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平成12年門審第74号
件名

貨物船雲海押船第七順永丸被押バージ第七満永丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月11日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(佐和 明、米原健一、西山烝一)

理事官
畑中美秀

受審人
A 職名:雲海一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第七順永丸甲板手 海技免状:四級海技士(航海)

損害
雲 海・・・右舷船尾付近居住区側壁に凹損
満永丸・・・左舷船首部外板

原因
雲 海・・・動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
満永丸・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、雲海が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る第七順永丸被押バージ第七満永丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第七順永丸被押バージ第七満永丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年7月5日05時52分
 日向灘

2 船舶の要目
船種船名 貨物船雲海
総トン数 495トン
全長 65.280メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット

船種船名 押船第七順永丸 バージ第七満永丸
総トン数 235トン  
全長 30.00メートル 82.50メートル
  15.50メートル
深さ   7.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 2,059キロワット  

3 事実の経過
 雲海は、専ら宮崎県宮崎港を基地として焼酎の廃液など産業廃棄物を許可海域において投棄する船尾船橋型産業廃棄物運搬船で、船長C及びA受審人ほか2人が乗り組み、産業廃棄物1,010トンを積み、平成11年7月4日18時00分同港を発し、22時53分同港東方沖合60海里ばかりの海上で投棄作業を開始し、翌5日00時10分同作業を完了したのち、空倉のまま、船首0.50メートル船尾2.50メートルの喫水をもって帰途についた。
 C船長は、宮崎港発航時から投棄作業を終了して帰途に就くまでの間を単独で船橋当直に当たり、00時30分A受審人に、同港東方3海里付近までを単独の船橋当直に就くよう指示して降橋し、自室で休息をとった。
 A受審人は、操舵室中央部の操舵輪後方に置いたいすに腰をかけ、左側前方に設置されているレーダーと右側後方に置かれているGPSプロッターを監視しながら宮崎港に向けて西行した。
 05時39分半A受審人は、宮崎港内防波堤灯台(以下「内防波堤灯台」という。)から097度(真方位、以下同じ。)7.5海里の地点に達したとき、12海里レンジに設定していたレーダーに宮崎港南防波堤が7海里のところに映るようになったので、針路を同防波堤先端部付近に向く285度に定めて自動操舵とし、レーダーを6海里レンジに切り替え、機関を引き続き全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、レーダーを6海里レンジに切り替えたとき、右舷前方約3海里に第七順永丸被押バージ第七満永丸(以下「順永丸押船列」という。また、第七順永丸を「順永丸」、第七満永丸を「満永丸」という。)の映像を初めて認め、同映像が南下中の船舶のものであることを知ったものの、自船の前路を航過するものと思い、当時もやがかかって視界があまりよくなかったことから、視程を確かめるため同じくレーダーで左舷前方2海里付近に認めていた小型船を肉眼で捜し始め、これを見つけることができないまま、その後ぼんやりと病気の兄弟のことなどを考えながら続航した。
 05時43分半A受審人は、内防波堤灯台から096度6.7海里の地点に達したとき、順永丸押船列を右舷船首46度2.0海里のところに視認できる状況となったが、依然同押船列が前路を無難に航過するものと思い、その動静監視を十分に行わず、その後衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないで、機関を使用するなどして同押船列の進路を避けることなく進行した。
 05時52分少し前A受審人は、順永丸が吹鳴した汽笛音を聞いて前方を見たところ、右舷船首間近かに同押船列を初めて視認したが、どうすることもできず、05時52分内防波堤灯台から093度5.2海里の地点において、雲海は、原針路、原速力のまま、その右舷船尾に、満永丸の船首が後方から60度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風はほとんどなく、視程は約2海里で、日出は05時09分であった。
 C船長は、衝突の衝撃音を聞いて昇橋し、事後の措置に当たった。
 また、順永丸は、2基2軸の推進機関を装備する鋼製押船で、船長D及びB受審人ほか6人が乗り組み、船首3.80メートル船尾4.20メートルの喫水をもって、セメント2,011トンを載せて船首3.05メートル船尾3.42メートルの喫水となった無人のセメント運搬専用バージ満永丸の船尾凹部に船首を嵌合させ、直径75ミリメートルの化学繊維索3本で連結し、同月4日21時10分大分県佐伯港を発し、鹿児島県志布志港に向かった。
 D船長は、B受審人が三等航海士として順永丸に乗り組んだ経験があったので、一等航海士、三等航海士及びB受審人の3人に4時間3直制による単独の船橋当直を行わせ、自らは出入港時及び狭水道通過時の操船を行うほか、適宜昇橋して操船の指揮に当たることにしていた。
 翌5日04時00分B受審人は、細島灯台から175度13.0海里の地点に達したとき、前直の一等航海士と交替して船橋当直に就き、針路を201度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で進行した。
 B受審人は、主に操舵室前面窓の左舷寄りのところで立って見張りに当たり、05時43分半内防波堤灯台から080度5.8海里の地点に達したとき、左舷船首50度2.0海里のもやの中に雲海の船影を初めて視認し、レーダーによりその方位と距離の変化を確かめて衝突のおそれがあることを知り、同時47分半同船が同方位1.0海里に近づいたのを認め、その後も同船が避航の措置をとらないで接近したが、警告信号を行うことなく続航した。
 05時50分少し前B受審人は、雲海が約0.5海里に接近したとき汽笛で長音1回を吹鳴して同船を見守っていたところ、依然避航の気配を見せないまま接近したが、そのうち避航するものと思い、速やかに機関を使用して行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとることなく進行中、同時51分少し過ぎ衝突の危険を感じ、ようやく機関を微速力前進として右舵一杯をとり、再び長音1回を吹鳴して機関を全速力後進にかけたが及ばず、満永丸は、その船首が225度を向いたとき、約3ノットの残速力をもって前示のとおり衝突した。
 D船長は、汽笛音と機関音の変化で異常に気付き、衝突直前に昇橋したが、どうすることもできないまま衝突し、事後の措置に当たった。
 衝突の結果、雲海の右舷船尾付近居住区側壁に凹損及び同付近外板に破口をそれぞれ生じ、また、満永丸の左舷船首部外板に凹損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、宮崎港東方沖合の日向灘において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、雲海が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る順永丸押船列の進路を避けなかったことによって発生したが、順永丸押船列が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、宮崎港東方沖合の日向灘を同港に向けて西行中、レーダーで右舷前方に順永丸押船列の映像を認め、同映像が南下中の船舶のものであることを知った場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、順永丸押船列が自船の前路を無難に航過するものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同押船列が右方から衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、その進路を避けることなく進行して同押船列との衝突を招き、雲海の右舷船尾付近居住区側壁に凹損及び同付近外板に破口をそれぞれ生じさせ、また、満永丸の左舷船首部外板に凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、宮崎港東方沖合の日向灘を南下中、左舷前方に自船の前路を右方に横切り、衝突のおそれがある態勢で接近する雲海を視認し、同船が避航の措置をとらないまま間近に接近するのを認めた場合、速やかに機関を使用して行きあしを止めるなど、衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、汽笛で長音1回を吹鳴したので、そのうち雲海が避航するものと思い、速やかに衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、衝突を避けるための協力動作が遅れて同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
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