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事例2 四街道市(千葉県)
〜まちづくりを目指したワークショップにおける協働〜
1. これまでの取組み
■総合計画基本構想に市民の提言――「四街道まちづくり市民会議」
 現市長が選挙公約として掲げた、(1)市民参加の積極的推進、そのための(2)情報公開、および(3)説明責任という3本柱の重要な一つとして位置づけられていたもので、市長のリーダーシップのもとで始まっている。
 市は平成13年度に、市民参加の積極的導入を重点施策として位置づけ、市役所の部課長をメンバーとする「四街道市市民参加研究会」および実務担当者からなる「同幹事会」を設け、調査研究を進めた。市が検討していた市民参加とは、今までの市民参加を一歩進めて、行政運営の意思決定のプロセスに、審議会のような行政サイドから委嘱された委員のみが参画するのではなく、「市民一人ひとりが個人として主体的に参加する」方向を目指すものであった。
 そして市の総合計画を改定する時期に当たり、平成16年度を初年度とする基本構想・基本計画策定への提言を行うことを目的に、平成13年12月「まちづくり市民協議会(仮称)」を設置し、14年2月に「四街道まちづくり市民会議」を正式名称に決定した。
 当初、市は、基本構想に対する提言を「四街道まちづくり市民会議」に期待していたが、「市民参加の積極的推進」を図るという目的のもと、まちづくりへの市民参加のシステムを構築する必要があるとの判断から「四街道まちづくり市民会議」を通して市民参加を図ることにした。
 「まちづくり市民会議」の設立は市の主導により行われたが、市民の自主的な運営により活動する組織である。
 市の職員はオブザーバーとして参加し、運営には参画しない。会議は各分野ごとの14の分科会でワークショップ形式で行われている。市は、あらゆる施策を実施するうえで、企画・運営・実施・フォローの各段階への市民参加を期待しており、まちづくり市民会議は基本構想の提言をして終わる限定的なものでなく、継続的にそれに参画することが期待されている。市は市民参加によりさまざまな面で市行政の効率化につながると考えている。
 
■市民会議と市のパートナーシップ協定
 まちづくりに「協働」して取り組むため、四街道市と四街道まちづくり会議の関係や役割、協力をどのように行うのかを取り決める「パートナーシップ協定」を両者の間で調印している。
 この協定の大きな特徴は、多くの自治体でのパートナーシップ協定が提言を行うまでにとどまっているのに対して、提言後の事後評価を行うというフォローアップが規定されている点にある。
 平成14年9月、まちづくり市民会議から四街道市基本構想への提言「四街道市民プラン21」と「四街道市における市民参加導入指針」原案への意見書が提出されており、平成15年2月には、基本計画への提言についても同様に提出される予定である。
 
「四街道まちづくり市民会議の提言書
 提言書は、広範なまちづくりについて言及している。以下に示すのは、14の各分科会からの提言である。
 
[提言書四街道市民プラン21]
(1)四中・セイコー跡地開発分科会:四街道の顔づくり
(2)都市基盤整備・道路・交通・鉄道分科会:「みちとくらし」に関する官民協働の知恵の発掘
(3)駅前整備分科会:南北駅前広場の若返りと交通網の分散化
(4)ヨッピィ(市内循環バス)分科会:交通不便地域の解消による四街道市の活性化
(5)ごみ・リサイクル分科会:四街道市における今後のごみ処理のあり方
(6)自然環境分科会:自然と共生した、緑豊かなまちづくり
(7)楽学ネットワーク−育む会−:子ども自らの育ちを応援する地域社会づくり
(8)生涯学習(自分を育てる)分科会:うるおいと活力を生む生涯学習社会の実現をめざして
(9)安心できる生活分科会:介護と子育てへの提言
(10)都市の活性化分科会:都市の活性化、産業振興の具体策の提言
(11)平和と人権分科会:あらゆる人権の尊重と平和な社会の実現を推進するまちづくり
(12)市民参加のあり方分科会:みんなで参加「まちづくり」
(13)自治体のあり方分科会:情報公開で明るいまちづくり
(14)地域のまちづくり分科会:地域住民の交流の促進と環境整備
 
2. 四街道市における協働
■公共施設設計にNPOのノウハウを活用したワークショップを導入
 四街道市におけるNPOとの協働事業は、市の公共施設建設計画における市民参加を目的としたワークショップの運営委託があげられる。
 各方面で「市民参加」を進めようとしていた市は、公共施設の建設についても、市民参加を図っていくこととし、建設を計画していた(仮称)南部保健福祉センターについて、施設の基本設計の段階から市民参加によるワークショップで行うこととし、ワークショップの運営について、「千葉まちづくりサポートセンター」に委託した。
 ワークショップ方式については「まちづくり市民会議」への参画により、市も一定程度のノウハウは有していたが、ワークショップの円滑な運営と建築・設計の専門知識を活かし市民の要望を具体的な形として施設設計に反映することを期待し、その運営を千葉まちづくりサポートセンターに委託することとしたのである。
 なお、千葉まちづくりサポートセンターは県内で実績を有しており、担当課においてもその評判を知っていたことが委託に至った大きな要因であったとのことである。
 市としては、NPOとの契約は初めてであったが、
(1)特定非営利法人として法人格を取得し、公益的な市民活動をサポートすることを目的としている
(2)まちづくり、建築・設計に関する専門知識を有している
(3)千葉県内を主な活動範囲として同様なワークショップ運営の実績を有している
ことを理由として、随意契約にて契約を行っている。
 ワークショップは参加市民の意見を採り入れながら、サポートセンターがコーディネータとしてまとめ、それに市と設計業務を受託した業者も加わる形で行われた。
 平成13年7月から月に1回のペース、計5回で基本計画を、そして14年には実施設計、さらに施設運営のシステムについての検討を行っている。平成15年秋には、ワークショップでの検討を重ねて、施設が完成する予定である。
 
<南部福祉センターのワークショップ検討会のスケジュール>
第1回  平成13年7月  テーマ:呼びかけ
第2回 7月  キモチづくり
第3回 9月  キモチづくりからカタチづくりへ
第4回 10月  カタチづくり
第5回 12月  カタチづくりから仕組みづくり
第6回 14年4月  カタチと使い方のかかわり(1)
第7回 5月  カタチと使い方のかかわり(2)
第8回 7月  施設運営の仕組み(1)
第9回 15年2月  施設運営の仕組み(2)
 
 また市では、千葉まちづくりサポートセンターをコーディネート役に、「都市核北地区公共施設整備構想」の策定を進めている。
 これは、「四街道中学校および工場跡地整備」の公共部分に関し、“四街道の顔”にふさわしい公共施設のある都市空間づくりをするもので、南部福祉センターのワークショップ方式での実績をもとに同様な手法で取組みを行っている。
 ワークショップ方式での公共施設整備には、準備の段階から考えて、相当の時間を必要とするが、市では公共施設整備についてワークショップ検討をするメリットとして、(1)時間はかかるが利用者(市民)の声が組み入れられる、(2)施設の設計や運営に関する検討を行うプロセスに関わった人が施設に愛着を持ち、運営に際してもボランティアとして働いてくれる人が育つ、ということをあげている。
 また、どちらのワークショップにおいても、その意見を集約した「かわらばん」を会合ごとに発行して参加者が情報を共有できるようにするとともに、市のホームページに掲載し、市民に情報公開をしている。この「かわらばん」という「記録」は、情報発信媒体であると同時に、今後の協働事業をする際の貴重な資料と市は考えている。
 
■市民活動・NPOへの支援事業
 四街道市内には、NPO法人が10団体ある。10法人のうち半分の5法人が平成14年に認証を受けている。福祉系の団体を母体とする団体が多いが、近年はその活動内容も幅が広がってきている。市としては市民活動を行っている団体に対して、市との協働を念頭にNPO法人格取得をすすめているが、踏み切れない団体が多い。
 また市は、平成13年度から、まちづくり活動助成事業として、市民活動に対する助成事業も行っているが、NPOに対する支援についても市民活動の一つの形として、支援していきたいと考えており、具体的な支援をどのように実施していくかということについては今後の検討課題となっている。
 
3. 課題と今後の展望
■NPOに資金支援はせず、ワークショップの運営等の協働事業を模索
 四街道市では、NPOへの支援として資金的な支援は行わない方向で検討している。また、NPO法人であってもその組織の代表者に運営・存続がゆだねられていることが多く、組織の継続性という点で不安があることで、当面は、ワークショップの運営等の単発的な事業で、その団体の活動について公益性が認められれば支援を行うという方針で臨んでいる。
 NPOの活動は未だに弱く、市の側の育てていくという姿勢が大事で、協働できる部分から実績を積んでいき、最終的に多くの分野において協働事業を行っていく。そのような段階を踏んでいかないと、いつまでも部分的なお手伝い程度の事業で終わってしまうことになると市では考えている。
 
■自治会等との連携によるコミュニティ整備構想
 まちづくり市民会議をはじめ、四街道市の市民参加の活動は歩みを始めたばかりで、これから実績が伴えば、その実績に基づく責任が出てくる。今は各団体が実績を積む段階にあると市は認識している。
 現在は、市民会議やまちづくりのワークショップなどを通して、市内にNPO法人、市民活動・ボランティア団体が立ち上がり、各団体が個々に「点」の活動をしている。
 市では、そうした活動が孤立しないように、NPOを含め市民活動を包括的に市がどう支援をしていくかという視点を基本に、今後のコミュニティのあり方について、「コミュニティ整備構想」として平成14年度内にまとめる予定である。
コミュニティ整備構想には、
(1)自治会等市民組織における地域コミュニティ活動やNPOほか市民団体活動の活性化方策
(2)公共コミュニティ施設の整備配置・管理等の考え方
(3)コミュニティ活動の醸成に向けた方策
といった点に着目し、策定することとし、構想の策定については、四街道まちづくり市民会議や自治会、NPO等との緊密な連携のもと、市民と協働で実施することを前提にし、ワークショップを開催して進めることとしている。
 このコミュニティ整備構想によって、四街道市でも今後、NPOを含めたさまざまな市民活動に対して体系的な支援が確立されることになる。
 
千葉まちづくりサポートセンター(愛称:ボーンセンター)
 千葉大学工学部都市環境システム学科の延藤安弘教授が代表を務める認証NPO法人。会員数は個人96名、団体6団体(平成14年3月現在)を擁する。
 
<事業概要>
・市民活動のサポート
 相談事業のほか、ちばNPO連絡協議会(NPOちばネット)の幹事団体を務め、NPO・市民活動団体の連携の強化を図るなど。
・調査研究
 「地域通貨“ピーナッツ”」の運営。コミュニティの再生や商店街の活性化を目的とした地域通貨の活用と普及に関する研究ならびに実践。
・収益事業
 住民参加のまちづくりのコーディネート(ワークショップの企画・運営)の行政などからの受託事業や、講演会などへの講師派遣、出版事業。







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