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6. メンテナンスのための設備
 メンテナンス用の設備は保有船の大きさ、隻数等規模によって異なる。表7にまとめて示す。
 
表7 メンテナンス設備
場所、船名 South S.S.
Port Museum
Rose MysticS.
P.Museum
Mayflower.
II
Constitution
鉄工用 Compressor, Welding Mach. Chipping Mach.鋼船が多いので電食防止の微電流を流すElectrosys Protection Systemあり        いざとなったら何でも入手できる
木工用 一般木工機具の他は特になし 巨大な工場と木材ストックヤード すべて手作業、大きな工事はドライドック時 ネービーヤードの一画に巨大なヤードあり。蒸し曲げ機、その他完備
 
 以上を参考に、復元船には帆船ミュージアム付属の小規模メンテナンス工作室を設ける程度でよいと考える。
 
7. 観客対策
 メンテナンスと観客は相容れない要素があるので、調査してもらった。
 
表8 観客対策
場所、船名 South S.S.
Port Museum
Rose Mystic S.
P.Museum
Mayflower.
II
Constitution
対策内容 日常メンテナンスは観客がいても実施。年次修理時は観客を入れない。最近身体の悪い人のための通路を設けた。 出口、入口夫々専用。ギャングウェーとブルーワークにはネット展張 ドライドック中でも観客が近づける。メンテナンスは開館前2時間閉館後2時間に実施 出口/入口専用道路。原則として観客がいる時はメンテナンス作業はしない。夜間等に行う。 年間100万人以上、365日オープンワークスケジュールを立てメンテナンス実施
以上をみると、
 (1) ほとんどが観客第一主義を採っている。メンテナンス作業が観客の邪魔にならないように配慮されているが、副次的に観客の安全性確保にもなっていると考えられる。この問題は、勤務時間との関連があるので、軽々しく決められない要素を含んでいる。むしろ、帆船ミュージアム全体の基本姿勢にかかわる問題であろう。
 (2) 出入口は夫々専用として混雑を避けている。
 (3) 身体障害者に対する考慮を払っているところもある。
 昨今の社会情勢では身体障害者を断ることはできないだろう。真剣に考えなければならない。
 目下のところ上甲板上だけを考えているが、それで十分か。
 
8. その他の参考
(1)日照に対する考慮
 片側だけから日照を受けると片側だけが劣化が促進する。これを避けるため、係留方向を変える。Rose, Mystic S.P.Museum, Constitution(年に1回)
 このことは係留地の状況によるので、係留地決定によって日照状況も調査する。
 
(2)強度に関する注意
 復元船の強度確保のため、木材の間に鋼材を挿入したり、船体捩れ防止のため、一部甲板に鋼材を使用したりしている。(Roseの例)慶長遣欧使節船は現代の強度基準を満足しているとは言え、経年変化で補強の必要が生ずることが予想される。このため、定期検査ごとに船体主要部の寸法を計測し、変化を監視する必要がある。
 また、基準を明確にするため、完成直後の計測を行う必要がある。
 
(3)エンジンの搭載
 運航時、係留方向の変更時等でタグボートの衝撃による船体の損傷を防止するため、小馬力でもよいからエンジンを搭載すべきであることが強調されている(Rose)が、トレーニングシップ、クルージングシップとして運航されているRoseではよく理解できる。慶長遣欧使節船の出航頻度は限定されているので、それほど深刻に考えなくてもよかろう。タグボートの操船を十分注意して行うことで対処できよう。
 
(4)記録と検査
 Constitutionが実施している記録と検査は、如何にも米国海軍らしいやり方である。メンテナンスの基盤は記録であるので、参考にしなければならない。メンテナンスマニュアルの中で決定したい。







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