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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成11年那審第15号
件名

押船瑞穂丸被押バージ第808住吉丸岸壁衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年2月7日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支)

理事官
上原 直

受審人
A 職名:瑞穂丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
瑞穂丸・・・損傷なし
バージ・・・船首部左舷側外板に凹損

原因
瑞穂丸・・・気象・海象に対する配慮不十分

裁決主文

 本件岸壁衝突は、風圧に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年7月14日06時15分
 鹿児島県大島郡竜郷港

2 船舶の要目
船種船名 押船瑞穂丸バージ 第808住吉丸
総トン数 117トン  
全長 23.95メートル 58.50メートル
  13.00メートル
深さ   4.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 735キロワット  

3 事実の経過
 瑞穂丸は、鋼製押船で、A受審人ほか5人が乗り組み、船首2.0メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、空倉で喫水船首1.0メートル船尾1.5メートルの第808住吉丸(以下「バージ」という。)を押し、平成10年7月14日04時30分鹿児島県名瀬港を発し、同県大島郡竜郷港の通称石切場岸壁(以下「岸壁」という。)に向かった。
 A受審人は、05時45分今井埼灯台から110度(真方位、以下同じ。)970メートルの地点に達したとき、針路を210度に定め、機関を半速力前進にかけて5.2ノットの対地速力で進行し、同時55分同灯台から177度1,720メートルの地点で機関を停止し、その後乗組員を入港配置につけ、ゆっくり右転しながら惰力で続航した。
 ところで、A受審人は、岸壁近くに浅瀬があって回頭水域が狭いことから、風が強いときは岸壁に並んだころ右舷錨を2.5節投入し、180度右回頭して出船左舷付けで接岸することにしていた。
 06時10分A受審人は、岸壁を右舷側100メートルに見て並び、折から南西風が強く圧流されるおそれがあったが、回頭を終えたころ投錨すれば大丈夫と思い、速やかに投錨して圧流を減殺するなど、風圧に対する配慮を十分に行うことなく、その後、舵と機関を種々に使用して右回頭中、突然左舷側に圧流され、06時15分今井埼灯台から197度1,900メートルの地点で、船首が087度に向いたとき、バージの左舷側船首が岸壁に衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 衝突の結果、瑞穂丸は損傷なく、バージは船首部左舷側外板に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件岸壁衝突は、強い南西風が吹いている状況下、鹿児島県竜郷港において、空倉のバージを押して着岸する際、風圧に対する配慮が不十分で、岸壁に向けて圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、強い南西風が吹いている状況下、鹿児島県竜郷港において、空倉のバージを押して着岸する場合、投錨して圧流を減殺するなど、風圧に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、回頭を終えたころ投錨すれば大丈夫と思い、投錨して圧流を減殺するなど、風圧に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、回頭中に圧流されて岸壁との衝突を招き、バージの船首部左舷側外板に凹損を生じさせるに至った。





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