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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/16 読売新聞朝刊
[イラク後の世界](4)国連頼みに限界(連載)
 
 米英軍がバグダッドを制圧した四月九日、ニューヨークの国連本部では、北朝鮮の核問題をめぐる安全保障理事会の非公式協議が開かれた。席上、十五の全理事国が、北朝鮮の核兵器開発に強い懸念を表明した。
 協議後、米国のネグロポンテ国連大使は記者団に厳しい口調で語った。
 「北朝鮮が核開発の野望を捨てるだけではだめだ。(大量破壊兵器の有無を)信頼できる検証の仕組みを受け入れるべきだ。それは(国際機関への)協力と申告、(国際機関による)査察と監視だ」
 ネグロポンテ大使が口にした「協力、申告、査察、監視」の四語は、昨年来、米国がイラクに向けて発してきた言葉と寸分変わらない。
 フセイン政権の崩壊で、大量破壊兵器廃棄を拒み続けたイラクの脅威は取り除かれた。先制攻撃も辞さない米国の新国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)は、無論、東アジアも視野に入れている。次にクローズアップされるのは北朝鮮だ。
 イラク戦争は米国による「予防戦争と独裁体制打破の先例」(日朝関係筋)となった。事態をかたずをのんで注視していた北朝鮮は、フセイン政権のあっけない崩壊を見て米国との直接対話に固執する姿勢を転換し、日本、韓国、中国なども含む多国間協議に応じる構えを見せ始めた。だが、軍事的対応も排除しない厳しい姿勢で臨む方針の米国の前に、体制継続を求める北朝鮮の選択肢は限られる。
 核開発を明確に放棄するのか、それとも米国の軍事的圧力を回避するには、逆に抑止力としての核保有しかないと判断して核兵器開発を急ぐのか――。その動向次第では、ビクター・チャ米ジョージタウン大学教授(朝鮮半島専門家)が警告するように、「イラク後は、北朝鮮が世界の平和と安全にとって、最も危険な存在」となりかねない。
 北朝鮮は、日本列島をすっぽり射程に入れる弾道ミサイル、ノドンも配備済みだ。現に九日の朝鮮中央通信の論評では、「日本もわが方の射程範囲内にあることを明確に意識せよ」と威嚇している。
 北朝鮮に核開発の放棄を促すには、確かに関係国の協調が必要だし、国連安保理が果たす一定の役割もあるだろう。いわゆる「国連中心主義」は、日米同盟、アジア地域重視とともに日本外交の三本柱とされてきた。しかし、実際には日本の外交・安保政策の最も頼りになる基軸が、これまでも日米同盟であったことは紛れもない事実だ。
 今回も、イラクへの武力行使をめぐって米英と仏独露が対立し、国連安保理が機能不全に陥った現実を直視しなければならない。拒否権を持つ常任理事国の中露両国は、かねて北朝鮮と近い関係にある。両国ともぎりぎりの局面になれば、自国の国益を優先すると見るべきで、日本の平和と安全を第一に考慮することはまず期待できない。
 国連安保理に日本の安全保障を託すのは、あまりに危険過ぎる。
◆日米同盟強化こそ国益
 「二十一世紀の国際秩序が形成される歴史に毎日立ち会っているようだ」
 イラク戦争で米軍がバグダッド包囲網を狭めていたころ、小泉首相に近い政府関係者が感慨深げに語った。そして、こう付け加えた。
 「第二次世界大戦終結を機に(国連創設やドイツ分割などの)ヤルタ体制が生まれたように、新国際秩序は戦後処理で出来上がる。イラク戦後復興での発言力の比重は、米国7、英国2、その他1だ」
 米国は、戦闘終結直後のイラク統治を、国防総省主導の復興人道支援庁(ORHA)に担わせる方針だ。そして十五日にはイラクの反フセイン派を集めた会議を開き、イラク人による暫定行政機構(IIA)設立へ向けた準備を本格化させた。
 こうしたイラク復興のプロセスに国連や各国がどう関与するかによって、新たな国際秩序の姿が浮かび上がってくる。
 米国は、IIA発足を米英主導で進め、国連の役割は人道支援などに限定する考えだ。武力行使容認の新たな国連決議に反対した仏独露は、今度は国連中心の暫定統治や復興開発を強く求めている。英国はイラク国民の協力を得やすくするため、国連決議に基づく暫定統治を主張している。
 日本の立場は英国に近い。川口外相は「国連の十分な関与を通じた人道復興支援」などの「イラク復興五原則」を示した。小泉首相も十日の与党三党首会談で、「戦後復興では、金だけでなく、人的貢献もしっかりやっていく」と積極支援の姿勢を鮮明にした。
 しかし、このままでは戦後復興に関する国連決議の内容などをめぐって各国の合意形成に手間取る恐れがある。
 日本では与野党内から、国連決議がなければ、自衛隊を参加させるための「イラク復興支援新法」の制定は難しいとの声が出ている。だが、米英の軍事行動を支持した日本は「有志国の連合」の一員だ。人的貢献は避けて通れない。ある防衛長官経験者は「国連決議がなくとも、復興支援に自衛隊を派遣できるよう、早急に検討しておくべきだ」と強調する。
 日本は、事が起きて自衛隊の活用を迫られるたびに、「国連平和維持活動(PKO)協力法」「テロ対策特別措置法」などを泥縄的に整備し、かろうじて国際的な要請に対応してきた。しかし、今後のイラク復興や北朝鮮問題などを考えた場合、今のままの体制で国際社会の期待に十分に応えていくには無理がある。これらを統括した恒久法の整備を求める声が与党内にあるのも、こうした観点からだ。
 政府が「持っているが、行使できない」としている集団的自衛権の憲法解釈についても、自民党内には「見直すべきだ」との声が強い。自衛隊の円滑な活用の制約となり、日米同盟の効果的運用の大きな障害となっているためだ。
 小泉首相は「日米関係が緊密であればあるほど、よその国との関係もうまくいく」と述べている。米国との強固な同盟関係は、北朝鮮のみならず、中国やロシアなどに対応する上でも日本に有利に働くという率直な実感だろう。
 「米国一極体制」が強まる国際社会の現実を冷静に見据えた時、「米国との同盟をかけがえのないものとして大事にすることが日本の国益にかなう」(日米関係筋)のは、だれの目にも明らかだ。
(政治部・村岡彰敏)
 
 
 
 
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