日本財団 図書館


名古屋講演にて
Q:テレビゲームは子どもに害だと思いませんか。
 
ミムジー:いいえ、思いません。子どもは集中すること、人と協力すること、やりとげて次に取りくんで発展していくことなど学びますから。また目に悪いとは思いません。私の知る範囲では暴力的なゲームをよくしている子は他の人ととても平和的につき合うことを望むし、そういう関係を作っています。遊びと現実の世界ははっきり分けられると思います。これはSVSだからといってではなく私個人の意見です。
 
Q:スタッフは子どもが言わなければ何も援助しないのですか?
 
ミムジー:スタッフが子どもに求められなくてもすることは一つです。子どもと知り合いになる、子どもとよい関係を作るということだけです。その他のことは子どもから言わなければ要望しなければスタッフは何もしません。
 
Q:入学の条件はありますか。
 
ミムジー:一つだけあります。「自分で自分のことができること」「人に危害を加えないこと」です。
 
Q:SVSのような学校がすべて社会的階層の子どもに同じように適しているとお考えですか。自発的な頭のよい子にだけ向いているのではないでしょうか。
 
ミムジー:34年間学校をしてきてわかったことは「こういう教育は全ての子に適している」ということです。頭のよい子にだけ適しているということではありません。全ての子が物理学者になるように生まれてきたとは思っていませんが、どんな子どもも自分の運命を自分で築いていけるというふうに生まれてきていると信じています。
 
Q:SVSの生徒達は普通の学校に通う子よりSVSで過ごしたことでより「自分とは何か」「自分はどう生きていくか」をよく考えるようになっていますか。
 
ミムジー:SVSにおいて子ども達はそういう事はしなければならないことです。自分について考えなげれば、次に自分がすべきことを考えることができませんから。ティーンエイジャーの子達は皆それをしています。
 
Q:子どもがスタッフを選ぶことということですが、子どもに正しく評価できるのでしょうか?
 
ミムジー:長い間このことを考えてきました。毎年スタッフの雇用についての投票の後、その結果を詳しく分析してきました。その結果として評価は正しくされていると思います。どうしてだかはわかりませんが。間違った評価を下すこともあるかもしれませんが、それは次の一年だけです。その後にわたるということはありません。
 
大阪集会にて
ミムジー:どんなかたちであれ、スタッフのほうから子どもたちに動機付ける行為はすべきではありません。(動機付けは)必ず子ども自身がやらないといけません。
 
Q:興味を深めるための手助けもいけないのですか。
 
ミムジー:完全に放っておく、ということが非常に大切なのです。子どもはそのような状況に置かれて初めて自分で決めるということが自分の中ではじまるのです。ですから(大人の側が)中途半端なことをしてはいけないのです。何らかの形で子どもを手伝っていく限り、彼らはあなたに頼り続け、自分たちから動き出そうとしないでしょう。もし彼らがつまずきを覚えたとしても、自分でそれを乗り越えていかないといけません。人から助けられている間は自立が出来ないので、たとえ痛みが伴ったとしても、自分でやっていくという状況を作ってあげなくてはなりません。
 このことを学校の方針としてしっかりと理解できていない親が多いです。そういう親にとっては子どもが完全にほったらかしにされているという状況を見るのは非常につらいようです。彼らはスタッフに、子どもの手助けをすべきだ、してほしいと考えるのですが、こちら側は学校の確固たる方針として絶対にそのようなことはしません。
 しかし私達でも、どうしても助けてあげたくなります。けれども、その気持ちはやはり押しとどめないといけないのです。
 
Q:「(子どもが)間違ったことをしているな」と思うことでも、それを大人が放おくことでやがて自分で学んでいく、ということですか?
 
ミムジー:危険な行為を犯すなどの、サドベリーにあるルールに反するような場合はもちろん放っておきません。しかしそうでない場合、単に「失敗するだろうな」とかいうことであれば、それは子どもたちに任せます。失敗から学ぶことのほうが多いのですから、成功しそうにないからといって彼らの行動を大人が止めさせるのはいけません。
 
Q:子どもが生まれたときから成人するまで、自分が子どもに向かうときに一番大事にした心構えは何ですか。
 
ミムジー:やはり子どもが自分で決められることについては、出来るだけ自分で決めさせるということが大事だと思いました。どのような生き方をするかということに対しては、自分が選んでいくのですからそれに親が口を挟んだりはしないようにしました。彼らがやることに対して親の判断でもってそれを決め付けないということです。こうやって言うのは簡単ですが、実際はとても難しかったです。しかしそうすることによって、子どもとの関係が非常に良くなりますし、子どもが心を開いてくれます。
 
神戸講演にて
Q:SVSでいじめはありますか?
 
ミムジー:いじめはほとんどありません。もしいじめが発覚すれば司法会議にかけられて厳しく罰せられます。またSVSでの人間関係は「尊重」の上に成り立っています。とてもこのことを大切にしているので、いじめはありません。
 
Q:注意欠如障害の子も受け入れていますか?受け入れている場合どんな支援をしていますか?
 
ミムジー:SVSに来る前に、他の学校で「学習障害」とか「注意欠如障害」と判断された子も受け入れています。そのこたちが入学してから問題行動を起こしたこはありません。入学したいと連れてきた親が前の学校でそのように判断されたということを、私たちに知らせてくれなければ、私たちにはその子を見ただけではわかりません。「学習障害」と言われているものは、普通の学校の教室という自分でしたい事をしたい人に押し付けられたくないといった子ども達です。そういう子がクラスの中で問題行動としてうつるといったことです。SVSには普通の学校のような授業やクラスはありません。ですからそういうことが問題になることはありません。
 
Q:「親が完全に強制的な態度をとらない方がよい」かどうかについて迷っています。例えば、嫌がる子を無理にでもボランティアに連れて行き、それが子どもにとって視野が広がり新しい体験の場を自分で得る場合もあるのでは?
 
ミムジー:親にとって子どもを育てる、導くことは本当に難しいことです。子どもを一人の人間として尊重することが大切です。子どもに話をするとき、「私やってみて楽しかったのだけど、〜ちゃんもやってみない」といった友達に話しかけるようなやり方をすることができます。危険なことの場合は「絶対にしてはいけない」とか「絶対しないといけない」と言ってもいいです。しかし危険性のない場合に「〜しないといけない」とか「〜してはダメ」とか押しつけない方がいいと思います。例えば「ボランティアに参加させる」とか「ピアノのレッスンを受けさせる」とかそういったことをして、時間を経てみると子どもに喜びをもたらすかもしれません。しかし、その子がそれをすることによって、その子自身ができたかもしれない楽しみを奪っているかもしれないということを心に視留めておくべきだと思います。何か新しいことを提案する時には慎重にしないといけないと思います。
 
Q:これからの社会では精神的な意味での人間形成が大切だと思います。SVSでは人格形成と学力形成どちらを重視していますか?
 
ミムジー:SVSで育った子は自分の力で歩いていける、とても強い意思の、何でもやりとげられる人間になっています。もしそういうふうに人格形成がなされたら、学力はついてくるものです。ですから先ず人格形成が大切、その次にやりたいことを追い求めていけるのでしょう。人格形成の方が学力形成よりずっと難しいと思います。学力がついたかについては、本当にその人にどういった学力がついたかということをはかることはできないと思います。
 
藤沢講演にて
ミムジー:210名もの子どもが自分のしたいことをしているというSVSでの生活は濃い空間であります。でも、クレイジーでワイルドなものではありません。自分のやりたいことを自分のコントロールにおいてやっているので、注意深くおこなうことになるからです。何をやっているにせよ、子どもたちは真剣に集中してやっています。ふつうの場所で思いつくかぎりの様々なことをしています。夏にスキーをするということはできませんけどね・・・。
 例えば歴史の本読んでいる子がポケモンカードで遊んでいる子よりすぐれたことをしているとは、私達はとらえられません。どんなことでも等しい価値をもっているとみなしています。学校中、そのことはしみわたっています。
 学校はみんなが集まって「やりたいことをやる」「やりたくないことはやらない」という人々が交わっている所だと想像してください。4、5才の子も自分自身の生活を「自分を自分でコントロールできる」と思っています。そしてそのまま育っていきます。ですから子どもたちはお互いに「自分で自分のことをコントロールしている存在」として接してゆけます。このことも素晴らしいことです。それ以上に子ども達が私のような大人とも対等に同等に、つまり一対一の人間として接していけることも素晴らしいことだと思います。
 SVSには「監督をする」という考え方はありません。ですから、「全ての子どもが自分自身のこと自分で面倒を見ることに責任をもつ」ということも考えなければならない環境です。
 アメリカの政治は司法・立法・行政の3権分立です。スクールミーティングはこの3つ全てを統治しています。とくに立法の役割を多く果たしています。スクールミーティングで選ばれた委員による司法委員会があります。スクールミーティングはとても重要で生徒とスタッフにとっても大きな影響をあたえるものです。スクールミーティングにめったに来ない生徒でも、ミーティングで決められることが自分の生活に大きな影響を及ぼしていることは理解しています。学校で子ども達が「自分にも何かができる」という感覚を持つためのプロセスで重要なのは、司法委員会があることです。司法委員会があることで、子どもたちは自分の不満や要求を訴えることができます。それに対して妥当な対処をしてもらえることがわかっているからです。司法委員会は毎日あって日々の不満などについて話し合います。委員以外の子どもは他の子どもに「これをしたらいけない」とか言う立場にありません。子どもが行動や態度を変えていくのに一番影響を与えるのは同じ年頃の子どもたちがその問題を起こした子どもに「〜するべきだ」「〜してはいけない」など説明をすることだと私は思います。
 
Q:入学の条件「自分の行動に責任が持てる」について説明して下さい。
 
ミムジー:4、5才の小さい子に設定することは難しいことではありません。「入ってはいけないことになっている池に入らない」とか「大きな道路に出ていかない」「絶えず大人が見ていられなくても自分で心地よくいられる」「自分の安全をそれなりに守れる」ということです。「他の子をぶつことはいけない」と小さい子にも厳しく言っています。小さい子でしたら、そういうことをしても、何度かチャンスをあげます。16才以上の大きい子には二度目はありません。もし、二度もそのようなことをしたら、それはとてもいけないことです。年齢に関わらず「学校で火を燃やしてはいけない」「他の人のもの学校のものを大切にする」「ドラッグやお酒など違反行為をしてはいけない」ということを子どもに期待しています。これを守れない子は迅速に司法委員会に持ち込まれて、みなの判断にゆだねられます。度を越す行為であれば停学や退学という場合もあります。







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