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平成12年門審第32号
件名

漁船博栄丸プレジャーボートサン芦屋衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月16日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(米原健一、佐和 明、西山烝一)

理事官
坂爪 靖

受審人
A 職名:博栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:サン芦屋船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
博栄丸・・・推進器翼を曲損、シューピースを折損
サン芦屋・・・船体中央部に亀裂、大破、のち廃船

原因
博栄丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主 因)
サン芦屋・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、博栄丸が、見張り不十分で、錨泊中のサン芦屋を避けなかったことによって発生したが、サン芦屋が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年12月31日09時45分
 福岡県芦屋港北東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船博栄丸 プレジャーボートサン芦屋
総トン数 4.9トン  
全長 14.50メートル 7.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 330キロワット 66キロワット

3 事実の経過
 博栄丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、ひらめ引き縄漁の目的で、船首0.30メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、平成11年12月31日08時30分福岡県脇田漁港を発し、同県芦屋港北方沖合1.5海里付近の漁場に至り、船尾から仕掛けを延出して操業を始めた。
 ところで、博栄丸は、速力が15ノットを超えると船首が浮上し、舵輪後方のいすに腰を掛けて操舵に当たると正船首方向の左右各舷15度の範囲に死角が生じることから、A受審人は、平素立ち上がったり、船首を振るなど、死角を補う見張りを行っていた。
 A受審人は、前示漁場を北東及び南西方向に往復して操業を行ったものの、漁模様が悪いので漁場を移動することとし、ゆっくりとした速力で左回頭しながら揚縄を行ったのち、09時43分半わずか前妙見埼灯台から249度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点で、針路を043度に定め、機関を全速力前進にかけて15.0ノットの対地速力とし、舵輪後方のいすに腰を掛けて手動操舵により進行した。
 定針したとき、A受審人は、正船首730メートルのところにサン芦屋を視認することができ、その後、錨索の状態などから同船が錨泊中であることが分かり、同船に衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めることができる状況であったが、一瞥して前路に他船はいないものと思い、立ち上がったり、船首を振るなど、死角を補う見張りを行わなかったので、このことに気付かず、同船を避けることなく続航した。
 こうして、A受審人は、サン芦屋の存在に気付かないまま進行中、09時45分妙見埼灯台から262度1,400メートルの地点において、博栄丸は、原針路、原速力のまま、その船首が、サン芦屋の右舷中央部に直角に衝突し、同船に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好であった。
 また、サン芦屋は、船体中央部に操舵室を有する船外機付きのFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.32メートル船尾0.33メートルの喫水をもって、同日08時00分福岡県遠賀川河口の中山マリーナを発し、芦屋港北東方沖合約2.0海里の釣り場に向かった。
 B受審人は、09時10分ごろ前示衝突地点付近に至って船外機を停止し、船首から重さ約10キログラムの四つめ錨を水深17メートルの海底に下ろし、直径16ミリメートルの合成繊維製の錨索を28メートル延出して船首部のクリートに止め、錨泊中の船舶が表示する形象物を掲げないまま錨泊し、自らは船体前部で左舷方を向き、友人2人が同後部の左右両舷に分かれてそれぞれ腰を掛けて釣りを始めた。
 09時43分半わずか前B受審人は、船首が133度を向いていたとき、右舷正横730メートルのところに自船に向首した博栄丸を視認でき、その後、同船が衝突のおそれがある態勢で接近するのを認めることができる状況であったが、釣りに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 09時44分半B受審人は、博栄丸が自船を避けずに230メートルに接近したが、依然として周囲の見張りが不十分で、これに気付かず、船外機を直ちに始動して移動するなど、衝突を避けるための措置をとることなく釣りを続けていたところ、同時45分少し前友人の1人が右舷正横至近に迫った博栄丸に気付き、立ち上がって大声で叫んだので右舷側を振り返り、同船を初めて認めたが、何をする間もなく、友人2人とともに海中に飛び込んだ直後、サン芦屋は、船首を133度に向けたまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、博栄丸は、推進器翼の曲損、シューピースの折損等を生じたが、のち修理され、サン芦屋は、船体中央部に亀裂を生じて大破し、修理費の関係で廃船処理された。また、B受審人及び友人2人は、いずれも博栄丸に救助された。

(原因)
 本件衝突は、福岡県芦屋港北東方沖合において、博栄丸が、見張り不十分で、錨泊中のサン芦屋を避けなかったことによって発生したが、サン芦屋が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、福岡県芦屋港北東方沖合において、漁場を移動する場合、舵輪後方のいすに腰を掛けて操舵に当たると正船首方向に死角が生じる状況であったから、前路で錨泊中の他船を見落とすことがないよう、立ち上がったり、船首を振るなど、死角を補う見張りを行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、一瞥して前路に他船はいないものと思い、立ち上がったり、船首を振るなど、死角を補う見張りを行わなかった職務上の過失により、前路で錨泊中のサン芦屋に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、博栄丸の推進器翼に曲損、シューピースに折損等を、サン芦屋の船体中央部に亀裂をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、福岡県芦屋港北東方沖合において、錨泊して釣りを行う場合、自船に向けて接近する他船を見落とすことがないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、釣りに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれのある態勢で接近する博栄丸に気付かず、船外機を直ちに始動して移動するなど、衝突を避けるための措置をとらないまま錨泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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