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財団法人日本ナショナルトラストからのメッセージ
網野町に誕生した「琴引浜鳴き砂文化館」・・・杉浦喬也
 このたび、日本海に面した京都府網野町に日本ナショナルトラストのヘリテージセンター「琴引浜鳴き砂文化館」が誕生し、平成十四年七月十八日、その竣工式が現地で盛大に行われた。
 竣工式には、建設に当たって御尽力下さった(財)日本宝くじ協会理事長の小林実さん、網野町町長浜岡六右衛門さんなど多数の方々の御参列をいただいた。
 もともと私共財団は、昭和五十九年より琴引浜の鳴き砂の調査を行ってきたのであるが、その成果を元に「全国鳴き砂ネットワーク」を設立し、今日まで全国二十数団体が加わって交流の輪を広げているのである。その代表幹事団体を網野町さんにお願いしている。
 丹後半島の反対側、若狭湾の宮津市には、有名な日本三景の一つ「天橋立」がある。私も若い時、ここを訪れ、小高い丘に登って、後ろ向きに股から覗き、「あゝ絶景かな」と感嘆したことを思い出した。
 網野町一帯は昔から、丹後縮緬の産地として名高いものがあったが、戦後ナイロンなどの化学繊維の発達に押され、高価な縮緬の需要は減少し、工場も減少した。現在では貴重とも言えるその縮緬工場(三共織物[株])を訪れ、浜岡社長の熱のこもったお話を伺い、操業を縮小した工場の様子を拝見できたことは、大変感銘深いものがあった。
 十八日の昼、網野町の浜岡町長さんの家で町長御自身による手打ちそばの御馳走をいただいた。本当にお世辞抜きで、私のこれまでの味の体験の中での最高の旨さのそばであったと言ってよい。
 当日の宿は、琴引浜に面した万助楼であり、清楚な女将さんと娘さんのサービスの様子に久しぶりに心地よい旅の感触を味わうことができた。
 十九日の帰りは車で福知山まで出たが、途中加悦町に立ち寄り、その町並みの静かな佇まいにホッとした気分となり、加悦SL広場を加悦フォローライン[株]の須藤社長の御案内を受けて古いSLも拝見できたのも良い思い出となった。
〈(財)日本ナショナルトラスト会長〉
 
◎図書紹介◎
メッカ−聖地の素顔 野町和嘉著
岩波新書カラー版
本体一〇〇〇円
 九年前にサウジアラビアから著者に突然、異教徒禁断の地であるメッカの撮影依頼が飛び込んできた。戸惑いながらもしだいに不思議なイスラムの魅力にとりつかれていった。さまざまな困難に巻き込まれながら、撮影のエピソードをまじえ聖地メッカと神に祈りを捧げるイスラムの人々を文と写真で紹介する。
 なかでも巡礼月になると世界から二百万人のイスラム教徒が集まってくる。ハッジを迎えると最高潮に達し、数キロの巡礼道を一斉に歩き始める様は圧巻である。
 この小さな新書判からあふれんばかりのエネルギーを感じるのは、写真はもちろんのこと、著者のフィールドワーカーとしての筆力に負うことが大である。
 
世界遺産・アンコール遺跡の光 写真・文 田村 仁
小学館文庫
本体八三八円
 カンボジア内戦から戦場取材に始まった著者は、アンコール遺跡に魅了され今日まで三十年間撮り続けてきた。インドのヒンドゥー教文化に興味を持ち続けてきたカメラマンの視線が、ヒンドゥー教の多くの神々をやさしく促え、読者に平易な言葉で語りかけてくれるのは、著者の人柄のような気がする。この言葉はやはり三十年間通い続けたカメラマンの血と汗の結晶であろう。
 アンコール遺跡の背景にあるカンボジアの人々の姿も多く登場するのだが、それがなんとも言いようのない悠久のアジアを感じさせてくれる。文庫本に収められてしまったことが残念で仕方がない。
 
自然と文化 バックナンバー
1―渚と日本人 83年夏・・・品切
2―東京論 83年秋・・・品切
3―蔵の文化 84年新春・・・品切
4―風 84年春・・・品切
5―橋 84年夏・・・品切
6―妖怪 84年秋・・・品切
7―白と黒 85年新春・・・品切
8―月と潮 85年春・・・品切
9―かぶる 85年夏・・・600円
10―巨人と小人 85年秋・・・600円
11―眼の力 86年新春・・・品切
12―カミの観念 86年春・・・品切
13―地方の都市空間 86年夏・・・品切
14―音霊 86年秋・・・品切
15―アジアの仮面芸能 87年新春・・・品切
16―異人と妖怪 87年春・・・品切
17―都市の路地空間 87年夏・・・600円
18―中世への回路 87年秋・・・品切
19―変身変化 88年新春・・・550円
20―環シナ海文化と九州 88年春・・・品切
21―古代祭祀の時空 88年夏・・・550円
22―小さな神々 88年秋・・・550円
23―辺境を歩いた人々 89年新春・・・550円
24―雲南・貴州と古代日本のルーツ 89年春・・・550円
25―動物の霊力 89年夏・・・570円
26―草荘神 89年秋・・・570円
27―名所【ハレ空間】 90年新春・・・570円
28―歌枕【空想の天地】 90年春・・・570円
29―アジアの歌垣 90年夏・・・570円
30―中世居館 90年秋・・・570円
31―カミ殺し 91年新春・・・600円
32―イモ文化再考 91年春・・・550円
33―柱のダイナミズム 91年夏・・・600円
34―東シナ海を巡る日韓比較民族 91年秋・・・570円
35―幻覚都市 92年新春・・・570円
36―東アジアの風水思想 92年春・・・品切
37―儀礼と生命原理【中国西南少数民族の祭祀】 92年夏・・・570円
38―出羽三山と山岳信仰 92年秋・・・品切
39―アジア海道【漂海民をめぐって】 93年新春・・・570円
40―南島文学の発生と伝承【文学とシャーマニズム】 93年春・・・570円
41―小集落の地名【地名発生と共同幻想】 93年夏・・・570円
42―東アジアの綱引 93年秋・・・570円
43―台湾の祭祀儀礼とふり 94年新春・・・570年
44―動物・精霊・自然 94年春・・・570円
45―日本海をとりまく歌と踊り 94年夏・・・570円
46―笹森儀助の探検と発見 94年秋・・・570円
47―芸道の花【世阿弥と現代能】 95年新春・・・570円
48―鎮魂の思想史【南島文学の発生から】 95年春・・・570円
49―神人のにぎわい【ムーダンとアジアのシャーマン】95年・・・570円
50―東アジアの虎文化 95年・・・570円
51―四万十川の原風景 96年・・・570円
52―東アジアの追儺【鬼やらい】 96年・・・570円
53―日本人と米 97年・・・570円
54―隠れキリシタンと鯨 97年・・・品切
55―東アジアの人形戯 97年・・・600円
56―古代人の心象風景【白川静の世界】98年・・・600円
57―円空のふるさと 98年・・・600円
58―風土を読む。吉田東伍 98年・・・600円
59―見世物 99年・・・600円
60―山人との秘儀 99年・・・600円
61―アジアの柱建て祭り 99年・・・900円
62―瀬戸内を生きた人びと 00年・・・900円
63―御幣 00年・・・900円
64―紅山文化と縄文文化 00年・・・1000円
65―日本人の魂のゆくえ 01年・・・900円
66―村山智順が見た朝鮮民俗 01年・・・1000円
67―ニホンミツバチの文化誌 01年・・・1000円
68―ぼくの日記帳は、カメラだった 02年・・・1000円
69―(1)アジア都市文化学の試み(2)大阪からのまなざし 02年・・・900円
70―アメ・ツチの揺らぎ 02年・・・1000円
71―東アジアの樹皮文化 02年・・・900円
72―蝋燭 03年・・・1000円
 
◎主な取扱い書店・・・
【東京】―八重洲ブックセンター
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【新宿】紀伊国屋書店南店・・・青山ブックセンター・ルミネII
【池袋】―リブロ池袋店・・・芳林堂書店・・・ジュンク堂
【神保町】―岩波ブックセンター信山社・・・三省堂書店・・・書籍アクセス
【六本木】―青山ブックセンター
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70―自然と文化
―[特集]アメ・ツチの揺らぎ[私のアジア取材]
2002―発行=二〇〇二年一一月二九日
編集+発行=〈財〉日本ナショナルトラスト







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