日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成12年長審第43号
件名

押船第十五あおい丸被押バージ第六あをい丸漁船文栄丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月30日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(亀井龍雄、森田秀彦、平野浩三)

理事官
喜多 保

受審人
A 職名:第十五あおい丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:第十五あおい丸二等航海士 海技免状:五級海技士(航海)
C 職名:文栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
第六あをい丸・・・左舷後部ハンドレールに曲損
文栄丸・・・船首部を破損

原因
第十五あおい丸・・・各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
文栄丸・・・動静監視不十分、警告信号不履行(一因)

主文

 本件衝突は、押船第十五あおい丸押船列が、漁ろうに従事している文栄丸の進路を十分に避けなかったことによって発生したが、文栄丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Cを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年7月23日00時45分
 瀬戸内海伊予灘

2 船舶の要目
船種船名 押船第十五あおい丸 被押バージ第六あをい丸
総トン数 99トン  
全長 26.01メートル 96.38メートル
  21.00メートル
深さ   6.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 2,206キロワット  

船種船名 漁船文栄丸
総トン数 4.85トン
登録長 11.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 15

3 事実の経過
 第十五あおい丸は、鋼製押船で、A、B両受審人ほか6人が乗り組み、海砂4,500トンを積載して船首5.0メートル船尾5.7メートルの喫水となった無人の鋼製バージ第六あをい丸の船尾部に、船首部を嵌合(かんごう)して全長114メートルの押船列(以下、「あおい丸押船列」という。)とし、5.7メートルの等喫水で、平成10年7月21日17時00分長崎県壱岐島石田町沖合の海砂採取場を発し、岡山県水島港に向かった。
 A受審人は、船橋当直体制を船長、一等航海士、二等航海士、甲板長及び甲板員の5人による3時間単独回りワッチとし、自分の担当ワッチのほか、平素から関門海峡、備讃瀬戸、来島海峡等の狭水道では自ら操船の指揮を執っており、当直者に対しても、瀬戸内海は漁船等の小型船が多いので、避航動作は早期にとるよう指導していた。
 B受審人は、同月22日23時00分伊予灘航路第7番灯浮標付近で当直につき、航行中の押船列の法定灯火が表示されているのを確認のうえ、翌23日00時25分由利島灯台から144度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点で同8番灯浮標に並航したとき、針路を伊予灘航路の推薦航路線に沿う043度に定め、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で、同航路線の右側を自動操舵によって進行した。
 B受審人は、定針直後前方の伊予灘航路第9番灯浮標付近に緑、白2灯を表示した船を20隻ほど視認してトロールに従事している漁船と判断し、これらと次第に接近するので手動操舵に切り替えて進行した。
 00時40分B受審人は釣島灯台から233度3.5海里の地点に達したとき、右舷船首2度1.0海里に文栄丸の緑、白2灯及び右舷灯を認め、引き続きその動静を監視していたところ、方位がわずかに右舷に変わっていくものの衝突のおそれがある態勢で接近する状況であることを知り、同時42分半同船との距離が1,000メートルになったとき避航動作をとることとしたが、このとき左舷後方から自船を追い越す態勢で接近するフェリーがいて左転して避航することができないので、文栄丸の前方を航過するよう10度右転して053度の針路で続航した。
 B受審人は、053度の針路となったとき文栄丸を左舷5度に見るようになり、その後明瞭な方位の変化がなかったが、同船の方でも右転してくれるものと期待し、速やかに、更に右転するなど同船の進路を十分に避けることなく、同針路、同速力のまま進行した。
 00時44分半B受審人は、文栄丸が左舷7度200メートルに接近したとき衝突の危険を感じ、急いで右舵をとったが、及ばず、00時45分釣島灯台から235度2.7海里の地点において、原速力のまま100度を向首した第六あをい丸の左舷後部に、文栄丸の船首部が、前方から65度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、視界は良好であった。
 また、文栄丸は、FRP製漁船で、C受審人ほか1人が乗り組み、底びき網漁の目的で、船首0.2メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、同月22日11時00分愛媛県松山港を発し、釣島南西方沖合の漁場に向かった。
 C受審人は、漁場に到着して多数の同業船と共に操業に従事し、翌23日00時15分釣島灯台から250度1.6海里の地点で5回目の操業を行うこととし、トロールによって漁ろうに従事している船舶が表示する法定灯火を掲げ、船尾から漁具を330メートル延出し、針路を215度に定め、2.5ノットの対地速力で、手動操舵により曳網を開始した。
 00時40分C受審人は、釣島灯台から236度2.5海里の地点に達したとき、右舷船首10度1.0海里に白、白及び両舷灯を見せて接近するあおい丸押船列の白、白及び緑灯のみを認め、一瞥(いちべつ)して右舷を対して無難に替わるものと思い、自動操舵に切り替え、オーニングを張った前部甲板に行き、漁獲物保冷用の氷の整理を始め、その後同船に対する動静監視を行わなかったので、あおい丸押船列の方位がわずかに右舷に変わるものの衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かないまま進行した。
 C受審人は、00時42分半あおい丸押船列が右舷船首13度1,000メートルに接近したとき、それまで見せていた両舷灯が紅灯のみを見せるようになり、その後明瞭な方位の変化がないまま接近したが、動静監視を行っていなかったので、このことに気付かず、速やかに警告信号を行うことなく進行し、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、あおい丸押船列は、第六あをい丸の左舷後部ハンドレールに曲損を生じ、文栄丸は船首部を破損したが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、伊予灘において、あおい丸押船列が、漁ろうに従事している文栄丸の進路を十分に避けなかったことによって発生したが、文栄丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、伊予灘において、漁ろうに従事している文栄丸が衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めた場合、同船の進路を十分に避けるべき注意義務があった。しかるに、同人は、文栄丸も避航動作をとってくれるものと期待し、同船の進路を十分に避けなかった職務上の過失により、文栄丸との衝突を招き、第六あをい丸の左舷後部ハンドレールに曲損を生じさせ、文栄丸の船首部を破損させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 C受審人は、夜間、伊予灘において漁ろうに従事中、自船に接近する他船を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一瞥して無難に替わるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、速やかに警告信号を行うことなく進行して衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人の所為は本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。 


参考図
(拡大画面:42KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION