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○「市町村合併と集落再編との関係」について
 
長野県における市町村合併の状況は、法定協議会、任意協議会等のいろいろな研究を含めると30%弱の市町村が検討をしている。また、集落の意見を積み上げる方法については、集落単位に置く必要はなく、村議会議員が一番手っ取り早い。
 
池田委員:長野県の合併の状況を申し上げますと、全国で2番目、120の市町村がございまして、昭和の合併でうまくいかなかったのですね。北海道に次いで120です。結論から言いますと、今、法定協議会と任意協議会に、かかわっている自治体が30%弱なのですね。ですから、やはり昭和の合併がうまくいかなかったと同じ状況が依然として今回の平成の大合併に私はあると思います。
 実は皆さん御案内のように、昭和の大合併というのは8,000人規模、中学校を維持・管理するための前提でしたね。昭和22年に義務教育が6年プラス3年になって、中学校が義務教育になった。私もちょうどそのときの経験がありますけれども、私の出た中学校の校舎は実は小学校の校舎だったのです。新しい校舎がないのです。ようやく朝鮮戦争が終わって日本が落ち着き始めてから、さあ校舎をつくろうと、こういう状況の中で昭和の大合併、28年の大合併が始まるわけですが、依然としてそのとき取り残された町村は今も中学校の運営は組合立なのですね。本来なら何でこんなところが合併しなかったのだと思えるところがやはり残っているのです。それは結局、苦し紛れに中学校の運営は単独の自治体ではなくて複数の自治体が、大体二つですけれども、三つというところもございます、その地域がようやく今回合併しようかという空気になってきていることは事実です。
 ところが、長野県の場合は、そういう地域もありますけれども、やはり山と川、大河川ですね、みんな谷が違う、二つトンネルを越えないととにかく次の村へ行けないという地域は、これは組合立の中学校をつくれといってももともと無理なのですね。単独で今までやってきた。それらは依然として今回も腰が重いのです。ですから私は、多分合併に至らないだろうと思っています。今一生懸命あめとむちだと言っていますが、実際には交付税が少しずつ減らされてきていますから、ことしだけでも1億とか2億という単位の交付税が減ってきているところが結構あるのですね。今シミュレーションをいろいろやっていますけれども、例えば小川村という長野市の西の地域ですが、人口が約3,600人、この交付税が今22億円あるのですが、15億円まで下がっても耐えられるだけの職員数にしようということでいろいろな工夫をしている。そんな工夫に見通しのついたところは早々と、もう合併しませんということを今明確にしつつあります。ですから行政改革とか定数削減の行き着く先が合併だと思うのですけれども、それを早々とやったところが意外と合併の急行列車から飛び降りてしまったというのが実態ではないかなと思います。しかし、そこまで至らないで、どうしようか、どうしようかということでハムレットの心境で迷っている町村はたくさんあるのです。時々、町村長から電話がかかってきて、「おれはとにかく困っている、本当に総務省は交付税を減らすか」と、それをみんな私に聞くのです。総務省は本当にやってくるかと。「おれだってそんなことはわからない」と。総務省の本当の腹はどこにあるかということをみんな探りたがっているのが実態だろうと思います。
 私は、場合によってはこんなものは、政権交代になって別な形になればわからないぞというようなことを時々私は言うのですけれども。だって財源保障機能がまず壊滅することはあり得ないと思うのですね。いかなる国であろうと、どうしても所得の格差がありまして、税だけでやっていこうなんていうことは無理なわけです。もしそれをつぶすとすれば完全に中央集権でやるわけですから。となると、やはり地方自治というものを大事にしていく近代民主主義の中で、いわゆる財源保障機能というのはまず壊滅することはないだろうと。どこまで下がるかという見通しがつけば、地方公共団体は生き残る。そういうところに来ているのではないかと思っています。
 そこで、合併すれば確かにメリットがあることは間違いないですね。交付税も下がることは間違いないと思うのですね。例えば町村で、1人当たりの交付税が30万円とか40万円、それが周辺の市に入ると、1人当たりの単価は半分ぐらいに下がってしまう。ですから交付税だけ見ると合併の効果というのは出てくることは間違いない。ということは、逆に言えば、それだけ金のいき方が少なくなる。お金のあるところからお金のない貧乏なところへ流れる金の量というのは間違いなく減ってくれば、生きていく人間の数もやがて減っていくだろう。そこに自然人口減少というものが加わると、平成の大合併により平成の大過疎が間違いなく生まれてくる。平成の大合併の次に来るのは平成の大過疎が来る。東京を見ると、ビルラッシュでクレーンが立っていますけれども、地方へ行けばほとんどクレーンは立ってない。それだけ今格差がついてきている。ですから、ここへ強行合併をすれば、小さな村からどんどん人が減っていくのではないかと思います。
 ですから、国土の保全という観点からすれば、合併はマイナスの効果だということは間違いないですね。では、なおかつ合併を促進させて国土を守る方法はあるのか。いろいろな税を取って、県全体、国全体で税を取って、そこに金を配布する。私はこれが一番いいと思いますけれども、やはり交付税制度で森林の保全にお金が行くシステム、森林の面積とかいろいろなものを測定単位の中にはっきりとうたって、これは間違いなく森林の分だよという形にしていかないと、森林は守っていけないのではないかと思います。市町村合併というものは国土保全にとってはマイナスの作用が働いてくる。だから、なおさらこういう研究会で一定の方向を出して訴えないと、まさに地方が滅びてしまうのではないか。
 というのは、合併をすればまさにその地域というのは周辺になるわけですから、周辺というのは見捨てられるわけですからね。そういう意味では、過疎が周辺になって、森林の保全に今きゅうきゅうとしている自治体がさらにふえてくるのではないかと、こんなふうに私は思っています。
 それから、高森の事例で集落担当のことですね。これは、いろいろな意味で効果があると思うのですね。ただ、集落の意見を積み上げる方法というのはいろいろなシステムがあるのですね。例えば村議会議員さんが一番手っ取り早い。それから、いろいろな形で審議委員だとか、また行政委員になっている村の役職にある人たちは、いろいろな意見を上げてくることはできますので、私は殊さら集落単位に置く必要はないと思っていますが、ただ、従来の一般的なそういう吸い上げ方式が多分機能していないからこういう形になるのだろうと私は思っています。
 それから、合併する場合の意見の積み上げは、今至るところでやっています。たくさんの資料をつくって、そして、例えば20人30人単位でみんな説明を聞いていますけれども、一つだけ言えることは、村がつくる資料によって意見が違ってきてしまう。村が合併する方向で意見をつくればみんな賛成してしまう。それから、非合併で意見をつくればみんな非合併になってしまう。ということは事実ですね。交付税がどうなって税がどうなってなんて、それは役場の職員がわかっているだけですよ。役場の職員が、交付税が減らされるからこれではやっていけないと言って一生懸命説明すれば、そういうものか、じゃ合併しようかと、こういう話になってくる。しかし、交付税は減るけれども、おらの村は一生懸命リストラして何とかやっていけると言うと、それではがんばろうかと。それが実態だと思います。真っさらで住民に「さあ、皆さん判断して下さい」と言っても、それは無理。情報公開して資料を提供したって、それはわからない。幾ら資料を提供したって、理解できる人はごく一部。どう説明するかによって意見が変わってくる。
 その結果、説明した後、私は住民投票も結構だと思います。18歳未満、例えば中学生まで落とすなんていう例が長野県にあります。これも結構です、住民投票をやってもアンケート調査をやっても、結論は同じだと思うのです。しかもアンケート調査を見てみますと、世帯主ではなくて世帯の構成員に書かせて、まさに住民投票と同じ効果を出させている自治体も結構ありますから、必ずしも私は住民投票にこだわる必要はない。アンケート調査も結構。くみ取る方式としてはですね。
 とにかく2006年をピークに人口減少が日本じゅうに来る。そこへ合併が追い打ちをかけて、平成の大合併は平成の大過疎をいずれ生むのではないかと思っています。
 
島根県六日市町では、周辺自治体と任意協議会を設置して、合併の是非を議論している。
 
吉中委員:島根県六日市町では、益田市を中心にした1市1村5町の7市町村で広域市町村圏でいろいろ事業をやっていましたが、益田市と美濃郡という二つの町村、小さい町村ですけれども、三つと、あとは鹿足という全国的に有名な津和野町と私の六日市町と柿木村と日原町で合併したらどうかという提案を県から貰い、任意協議会を立ち上げております。これも合併を前提としない任意協議会ということで、3月の議会で法定協議会に移るという前提で今作業が進められておりまして、当然町村長が任意協議会に出ておられます。幹事会には助役、総務課長が出て、我々の担当課長が専門部会ということでいろいろけんけんがくがくやっているのですけれども、アンケートの結果が六日市町の場合は20歳以上の全町民を対象にアンケートをしまして、52%が反対という結論が出ております。それも早い段階での結論ですので、もう一回いろいろな形をやるようにはなると思いますけれども、今一番問題になっているのは、例えば津和野町さんあたりは津和野の名前は全国ブランドですので、まず名前を変えるということはないと思うのですけれども、そういう前段である程度、津和野の町に庁舎を置くという前提で前回どうも住民にアンケートをしているようなのです。当然それだったら合併に賛成という意見が多いということなので、それは表には出てきませんが。
 そういう中で今合併の協議会をやっていますものですから、私のところの課長会議というのは結構厳しいものがありまして、私らもかなり口角泡を飛ばして言うのですけれども、とにかく庁舎の位置を決めないで法定協へ入ってもだめだから、そんなものはだめだということで随分けんけんがくがくやりまして、実はこの間の任意協議会で私の町の議長がそのことを、1週間前ですか、任意協議会で発言しました。奥歯に物が挟まっていたのがいきなり取れたのですけれども、では、それをどうするかということで、3月にちょうど津和野の町議会選挙が今度あるものですから、これが終わったら新しい議会の構成の中でそこら辺を検討するということで、今少し落ち着いたのですが、そのコメントのすぐ後に、津和野の議長さんが、町名をなくしてこんなことはあり得ないということを言われたのですけれども、いろいろなエゴがありまして、私たちの町ではほとんど今反対の声が多いのですが、場合によったら庁舎を私の町へ持ってくれば名前は津和野にやってもいいというような乱暴な意見も本当はあるのです。
 全体の一部になるということで、私の町は昭和29年に三つの町村が合併して、2年後に七日市村というのが編入して今の六日市町ですけれども、それでどうなったかというと、一番七日市村がおくれてしまったのです。そういったことがありますので、位置をどこに置くかで大変なことになるのですね。その論議もしないでできるかということで実は今紛糾しているということでして、今いきなり財政推計ばかりやっていますね。財政推計をやれば、それは暗いのはわかりきったことなのですね。ですけれども、先ほど池田委員が言われましたように、私の町あたりで大体年間3億弱切り詰めてやって10年がんばれば、16年後、交付税がどうなるかわからないというお先が見えない中でシミュレーションしたら、何とか食いつないでいった方が得ではないかという声が随分課長レベルでは大きいということです。
 だから、ある意味では住民に、ただ「皆さん判断してください」ではなしに、きちんとしたデータを出して、ナビゲーター役として、それは先のことは本当はわかりませんけれども、判断をするのが政治の判断だろうということで我々は町長に結構言っているのですけれども、今からどうなるかというのは未定ですが、とにかく今一番大事なのは、今までやってきた地域づくり、これが財政シミュレーションをすることによって地についた活動になっていませんで、地域づくりは一体何だったのかということまで今考えざるを得ないような今日的状況に来ているということで、合併というのは大変厳しいものだというふうに報告ということでさせていただきます。







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