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平成12年広審第34号
件名

貨物船満喜丸貨物船ダナウ トバ衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成13年1月19日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(中谷啓二、工藤民雄、横須賀勇一)

理事官
岩渕三穂

受審人
A 職名:満喜丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(履歴限定)

損害
満喜丸・・・左舷船尾部外板に凹損
ダ 号・・・右舷後部外板に破口

原因
ダ 号・・・動静監視不十分、追い越し船の航法(避航動作)不遵守(主因)
満喜丸・・・動静監視不十分、警告信号不履行(一因)

主文

 本件衝突は、ダナウ トバが、満喜丸を追い越す際、動静監視不十分で、その進路を避けなかったことによって発生したが、満喜丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。

理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成11年9月23日02時10分
 瀬戸内海 来島海峡

2 船舶の要目
船種船名 貨物船満喜丸 貨物船ダナウ トバ
総トン数 165トン 9,189トン
全長 46.60メートル  
登録長   124.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 405キロワット 3,883キロワット

3 事実の経過
 満喜丸は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、木材チップ約200トンを積載し、船首2.7メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成11年9月22日13時40分福岡県宇島港を発し、徳島小松島港に向かった。
 A受審人は、同日23時ごろ釣島水道西口付近で、1人で船橋当直に就き、所定の灯火を表示して同水道から安芸灘を北上し、翌23日01時40分ごろ来島海峡航路に入り、一等航海士を昇橋させて手動操舵に当て、来島大角鼻潮流信号所の電光板表示が北流4ノットを示していることを認め、同海峡西水道に向け続航した。
 01時57分A受審人は、小島東灯標から314度(真方位、以下同じ。)1.65海里の地点に達し、西水道入口の航路屈曲部まで約2海里になったとき、針路を122度に定め、機関を8.5ノットの全速力前進にかけ、折からの西北西流に抗し、7.2ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 定針したとき、A受審人は、左舷船尾8度1,200メートルのところに、ダナウ トバ(以下「ダ号」という。)の白、白、緑3灯を初認し、自船はまもなく大幅な転針が必要とされる航路屈曲部に向かっており、後方に認めたダ号に対しては、互いの進行具合によって衝突のおそれが生じることがないか、十分な動静監視が必要とされる状況であったが、同船が後方から近づいても自船を替わして進行するものと思い、目視でもレーダーによっても、ダ号の動静監視を行うことなく、船橋右舷前部の窓際に立ち、専ら転針方向となる右舷前方の西水道方面に注意を払って続航した。
 02時00分A受審人は、ダ号が、左舷船尾14度770メートルのところに、左舷側を150メートルの間隔で追い越す態勢で近づき、同時08分小島東灯標から353度840メートルの地点に達したとき、左舷船尾64度190メートルのところで、同船が、西水道に向けて徐々に右転を始め、同時09分少し前同船が左舷正横にほぼ並んで自船との交角が20度ばかりになったとき、自船の進路に接近して衝突のおそれがあることを認めることができたが、依然、動静監視を行っていなかったので、このことに気付かず、警告信号を行わずに進行した。
 02時09分少し過ぎA受審人は、西水道に向けて徐々に右転を始め、同時10分少し前170度に向首したとき、左舷側方至近に迫ったダ号に気付き、衝突の危険を感じてさらに右転したが及ばず、満喜丸は、02時10分小島東灯標から022度670メートルの地点において、190度に向首したとき、その左舷船尾端に、ダ号の右舷後部が、後方から20度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力4の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 また、ダ号は、船尾船橋型の貨物船で、船長Bほか15人が乗り組み、パルプ1,120トンを積載し、船首3.6メートル船尾4.2メートルの喫水をもって、同月21日20時00分大韓民国馬山港を発し、瀬戸内海経由で、静岡県田子の浦港に向かった。
 B船長は、翌々23日01時25分ごろ安芸灘を北上中、来島海峡航行に備えて昇橋し、当直者の二等航海士を見張りに、甲板員を手動操舵にそれぞれ当てて操船指揮を執り、所定の灯火を表示して同時50分ごろ来島海峡航路に入り、同時55分桴磯灯標から029度1,660メートルの地点で、針路を同海峡西水道に向けて122度に定め、機関を13.5ノットの全速力前進にかけ、折からの西北西流に抗して12.2ノットの速力で、右舷前方に満喜丸の船尾灯を認めて進行した。
 02時00分B船長は、満喜丸が右舷船首14度770メートルになったとき、西水道通航に備えて減速し、9.9ノットの速力で、同船の左方を150メートルの間隔で追い越す態勢で、追越し信号を行わずに続航した。
 02時08分B船長は、小島東灯標から356度1,020メートルの地点に達し、満喜丸が右舷船首64度190メートルのところになったとき、まだ同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかっておらず、そのまま針路を保持するなど同船の進路を避けることが要求される状況であったが、満喜丸の動静を十分に監視せず、同船が西水道入口に向けて右転を始めたと錯覚し、自船が同様に右転しても問題ないと思い右舵15度を令し、その後徐々に満喜丸の進路に接近して衝突のおそれのある態勢で進行した。
 02時09分少し過ぎB船長は、満喜丸と約100メートルの間隔となったとき舵中央とし、まもなく170度に向首して、依然、動静監視不十分で同船の進路を避けずに続航中、同時10分少し前ようやく衝突のおそれに気付き、左舵一杯をとったが効なく、ダ号は、原針路のまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、満喜丸は、左舷船尾部外板に凹損を、ダ号は右舷後部外板に破口をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、来島海峡において、ダ号が、満喜丸を追い越す際、動静監視不十分で、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けなかったことによって発生したが、満喜丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、来島海峡を航行中、左舷後方にダ号の灯火を視認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船が後方から近づいても自船を替わして進行するものと思い、ダ号に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、自船を追い越す同船が、自船の進路を避けずに衝突のおそれが生じていることに気付かず、警告信号を行わずに衝突を招き、満喜丸の左舷船尾部外板に凹損を、ダ号の右舷後部外板に破口をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:54KB)





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