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 海難審判庁裁決録 >  2001年度(平成13年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成11年門審第139号
件名

プレジャーボート小僧プレジャーボート勝丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月17日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(西山烝一、原 清澄、相田尚武)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:小僧船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:勝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
小 僧・・・船首船底に擦過傷
勝 丸・・・左舷側船尾部外板に凹損

原因
小 僧・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
勝 丸・・・法定灯火不表示、見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

主文

 本件衝突は、航行中の小僧が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、勝丸が、法定灯火を表示しなかったばかりか、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成10年12月19日18時20分
 大分県坪江漁港北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート小僧 プレジャーボート勝丸
全長 6.55メートル  
登録長   4.94メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 36キロワット 22キロワット

3 事実の経過
 小僧は、船体後部に操縦スタンドを設けたFRP製プレジャーボートで、A受審人(以下「A受審人」という。)が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首及び船尾とも0.24メートルの喫水をもって、平成10年12月19日17時20分大分県坪江漁港を発し、津久見島北西岸沖合の釣り場に向かった。
 A受審人は、17時25分前示釣り場に着き、機関を中立と極微速力前進に適宜切り替えながら、いかの引きなわ釣りを開始したところ、釣果がなかったので帰航することとし、18時15分少し前津久見島166メートル頂(以下「津久見島頂」という。)から275度(真方位、以下同じ。)400メートルの地点を発進し、法定の灯火を掲げ、針路を坪江漁港防波堤先端の水銀灯に向く172度に定め、そのころ左舷前方に多数の釣り船の灯火を認めていたことから、機関を回転数毎分2,000にかけ、7.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、操縦スタンド右舷側の舵輪の後ろに立って見張りと手動操舵に当たり、18時18分津久見島頂から204度730メートルの地点に至ったとき、ほぼ正船首530メートルのところに勝丸が漂泊しており、法定の灯火を掲げていなかったものの、同船の掲げた白色点滅灯を視認することができる状況で、同船に衝突のおそれがある態勢で接近したが、船首方に釣り船の灯火を認めなかったことから、前路に他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行うことなく、背後の水銀灯や陸岸の自動車のヘッドライトの明かりに紛れていたこともあって勝丸の白色点滅灯に気付かずに続航した。
 18時19分半わずか過ぎA受審人は、津久見島頂から190度1,050メートルの浅所上の黄色閃光を発する灯標(以下「灯標」という。)を左舷方に航過し、釣り船群も通り過ぎたので、機関を回転数毎分3,500にかけて17.0ノットの対地速力とし、勝丸まで170メートルに向首接近していたものの、依然このことに気付かず、転舵するなどして同船との衝突を避けるための措置をとらないで進行中、同時20分わずか前正船首至近に勝丸の船影を認めたが、どうすることもできず、18時20分津久見島頂から191度1,250メートルの地点において、小僧は、原針路、原速力のまま、その船首が勝丸の左舷後部に前方から81度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期で、視界は良好であった。
 また、勝丸は、船外機2基を備えた和船型のFRP製プレジャーボートで、B受審人(以下「B受審人」という。)が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首及び船尾とも0.17メートルの喫水をもって、同日16時30分坪江漁港を発し、同漁港北方沖合800メートルばかりの釣り場に向かった。
 B受審人は、16時35分前示釣り場に着き、漂泊して手釣りでいか釣りを始めたところ釣果がなかったので、17時00分前示衝突地点付近に移動して、船外機1基を中立回転として漂泊し、右舷側船尾端の物入れの上に右舷方を向いて座り、いか釣りを再開した。
 ところで、B受審人は、右舷側前部に立てた支柱頂部の白色全周灯が10日前から破損して使用できなかったので、日没となったころ、同灯の代わりに単1乾電池3個による毎2秒1閃光の白色点滅灯1個を、同支柱の側に立てた木の棒の先端に固縛して舷縁上約70センチメートルのところに掲げたほか、単1乾電池1個による毎2秒1閃光の白色点滅灯2個を白色全周灯支柱に固縛して前示点滅灯より少し上方に掲げたものの、両色灯も点灯しなかったことから、漁具などの標識灯と識別できない状況で漂泊した。
 18時18分B受審人は、前示衝突地点で船首が073度に向いていたとき、左舷船首81度530メートルのところに、小僧のマスト灯及び両色灯を視認することができ、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めることができる状況にあったが、釣りに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、船外機を操作して衝突を避けるための措置をとらないまま、いか釣りを続けながら漂泊中、勝丸は、073度を向いて前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、小僧は、船首部船底に擦過傷を生じ、勝丸は、左舷側船尾部外板に凹損及び船外機のハンドルなどに損傷を生じたが、のち修理され、B受審人は、衝突の衝撃で海中に転落して小僧に救助されたが、1箇月の加療を要する肋骨骨折などを負った。

(原因)
 本件衝突は、夜間、大分県坪江漁港北方沖合において、航行中の小僧が、見張り不十分で、点滅灯を掲げた勝丸との衝突を避けるための措置をとらなかったことと、漂泊中の勝丸が、法定灯火を表示しなかったばかりか、見張り不十分で、接近する小僧との衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、大分県坪江漁港北方沖合において、釣り場から同漁港に向けて南下する場合、漂泊中の他船が掲げた点滅灯を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同受審人は、船首方に釣り船の灯火を認めなかったことから、前路に他船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、点滅灯を掲げた勝丸に気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま進行して同船との衝突を招き、小僧の船首部船底に擦過傷を、勝丸の左舷側船尾部外板に凹損及び船外機のハンドルなどに損傷を生じさせ、B受審人に肋骨骨折などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、夜間、大分県坪江漁港北方沖合において、法定の灯火を掲げずに漂泊し、いか釣りを行う場合、左舷方から接近する他船を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同受審人は、釣りに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する小僧に気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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