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II 今年度調査における分析
 今年度調査では、集落における公益的機能の維持・増進方策を担い手という観点から検討するために、平成12年度調査で行った、以下に示す設問5を、今回新たに組み直して再集計した。この調査では、「集落の公益的機能を維持するための対策や活動がありましたら、その概要等を記入してください」という聞き方をしている。市町村から提供された事例の総数は、1,215事例である。かなり膨大な事例がこの調査で収集されているが、回答した市町村は954市町村で、全体で約3分の1の市町村において様々な国土保全に関する取り組みが行われているという結果を得た。
 
<アンケートの設問>
問5 貴市町村において、集落の公益的機能を維持するための対策や活動がありましたら、その概要等を記入して下さい。
<記入する対策・活動の例>
・森林や農地の維持・管理等を行う財団や第3セクター等の設立と運営
・耕作放棄地や荒廃林地の増大等による自然災害の発生を抑制するための対策、活動
・耕作放棄地や荒廃林地の増大等による景観の崩壊を抑制するための対策、活動
・耕作放棄地等を活用した都市住民との交流や農業体験・研修等の活動
・森林整備、植林、草刈り等への住民参加活動やボランティア活動
・その他、国土保全の見地から行うハード事業、ソフト事業など
 
(1)事業・活動内容の分野
 この1,215事例を分野別に類型化して整理すると、事業・活動の分野(「環境整備・保全」、農業振興・農地保全」、「森林整備・保全」、「都市農村交流」、「防災・補修」、「その他」)の6分野であり、図−1のとおりである。
 一番多かった事例が農業振興や農地保全に関する取り組みに関する事例であり、これは495事例で約4割ある。次に多かったのが森林整備や保全に関する事例、362事例で約3割ほどである。そして3番目が環境整備・保全と分類したが、これは集落の周辺環境整備・保全に関する取り組みであり、これらを通して国土保全を行っているという事例が、191例で約16%と、分野別に大別すればこのような傾向になっている。
 
図−1 国土保全に資する取り組みの分野別事例数
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(2)事業・活動の実施主体
 このような取り組み事例の実施主体はどうなっているかを再度集計したものが、図−2である。(1)の環境整備・保全の191事例では、総数は第3位だったが、この取り組み事例の実施主体を見ると、集落が45%で最も多い。けれども、市町村と任意団体が実施主体となっている事例も、両者が約3割ある。最も多かった(2)の農業振興・農地保全は、495事例あって総数は第1位だったが、これについては市町村が実施主体である事例が最も多く約4割であり、その次が集落であった。この二つで大体7割程度を占めているという結果であった。
 一方、(3)の森林整備・保全に関しては、市町村が約46%で最も多いが、次に多かったのが「その他」となっている。その他というのは任意団体や地元の学校、ボランティア団体などである。森林整備では少し特徴が違い、行政の次に上がってきたのがこの「その他」に分類される主体である。
 また、(4)の都市農村交流では、今回は90事例だったが、市町村、その他、集落と、概ねこの三つの主体で取り組みが行われており、(5)の防災・補修については、市町村が中心となって行っている。
 なお、(6)のその他の事例は50事例ほどあり、主な内容は、総合的なまちづくり事業、集落内の住宅建設事業、あるいは空き家バンク事業などであった。これらの事例については、行政側の市町村が主体で取り組まれているという傾向になっている。
 
※「図−2 事業・活動の実施主体別にみた事例数割合」参照
 
(3)事業・活動の実施効果
 市町村の国土保全に資する取り組み事例について、事業・活動の実施効果を分野別に再集計したものが、図−3である。
 これは、分野別の事例ごとに事業・活動の実施効果を集計・整理したものであるが、全体的な傾向としては、景観、いわゆる景観形成や景観保全といったところに最も取り組み事業の実施効果があったというようなケースが多かった。ただし、(3)の森林整備・保全を見ると、水循環の保全などの改善に寄与したといったような効果を上げている事例も多く見られた。
 (4)都市農村交流では、その他がかなり高く、55.6%になっている。具体的な効果の内容を事例ごとに見ていくと、担い手が養成された、あるいは地域の関心が高まった、地域のPRにつながった、といった面での効果になっている。
 
 
(4)事業・活動の将来展望
 次の図−4では、こういった現在取り組まれている事業について、将来的にどのように展望しているかという調査を行って、その結果を分野別に集計してみたものである。(2)の農業振興・農地保全、並びに(4)の都市農村交流・この二つについては今後も活動や取り組みを拡大していくといった市町村が40%を超えて、やや高くなっている。ただし、(1)の集落環境周辺の整備・保全については、現状維持(52.9%)が最も高くなっており、同じく(3)の森林整備・保全についても、むしろ拡大というよりもこの活動の取り組みを現状維持していくといった傾向にある。
 
 
 
図−2 事業・活動の実施主体別にみた事例数割合
 市町村の国土保全に資する取り組み事例について、事業・活動の実施主体を分野別に集計すると、以下のとおりである。
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