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XIII 運輸部門における環境対策
 1997年12月に開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で、先進国の温室効果ガスの排出削減目標を定めた京都議定書が採択され、我が国については、2010年前後に1990年比6%の温室効果ガス排出量を削減する目標が定められた。
 その後、2001年10月にモロッコで開催されたCOP7において、京都議定書の運用ルールについての合意が成立した。
 2000年度の我が国全体の二酸化炭素(CO2)排出量のうち、運輸部門が約2割を占めており、このうち自動車の占める割合は約9割にもなっている。国土交通省では、自動車等のエネルギー消費効率の向上、低公害車の開発・普及促進、公共交通機関の利用促進、物流の効率化等の施策を推進することとしている。
1. 運輸部門におけるCO2の排出の現状
(1)輸送機関別のCO2排出割合
 運輸部門全体のCO2排出量のうち、自動車から排出されるCO2の割合は87.8%に上がっている。また、そのうち、自家用車からの割合は56.4%となっている。
 
我が国の部門別CO2排出量(2000年度)
 
 
運輸部門CO2排出量(2000年度)
 
(2)輸送機関別のエネルギー効率
 旅客部門では、全体の51%の輸送を担っている自家用乗用車が73%のエネルギーを消費している。一方、鉄道は、27%の輸送量に対し、エネルギーは6%しか消費していない。
 単位輸送量当たりのエネルギー効率は、乗車密度、輸送機器の大きさ等により異なるので一概には言えないが、全体をならしてみると自家用乗用車は鉄道の6.4倍、営業用バスの3.4倍のエネルギーを消費していることになる。(図−1参照)
 
図−1
国内主要輸送機関の輸送量とエネルギー消費量の構成(2000年度)
旅客
 
 
貨物
 
 貨物部門では、全体をならしてみると鉄道、内航海運のエネルギー効率がよく、営業用トラック、自家用トラックの順となっている。特に、自家用トラックは単位輸送量当たり、鉄道の23倍、内航海運の21倍、営業用トラックの4倍のエネルギーを消費していることになる。(図−2参照)
 
図−2 主要輸送機関別エネルギー消費単位(2000年度)
旅客
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貨物
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(拡大画面:7KB)
 
2. 自動車等のエネルギー消費効率の向上の推進
 京都議定書の目標を達成するには、運輸部門で4.600万トンのCO2を削減し、その伸びを17%に抑える必要がある。そのため、自動車の燃費の向上により1,390万トン、航空機等の消費原単位の改善により150万トンの削減をめざしている。
 
3. 低公害車の開発・普及促進
 ガソリン自動車・ディーゼル自動車といった従来の車と比べて、排出ガス及び燃費性能が優れた環境負荷の少ない低公害車の開発・普及を促進しており、政策目標として2010年までのできるだけ早い時期に1.000万台(全国)の普及をめざしている。
 九州においては、100万台以上普及させることとし、目標達成時期は、2010年から大幅に前倒しすることとしている。
 このため、2001年度から導入された自動車税の軽減措置である「自動車税制のグリーン化」等の補助制度を活用し、より積極的な単体対策の充実を図る必要がある。
 
低公害車の各県別普及状況(平成14年3月末現在)
(拡大画面:44KB)
(注)
☆☆☆は、低燃費かつ低排出ガス認定車で最新規制値の75%低減車
☆☆は、低燃費かつ低排出ガス認定車で最新規制値の50%低減車
☆は、低燃費かつ低排出ガス認定車で最新規制値の25%低減車
 
4. 公共交通機関の利用促進
 旅客部門においては、CO2排出原単位の大きな自家用乗用車の利用を鉄道やバスなどの公共交通機関にシフトさせていくことが重要である。このため、鉄道やバス等においては、輸送力の増強や都市新バスシステム等の整備を図るとともに、冷房化や居住性の良い車両の導入など、魅力のある輸送機関としての整備を進めている。
 
5. 物流の効率化
 貨物部門においては、物流の効率化を進めることにより、エネルギー効率の良い交通体系を形成する必要がある。このため、モーダルシフトの推進、トラックの積載効率の向上、トレーラ化及び車両の大型化の促進等の施策を進めている。
 
6. 交通需要マネジメント(TDM)の推進
 渋滞の著しい都市圏で安全かつ円滑な交通を確保し、その快適性・利便性の向上、環境負荷の低減を図るため、TDM施策を効果的に講ずる必要がある。
 このため、各機関が行う自動車交通の調整策と一体となって公共交通のサービス水準向上、環境に優しい自動車の導入促進、都市内物流の効率化等を推進している。
 
7. エコドライブの推奨
 自動車の保有台数が7,600万台を超えている現在、駐停車時のアイドリングストップ、高速道路における適正速度での走行、タイヤの空気圧の適正化といった運転時の心がけ一つで燃料使用量の削減、CO2排出量削減につながるため、「エコドライブ10」を推奨している。
 
(エコドライブ10)
(1)無用なアイドリングをやめる。
(2)経済速度で走る。
(3)点検・整備をきちんとし、タイヤの空気圧を適正にする。
(4)急発進、急加速、急ブレーキをやめ、適切な車間距離をとる。
(5)無駄な空ぶかしをやめる。
(6)無駄な荷物は積まない。
(7)マニュアル車は早めにシフトアップする。
(8)渋滞をまねくことから、違法駐車をしない。
(9)エアコンの使用を控えめにする。
(10)マイカーの利用者は、相乗りに努める。また、公共交通機関が利用可能な場合には、できる限り公共交通機関を利用する。







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