数海里沖合で船長を起こすこと、漁船は早めに避航することなどを次直のF二等航海士に申し継ぐように指示して降橋し、自室のベッドで休息した。
 F二等航海士は23時45分恵山岬灯台から156度4.0海里の地点で昇橋し、航行中の動力船の灯火が表示されていることを確認したのち、前直の三等航海士から当直を引き継ぎ、針路を苫小牧港に向く020度に定めて自動操舵とし、当直の甲板手を前方の見張りに当たらせ、機関を全速力前進にかけ、14.5ノットの対地速力で進行した。
 F二等航海士は、翌28日01時00分恵山岬灯台から030度15.6海里の地点に達したとき、左舷船首5度3.5海里に勘成丸の白灯1個を初認し、6海里レンジとしたレーダーで同船の動静監視に当たったところ、数分後に同灯火が自船よりも速力の遅い同航船の船尾灯で、同船の右舷側を追い越す態勢で接近していることを知った。
 F二等航海士は、01時25分恵山岬灯台から027度21.5海里の地点に達し、勘成丸が左舷船首17度1.0海里に接近したとき船首遠方にいか釣り漁船群の灯火を認め、針路を000度に転じたところ、勘成丸の船尾灯を右舷船首3度に見るようになり、その後同船の船尾灯が右方に替わる態勢となったので、同船の左舷側を追い越すつもりで続航した。
 F二等航海士は、01時31分半恵山岬灯台から025度22.8海里の地点に達したとき、再び船首遠方にいか釣り漁船群の灯火を認め、針路を035度に転じたところ、勘成丸の船尾灯を右舷船首20度900メートルに見るようになり、その後同船の方位が変わらず衝突のおそれのある態勢で接近した。しかし、F二等航海士は、前示針路のまま同船の左舷側を確実に追い越すことができるものと思い、転針後間もなく操舵室後部の海図台に向かって船位の記入を始め、同船の動静を十分に監視しなかったので、その接近に気付かず、速やかに左転するなどして同船の進路を避けることなく進行中、同時36分わずか前、当直甲板手の大声で右舷船首至近に迫った勘成丸の船尾灯を認め、左舵一杯をとり、機関を全速力後進としたが効なく、ハ号は、原針路、全速力のまま前示のとおり衝突した。
 E船長は、自室で就寝中、当直甲板手の知らせで急ぎ昇橋し、事後の措置に当たった。
 衝突の結果、勘成丸は、船尾部左舷側外板に擦過傷を、ブルワークに凹損を生じ、端艇甲板のハンドレール及びボートダビットを曲損し、交通艇、救命浮環及び信号灯箱などに損傷を生じ、ハ号は、右舷船首外板に擦過傷を、船首楼右舷側ハンドレールに曲損を生じた。

(原因)
 本件衝突は、夜間、北海道恵山岬北方沖合において、勘成丸を追い越すハ号が、動静監視不十分で、勘成丸の進路を避けなかったことによって発生したが、勘成丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、北海道恵山岬北方沖合において、単独船橋当直に当たって北海道苫小牧港に向け北上中、右舷後方から追い越す態勢で接近するハ号を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船が自船の左方に向け転針したことから、自船の左舷方を追い越し、遠ざかってゆくものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、その後ハ号が右転して自船の左舷側に衝突するおそれのある態勢で接近していることに気付かず、速やかに右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとることなく進行して衝突を招き、自船の船尾部左舷側外板に擦過傷を、ブルワークに凹損を生じさせ、端艇甲板のハンドレール及びボートダビットを曲損させ、交通艇、救命浮環及び信号灯箱などに損傷を生じさせ、ハ号の右舷船首外板に擦過傷を、船首楼右舷側ハンドレールに曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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