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 レシフェ都市圏は14の自治体からなり、沿岸部に位置している。地形は平地で、Capibaribe川とBeberibe川が流れている。地図に示したように、構成する自治体は、レシフェをはじめ、Jaboato dos Guararapes、Olinda、Paulista、Cabo de Santo Agostinho、Camaragibe、So Loureno da Mata、Igarassu、Itapissuma、Itamarac、Araoiaba、Moreno、Abreu e Lima、Ipojucaである。
 
1.2 制度面
 レシフェ都市圏の都市交通システムは、道路システム(SV)、リングシステム(SC)、公共交通乗客システム(STPP)の3つのサブシステムに分かれている。
 
 道路システムは、公共交通車両が利用する路線で構成されている。現行の法律では、都市交通網の整備・維持の管轄は、地方自治体、州、連邦という3つのレベルの政府に属している。道路システムの大半は、レシフェ都市圏に属する道路で構成されている。
 
 国、州および地方自治体の法律は、公共交通乗客システム(STPP)を管理する権限を次のように規定している。
 
市内部の交通は地方自治体の管轄
都市間の交通は州政府の管轄
州間および国際的な交通は連邦政府の管轄
 
1.3 土地利用
 レシフェは、周辺地域における経済の中心地として重要なので、当初より都市構造と交通システムは市の港に向かって形成されてきた。20世紀初頭より、レシフェ(ブラジル、ペルナンブコ州の州都)には、州の地方部や他の州より人口が流入してきた。1950年には、レシフェ都市圏人口の67%が州都レシフェに集中していたが、現在その割合は45.2%になっている。
 
 都市特有の現象は、ブラジルの主な州都ではどこでも見られるが、レシフェも例外ではない。地方部やサトウキビプランテーションにおける危機によって経済問題を抱え、土地を離れざるを得なかった人々をレシフェは受け入れてきた。
 
 レシフェには2本の大きな川が流れ、島、半島、湿地、マングローブ林があるといった地理的特徴が、レシフェの都市開発を促してきた。建物を建てるには、土地を埋め立てる必要があった。海と港の存在が、レシフェを中心のはっきりした都市にした。東側は海であり、中央地域には様々な活動が集中し、交通のある地域には住宅が集中した。中央地域には主に経済活動が集中したため、土地利用にも影響を与えた。中央地域は経済区域となり、多くの人がそこで働くようになった。一方、都市周辺部は明らかに住宅地であるが、自立性は弱く、日常のサービスの提供の少ない、仕事もあまりない土地である。以上の現象の悪影響は、低所得者が住む地域に現れており、また、都市周辺部の主要道路はすべて都市の中心部に向かっている。
 
1.3 経済的特徴
 レシフェ都市圏は、経済・人口構成・空間の面で大きな特徴がなく、州都や近隣主要都市の人々で構成される都市圏雇用市場を形成するに至っている。フォーマルセクターの雇用については、州都と小さな自治体の間でバランスがとれている。州都およびレシフェ都市圏には、商業やサービス業などの業種(第三次産業)の雇用が多く、市の雇用の70%を占めている。
 
Table 01 - Jobs Percentual in the Third Sector - 1996
Areas Service Commerce Public Admiration
Recife 48,57 19,8 5,44
All the RMR 45,94 19,06 5,06
Source: Recife's town hall - 1996
 
 レシフェの集中については、市場はすでにレシフェ市地域と他の地方自治体地域で分かれている。そのため、多くの理由で(第三次産業の力を考慮)移動が必要となったが、その移動はサービスの集中を招いた。したがって市内で発展した輸送サービスの量は、第三次産業が支配的な経済のニーズを考慮し、市場サービスをどれだけ重視するかに関連する。
 
 レシフェ都市圏の構造の主な特徴を踏まえ、市の計画は次のような経過をたどっている。
 
 レシフェの公共交通システムとその都市圏(Sistema de Transporte Publico de Passageiros - STPP/RMR)は、次の2つのシステムから構成される。
 
統合構造システム(Sistema Estrutural Integrado -SEI)
補完システム(Sistema Complementar)
 
 補完システムは、郊外と市の中心や郊外同士を結ぶ2つの普通バス路線からなっている。
 
2. 統合構造システム(Sistema Estrutural Integrado -SEI)
 SEIは、大型の交通機関(列車や路面電車)が利用できる6つの大きな道路と、中規模の車両(バス)が利用できる4つの道路で構成される。統合バス停は、これらの道路が交差する所にあり、新たに料金を支払うことなく乗り換えができる。郊外から統合バス停までのアクセスは、支線道路と主要道路を結ぶ「支線路線」により行なわれている。この路線はバスおよびミニバスが運行される。SEIの利用には、次の3つの理由がある。
 
市の中心部の保護。支線道路は市街地を経由することなく、近隣地区同士を結ぶ。そのため、交通機関の集中が緩和され、分散的なものになり、統合バス停を中心にした移動が奨励される。この観点から、市周辺の移動が促進される。1枚のチケットであらゆる車両や統合バスが利用できるからである。また、経済活動の集中が緩和され、市中心地に行かなくもあらゆる接続ができるので、市中心地に向かう交通は減少する。
 
交通機関の合理的な利用。フェリー線と電気バス線が主要道路に統合し、そこからディーゼルバスが専用線を走る。
 
社会サービス的性格の強化。公共交通を利用することが多い低所得者層が、市内の6つの大型道路沿いに集まることになる。
 
 この考え方は、レシフェおよびレシフェ都市圏の問題に関する利害を共通に持つあらゆる組織の合意を得ていることが特徴的である。政治的利害を問わず、あらゆる職業の人がこの考え方を支持しており、あらゆる年代・地域の知事にも受け入れられている。したがって、提案は維持され、少しずつ実施されてきた。
 
 SEI事業は、駅や主要道路の建設だけで語ることはできない。公共交通システムと連携するあらゆる要素、より人間的なシステムにするあらゆる要素を持っているので、都市計画の別の側面にも関わってくるのである。例を挙げよう。
 
市の美しさや良い面の保存に関する関心、あるいは市をより使いやすいものにすることに対する関心。専用回廊は中央ラインにあり、歩行者のために歩道を確保している。
駅までの歩行経路を人間に優しいものにする。照明、標識、街路樹等を整備し、徒歩を快適で安全なものにすることが目的である。
 
 SEIの一部はすでに実行されているので、その成果を調査・評価することができる。
 
レシフェ中心部のバスの数が減少し、渋滞が緩和された。
到着点と出発点の連絡が良くなり、利用者のモービリティは高まる一方、運賃の無駄が減少した。
あらゆる駅は隔離型であり、警備員も配備されているので、利用者の安全が高まった。
 
 Home Researchが得たあらゆる情報は、標準的移動の把握を可能にするとともに、レシフェ都市圏(STPP/RMR)の計画に対する提案づくりにおける事例としても機能する。移動について、起点と終点、利用者の収入水準、使用する交通機関などがわかるということである。こうした点は、道路や移動の計画を現実可能なものに近づける情報となる。
 
 人々の標準的移動や経済的特徴を1997年に明らかにしたのは、EMTUが開発した帰宅目的地到着研究(Homing and Destiny-Arrival Research)である。この研究は、レシフェ都市圏の流動計画や新都市交通計画の策定の参考になるであろう。そして、これらの計画は、公共交通の新しい基準を明らかにするであろう。







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