日本財団 図書館


ごあいさつ
 海洋画家・上田毅八郎さんの作品のうち、帆船と近代客船の水彩画を展示いたします。
 氏は日本のボックスアート(箱絵)の草分け的な存在で、模型の箱に精密な船・飛行機・車などの絵を描き、購買力を高めるためにその腕をふるいました。氏は第2次世界大戦で利き腕(ききうで)の右手が不自由となり、その後は不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で絵筆を左手に持ちかえてこれらの作品を生み出しました。船は設計図を見ただけで再現できるほどの想像力と、白波は写真よりもリアルに見えるほどずば抜けた観察力の持ち主といえるでしょう。
 当館では折に触れて上田さんの展覧会を開催してまいりました。今回も作品の持つエネルギーと職人芸の領域を感じとって頂ければと思います。
 
 
上田毅八郎氏 略歴
大正9年、藤枝市に生れる。父は建築塗装業を営む。小さな頃から乗り物が大好きだった氏の夢は、パイロットになることであった。
 
昭和18年、浜松高射砲第1連隊へ入隊。空ではなく海へ、船舶砲兵として船に乗り込む。
 
昭和19年、乗船していたマニラ湾停泊中の「金華丸」が米軍の砲撃を受け、その時飛び散った破片で利き腕である右手に重傷を負い、以後右手が不自由となる。
 
昭和20年11月、復員し、塗装業を営む。
 
昭和21年より、左手で字が書けるように書道塾に通い始める。28歳になっていた。字の練習から、やがて大好きな乗り物の絵を描き始める。
 
昭和42年、静岡市内のプラスチックモデル会社より注文を受けた戦艦「大和」の作品がヒットする。
 
昭和51年、講談社出版「世界の大帆船」で、帆船画家として脚光を浴びる。
 
平成3年7月、フェルケール博物館にて「海洋船舶画家上田毅八郎作品展」を開催。
 
平成4年9月、フェルケール博物館にて、サンタマリア号清水寄港記念として「上田毅八郎帆船画展」を開催。
 
平成14年4月、フェルケール博物館にて、企画展「上田毅八郎さんが描く帆船と近代客船」を開催。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION