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III 議事要旨
 
○「国土保全に資するNPO」について報告
 
国土保全に資するNPOを分類すると、普及・啓発活動を行っている法人が多く、実際に農山村地域において活動を行っている法人は少ない。
 
井上地域振興課長補佐:まず1つ目の国土保全の取り組みを行っているNPOです。これは実際に農山村地域に入って、休耕田を耕したりとか、あるいは植林をやっているというようなものを拾ってみました。数で言うと12でして、数としては非常に少ないものであります。代表例として挙げてありますのが、樹木・環境ネットワーク協会でありまして、岩手県とか北八ヶ岳に入って、間伐をやったりとか、植林をやったりというような事業をやっている団体があります。こういったものが代表的なものです。
 一番多かったのが、次に挙げます国土保全への普及・啓発をやっている団体であります。これがかなり多く含まれております。代表例として挙げられますのが、自然環境復元協会というものでありまして、こちらは環境省とか農水省の後援を受けまして、東京などでシンポジウムをやっている団体です。森林保全の必要性でありますとか、あるいは生態系の保全の必要性、こういったものを対象にセミナーとかシンポジウムをやっている団体です。ここは国の後援を受けてやっておりますけれども、最近は自治体の後援を受けまして同じような取り組みをやっている団体が非常に多くなってきております。これが43あります。
 その下に挙げておりますのが、その他地域の環境保全の取り組みをやっている団体であります。例として挙げておりますのが、島根県の斐伊川流域環境ネットワークであります。こちらは斐伊川流域に着目したものでして、斐伊川流域の休耕田を活用しまして、そこに菜種を植える。これを使って地域の人たちとか子供たちに自然の有効性について説明をしていこうというようなプロジェクトをやっている団体です。数は44ありますけれども、大多数は、どちらかといいますと、川の清掃をやったりとか、海辺の清掃をやって環境保全をしていこうという取り組みの団体が非常に多くなっております。
 四つ目のところですが、その他地域の環境保全の啓発を行っている団体です。ここでは愛知県豊田市の矢作川の取り組みを挙げておりますけれども、矢作川で地域の子供たちを対象に、実際に川遊びをやってもらって、その中に生きている自然の生き物、こういったものの大事さを体験してもらおうという取り組みをやっているものです。
 次に、最近ちょっとふえてきているということで注目しておりますのが、農業や林業体験を通じまして、市と農村交流をやっていこうという取り組みをやっている団体です。文部科学省の学習指導要領が変わりまして、体験学習の時間というものが設けられまして、子供たちがこういったものに参加するという機会がふえてきております。
 次に、農業・林業・その他ということに分けておりますが、どちらかといいますと、農山村地域にありまして、そういった体験農業とか、自然観察会を企画する団体を挙げております。地元にあって農家の方に働きかけをして、実際に体験農業などをやってもらおうということを企画している団体であります。
 
従来は農山村地域にあって、具体的に農村を対象に国土保全活動をやってきたという団体が多かったが、最近は都市部にあって、都市の住民を送り出す役割を担っているNPOがふえてきている。例えば、NPO法人「地球緑化センター」は、都市住民を農村に派遣するために、募集及び研修を行うことで、農山村との交流を進めている。
 
井上地域振興課長補佐:地球緑化センターの活動は若者を地方に派遣する「緑のふるさと協力隊」というものをやっておりまして、8年間の成果、155名参加者がおりますが、このうち62名が地元に定着するという実績を上げております。地元の仕事としては、実際に森林組合に就職したりとか、地元で農業をやったりとか、あるいは市町村が第三セクターをつくって物品販売などをやっておりますけれども、そういった販売を担う、あるいは商品企画をやるような仕事に従事しているというものであります。
 こちらの方ですが、研修プログラムとして特徴がありますのは、できるだけ実務よりも心理面でのフォローアップをやっていこう、縁もゆかりもない都会の人たちが地元に定着するに当たっては、できるだけ心理的な障害を除去しようというところに研修の力点を置いております。もう一つの特徴としまして、例えば林業、農業等、特定の分野だけにとらわれずに、できるだけ最初は幅広い作業に従事させて、その中で本人の適性を見きわめていこうというようなやり方をやっております。こういった特徴がありまして、常に定着率が高いということで最近注目されているものです。
 また、リーダーの養成方法が特徴的でありまして、プログラムの経験者を世話役として育成する、その世話役となった者が後輩の指導を担うという、特徴的なリーダーの育成方法をとっております。
 また、地球緑化センターは、こういった1年間という長期間にわたる派遣方法のほかに、「週末森林ボランティア」というものを別途やっておりまして、こちらは参加者が若者というよりも、どちらかというと中高年の者の参加が多いということでありまして、こういった点が長期のものと短期のもので内容的に際立った特徴があります。大体6割近くは40歳以上の参加者、それから1回参加する者が口コミなどを通じてリピーターをふやしていくという状態であります。
 最後に、考察ですが、一つは国土保全に対する関心が非常に人々に高いということもありまして、うまくプログラムを組むことができればさらに広範な参加が期待できるのではないかと思います。その際には都市住民の応募のきっかけをうまく工夫するということもありますし、また、農山村における受け入れ体制の整備というものも重要だろうと思います。実際、都市と農村交流をやっている団体でヒアリングがありましても、なかなか地元の受け入れ体制が整っていないということもありまして、活動が困難であるというような回答をしているところも多くございます。
 それから、行政がやっている対策と違いまして、こちらの特徴としては、見知らぬ土地に定着させるという意味で、心理的な側面のフォローを充実してやっているという点が特徴になっております。
 それから先ほど御説明しましたように、専任の者がリーダーになるというよりも、むしろプログラムの経験者が新たに後輩を指導するというNPO独自の取り組みがなされているという点が特徴であります。
 もう一つ、最後になりますが、地元定着を目的とした事業と一時的なボランティア事業ではかなり参加者に違いが見られるという点でありまして、両者をうまくミックスさせるという点が重要ではないかと思われます。
 
○わがまちづくり事業について
わがまちづくり事業では、集落単位で事業を実施しているところが多くなってきている。
 
井上地域振興課長補佐:これは、分権型社会における地域づくりを担っていこうということで、住民が主体的に活動しているものに対して、地方交付税などを使って支援していこうという事業であります。平成15年度におきましても750億程度の事業費を見込んでおります。このうち農山村地域における事業、典型的なものをまとめさせていただいております。
 この全般的な傾向でありますが、どちらかといいますと集落単位で事業を実施しているものが非常に多くなっております。このうち兵庫県の神崎町では、集落単位というよりも、どちらかといいますと地域にとらわれずに自主的なグループをつくって活動しているものを支援するという形態をとっておりますが、その他のものというのは、集落単位、もしくはこれに準ずる公民館を単位とした活動になっております。
 具体的な活動内容でありますが、一番多く見受けられますのが、お祭りといった伝統文化を守っていこうという取り組みが非常に多くなっております。その次に多いのが、地域の景観を守っていこうというものでありまして、地域において公園の花壇をつくったりとか、こういったものが二つ目に多い取り組みであります。三つ目に多い取り組みとしまして、福祉対策に関連するものでありまして、例えば高齢者、非常に買い物が高齢になると困難になるので、買い物支援をしていきましょうとか、あるいは高齢者が病院に通う際に輸送してあげましょうと、こういったサービスが多くなっております。
 どちらかといいますと、国土保全に直接携わるというような事業は比較的少ないわけでありますが、その中でも多いのが、例えばホタルの里整備ということで、地域独自の自然環境の保全というものに対する取り組みが多くなっておりまして、例えば山形県の最上町の中でも、ホタルの里整備というような事業が行われているところであります。
 
○緑の雇用事業について
緊急雇用対策事業として和歌山県から始まった「緑の雇用事業」は、今年度から、「緑の雇用担い手育成対策」として普通交付税措置が検討されている。
 
井上地域振興課長補佐:平成13年度の補正で、緊急地域雇用創出特別交付金が国費で配られました。事業期間として平成13年度から16年度までということで、厳しい雇用情勢を踏まえて雇用対策を図っていこうということで、都道府県、それから市町村に基金をつくりまして、この基金を使って雇用を創出していこうというものであります。全国ベースで3,500億円用意されております。雇用期間は原則として6カ月未満ということで、地域で必要な教育・文化、環境保全、治安・防災、福祉・保育、地域振興など、こういった事業を実施するに必要な雇用を、この基金を使ってやっていこうというものです。国土保全関係では、森林作業員による身近な自然再生といった、こういった森林整備の強化を通じた環境保全を図るという事業も含まれております。国の方でこういった取り組みをしたものですから、地方において緑の雇用事業という形で具体的な取り組みがなされております。
 それが、和歌山県がつくりました「緑の雇用事業」と題するものであります。厚生労働省の緊急地域雇用創出特別交付金をきっかけとして創出したもので、都会からの移住希望者や失業者を山村に呼び、間伐・植林・林道整備など森林保全に携わってもらい、山村における雇用や人材の定住を目的としたものであります。和歌山県では、平成14年度に主に京阪神の都市住民を対象に就業相談会を開きまして、結果として644名の相談会への参加がございました。そのうち125名を「緑の雇用事業」として、実際に地元において林業に従事してもらうというような成果を得たわけであります。
 しかしながら、この雇用事業は、原則として6ヵ月未満という期間限定がかかっておりまして、なかなか地元への定住ということにつながらないということもありまして、和歌山県と三重県の呼びかけによりまして、41道府県の賛同を得て、国に対して継続的に雇用の創出を図っていただきたいという要望書を取りまとめて、国の方に働きかけてまいりました。その結果、平成15年度よりこの期間を延長するということを主眼にします、「緑の雇用担い手育成対策」というものが設けられました。具体的には、緊急雇用対策で雇われた林業就業希望者を対象に、森林整備活動を行っていこうというものです。
 緊急雇用対策事業では、6カ月間という雇用期間が限られていたわけでありますが、さらに1年間こちらで活動してもらおうというものであります。国費では、林野庁が国費でモデル地区を設定いたしまして、緑の雇用担い手育成対策というものを創設いたしましたが、国費で賄えないものについては、総務省の方で普通交付税措置をし、これによってそれ以外の地域でも同様の事業が行えるように措置をすることとしております。







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