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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/17 毎日新聞朝刊
[論点]イラク攻撃、日本はどうする─米国支持を堅持せよ
猪口孝・東大教授
◇武力を背景にした「強制外交」が有効、米孤立化は日本の平和路線転換を招く
 この25年来、世界では次の三つの潮流が同時に強くなっている。
 第一、主権国家の揺らぎである。領域がきれいに区切られ、みんながそれぞれ主権を実現できるという幻想をもてる時代ではなくなった。
 第二、地球的な理念の共和国を掲げる米国の影響力の拡大である。米国は、共有する価値観・規範意識を軸に理念の共和国を地球規模で実現しつつある。そこでは、人権やテロリズム、大量破壊兵器、知的所有権、民主主義などについて理念を共有するものが手を携え、肩を組み合う。
 第三、自由市場、自由貿易が地球的規模で加速度的に実現されていくなかで、破綻(はたん)経済、失敗国家、無法社会が地球的な広がりをもって出現している。地球上の微小な運動や公共空間のすべての行動を探知し、処罰することなしに破綻・失敗・無法を封じ込めなくなる世界である。
 三つの潮流の競争状態を端的に示すのが、紛争解決の態様である。領域主権国家が主流だった時代には、主要国家間の戦争が花形であった。こうした戦争は20世紀の第4四半期に減退し、戦争らしい戦争が起きなくなった。逆に激増しているのが、「戦争でもなく、平和でもない」紛争である。国境を超えた複雑な紛争が多発し、その解決も難しい。常用されるのは「疲労困憊(こんぱい)を待つ」方法である。
 しかし、いま注目すべきは強制外交である。強制外交とは、軍事力による脅しによって一定の行動を取らせ、紛争の解決を進める外交である。戦争と結び付けて考えやすいが、多数の支持を集めながら行う外交の一種である。その目的は人類共通の価値・規範に反するテロの共謀・実行、人権じゅうりん、大量破壊兵器製造などに対処することである。外交が失敗すれば戦争になるのはいうまでもない。
 イラクに対し米国が実行しているのは強制外交である。それは「戦争でもなく、平和でもない」。なぜ武力行使が認められるか。人類に奉ずる規範や価値を尊重する動きを世界的なものにしなければならない。湾岸戦争の休戦は、大量破壊兵器廃棄を前提とするもので、それが尊重されなければ武力行使が再開されることを国連は決議している。
 なぜ米国を支持すべきなのか。イラクは国連決議を無視し、大量破壊兵器を保有する重大な違反を12年間続けている。これを認めれば、同様の行為を世界各地で力づけることになる。平和的解決しか自らは試みることができない日本は、それだからこそ、人類多数の支持を無視した大量破壊兵器の製造・貿易・使用を認めるべきでない。イラクの軍備廃絶に向けた努力を支持すべきである。これを挫折させることは、米国社会に深刻な孤立主義を助長する。孤立主義が深刻になれば、日本は平和路線の転換を余儀なくされる。そうした路線転換に、私は反対する。
 日本は米国支持を堅持すると同時に、これら三つの潮流が人類に多大な害悪をもたらさないよう勇気あるイニシアティブを取るべきである。
◇猪口孝(いのぐち たかし)
1944年生まれ。
東京大学教養学部卒業。米マサチューセッツ工科大学大学院修了。
東京大学助教授を経て、東京大学教授。
 
 
 
 
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