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第2章 グリーン経営の進め方
 グリーン経営を進めるためには、「自社の環境保全活動の取組状況の把握」→「評価結果に基づく改善策の検討」→「行動計画の作成」→「計画に基づく取組の推進」→「取組状況の把握と見直し」というサイクルによって、様々な環境保全活動の継続的な向上を目指すことが必要です。
 
 このマニュアルでは、中小規模の法人ハイヤー・タクシー事業者の実態に合い、かつ、容易に環境保全活動が行えるよう、環境保全への具体的な取組を「グリーン経営推進チェックリスト」(以下、チェックリスト)で把握・評価し、それをもとにグリーン経営を進めることができるような仕組みを示しています。
 
 チェックリストには、法人ハイヤー・タクシー事業者が目指すべき環境保全活動への取組が示されています。これをもとに自社の環境保全活動への取組状況をチェックすることによって、まず、現状での取組内容の整理と取組レベルの把握が可能になります。また、自社の取組以外にどのような取組があるのか、より高いレベルの取組としてどのような取組があるのかを知ることができます。
 
 このような自社の環境保全活動の取組状況の把握をもとに、次に示す「グリーン経営推進チェックリスト」を活用したグリーン経営の推進フローに沿って、取組の改善策の検討、行動計画の作成・見直し、計画に基づく取組の推進、取組状況の把握と見直しを進めることになります。
 
「グリーン経営推進チェックリスト」を活用したグリーン経営の推進フロー
(拡大画面:56KB)
 
1 自社の環境保全活動への取組状況の把握
 「グリーン経営推進チェックリスト」を利用して、自社の環境保全活動への取組状況を把握します。チェックリストの概要と使い方については、第3章に説明がありますので、これに沿ってチェックリストを記入します。
 
2 取組の改善策の検討
 グリーン経営を進めるにあたっては、環境保全への取組を継続的に進めていくことが大切です。チェックリストを用いて、自社の環境保全活動の取組状況を把握したら、その結果に基づいて取組状況を評価し、環境保全活動の効果が上がるよう取組内容の見直しを図ります。
 
■取組状況の評価
 チェック結果に基づいて取組状況を評価します。
 目標を達成できたかどうかについて、「達成(○)」「未達成(×)」で評価したり、過去の実績と比較してレベルが上がっているかなどを評価することも重要です。
 
■評価結果に基づく取組の改善策の検討
 評価結果に基づいて、環境保全活動の効果が上がるよう、取組内容を見直します。
 新たに取組を始める場合には、目標(取組項目と達成レベル)を設定します。
 既に、取組を進めてきた企業で目標を達成できなかった場合は、その原因がどこにあるのかをさまざまな角度から分析し、改善策の検討を行います。また、目標を達成できた場合は、より高い目標の設定が可能かどうかを検討します。
 これらの検討は、次の「行動計画の作成・見直し」に役立てます。
 
環境保全活動への取組状況の評価と行動計画見直しの流れ
(拡大画面:24KB)
 
3 行動計画の作成・見直し
 現在の環境保全活動への取組状況に関する評価結果や、検討した取組の改善策を踏まえ、今後の目標や目標達成へ向けた具体的な取組内容などを盛り込んだ行動計画を作成(見直し)します。
 
■事業活動の概要
 行動計画は公表することも考えられます。行動計画には、以下の内容を簡潔に記述します。
 
○事業所名および代表者名
○所在地
○環境保全関係の責任者および担当者の連絡先
○事業規模(従業員数、保有自動車台数等)
 
■環境保全活動への取組についての現状把握とその課題
 「グリーン経営推進チェックリスト」によって把握した内容をもとに、現状での課題を記します。
 
■目標の設定
 「グリーン経営推進チェックリスト」の結果をもとに、目標を設定します。設定する目標としては以下のようなものが考えられます。
 
○燃費に関する目標
○エコドライブの実施に関する目標
○低公害車の導入に関する目標
○自動車の点検・整備に関する目標 など
 
■目標達成へ向けた具体的な取組内容
 「グリーン経営推進チェックリスト」の結果を踏まえ、チェックリストにある個々の取組のうち今後重点的に取り組んでいこうと考える事項について、掲げた目標を達成するための具体的な取組内容とそのスケジュールを記述します。
 なお、環境保全活動を進めるには従業員が率先して取り組むことが必要です。そのためには、行動計画の策定に際して、ドライバーなど従業員を参加させたり、従業員に対する環境教育や関連する情報の提供なども、行動計画に盛り込むことが欠かせません。
 
 参考までに、8頁に行動計画の例を示します。
 
4 計画に基づく取組の推進
 計画を策定したら、経営責任者以下、全社挙げて実行に移すことが重要です。
 事業所等の責任者(もしくは環境担当責任者)は責任をもって具体的な取組を進めるとともに、取組の状況は定期的に記録し、チェックリストによる自社の環境保全活動への取組状況の把握に役立てます。
 そのためには、しっかりとした環境保全の仕組みや体制の整備が必要です。執行体制の整備については、チッェクリストの中にも評価項目として取り上げています。
 
(参考) ○○タクシー株式会社 行動計画(例)
 
1. 事業活動の概要
(省略)
2. グリーン経営推進チェックリストによる現状把握とその課題
(1)環境保全のための仕組み・体制の整備
 環境方針および推進体制の整備はともにレベル1を達成したが、従業員に対する環境教育は何もしておらず、それぞれについてレベルアップが必要である。
(2)エコドライブの実施
 燃費等に関する定量的な目標の設定等については、燃費把握はしているものの、目標は立てていない。エコドライブのための実施体制、アイドリングストップの励行、推進手段等の整備は、いずれの項目ともレベル1の段階であり、全体として取組を強化する必要がある。
(3)低公害車の導入
 今のところ、低公害車の導入実績はない。
(4)自動車の点検・整備
 ドライバーや整備員に対する教育や情報提供を行っている(レベル1)。点検・整備の実施は、日常点検・定期点検を法に沿って実施しているほか、ドライバーの報告をもとに随時必要に応じて点検を行っている。
(5)廃車・廃棄物の排出抑制、適正処理およびリサイクル
 廃棄物の処理については、適正な処理のできる事業者に委託し行っている。
(6)空車走行距離の削減および効率的走行の推進
 無線配車は行っているが、とくに顧客の集中等に関する情報をドライバーへ伝える等の取組は行っていない。
3. チェック結果を踏まえた今後の取組方針
(1)燃費削減の観点から「エコドライブの実施」に重点的に取り組む。このため、燃費の改善目標を設定するとともに、エコドライブの取組状況の把握とそれをもとにした個別の指導を進めるなど、レベル3の達成に努める。
(2)「自動車の点検・整備」については、当面、法定点検の確実な実施に努めるが、法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準によって点検・整備を実施することについても検討する。
(3)その他の項目については、当面、現状を維持することとする。なお、従業員への環境教育については、エコドライブや点検・整備に関する教育・指導を通じて、その充実を図る。
4.「エコドライブの実施」に向けた取組
(1)燃費の向上に関する数値目標
 エコドライブを確実に進め、平成××年度までに、現在と比較して5%削減することを目標とする。
(2)目標達成に向けた具体的な取組
(1)ドライバーにエコドライブを実施したかを運転日報に記載させることをルール化し、取組の徹底を図るとともに、取組状況の記録・整理を行う。
(2)エコドライブの取組状況をもとに、ドライバーごとに指導を行う(燃費の悪いドライバーへの注意、燃費の優れたドライバーに対しての表彰)。
(3)車両の走行距離や燃料使用状況、エコドライブの取組状況に関するデータをもとに燃費管理を行い、必要に応じて取組の見直しを行う。
5. その他の取組
(省略)







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