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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/05/01 朝日新聞朝刊
脚光浴びる新保守主義(ブッシュのアメリカ ネオコンとイラク)
 
 イラク戦争が米英軍の圧勝に終わったことで、戦争の推進役だった米国の新保守主義(ネオコンサーバティブ、略してネオコン)グループが脚光を浴びている。超大国の軍事力を積極的に使い、世界を米国流の民主主義につくりかえようとする潮流である。その前のめりの姿勢は、国内外で摩擦や不安をもたらしつつある。ネオコンの群像を2回にわたり報告する。
(ワシントン=西村陽一、三浦俊章)
 ●「見事な勝利」
 ネオコンの高らかな勝利宣言が聞こえる。
 「米国は世界中のテロを打ち負かし、中東をつくりかえると誓った。アフガニスタンとイラクの戦争は、決定的で見事な勝利に終わった」
 クリストル氏は自ら主宰するウイークリー・スタンダード誌にそう記した。  「米国の力が何を成し遂げることができるか。我々は、それを中東と世界に知らしめるという革命を起こした」
 コラムニストのクラウトハマー氏は、ワシントン中心部にあるアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)での講演で力説した。
 2人はネオコンの代表的な論客だ。スタンダード誌は現政権に大きな影響力を持つネオコンの中心メディアであり、AEIはネオコンの牙城(がじょう)である。
◇「第3の戦い」位置づけ
 ●「単独」唱える
 12年前に湾岸戦争が終わった直後、クラウトハマー氏は、副大統領首席補佐官をしていたクリストル氏に電話をかけた。ブッシュ大統領の父親は、バグダッドを攻略せずに、湾岸戦争の終結を宣言した。「サダムを倒さなかったのは大きな過ちだ」。2人は憤った。
 以来、10年余、ネオコン雌伏の時代が続いた。
 現政権のネオコン人脈の中枢にすわるウォルフォウィッツ国防副長官は、ブッシュ氏の父親の政権の末期、国防次官として新戦略案をまとめた。米国の圧倒的な軍事優位を維持し、イラクなどの大量破壊兵器の脅威には先制攻撃も辞さない、という構想だった。
 クリストル氏は97年、軍事力の増強、世界の民主化と自由化などを掲げるネオコンの拠点「新アメリカの世紀プロジェクト」を旗揚げした。クラウトハマー氏は、「米国一極構造」のもとでの「単独行動主義」の必要性を唱え続けた。
 イラク戦争の理論武装は10年余がかりで準備されたことになる。
 ●強力な擁護者
 宗教的な使命感で新秩序をつくろうとした民主党大統領のウィルソン的な「理想主義」。ソ連を「悪の帝国」と名づけた共和党大統領のレーガン的な剛腕外交。ネオコンは二つの「奇妙な結合」(ケネディ・エール大教授)といわれる。
 現政権の発足直後は、勢力均衡を重んじる伝統派、穏健な国際協調派、国益最重視の強硬なナショナリストなどと並んで保守派に渦巻く潮流のひとつに過ぎなかった。
 01年の同時多発テロが力関係を塗り替えた。国益重視の強硬派に属するチェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官の両巨頭がネオコンの強力な擁護者となったことが大きかった。ネオコンのイラク征伐論は政権内の大きな潮流に膨張し、かねがねイラクを「父親がやり残した仕事」と考えていたブッシュ氏のお墨付きを得た。
 第2次世界大戦はファシズムとの戦い。冷戦は共産主義との戦い。そして、イラク戦争を含む「9・11」後の対テロ戦が続く――。勢いに乗るネオコンは今、こんな世界史の枠組みで、今回の戦争をとらえている。
◇イスラエル、今後のカギ
 ●効果二つ期待
 「シリアでも変化がなければならない」「シリアは行き詰まっている」。4月9日のバグダッド陥落以降のウォルフォウィッツ氏の発言だ。米国はシリアへの軍事行動は考えていない。ブッシュ大統領も穏健派のパウエル国務長官をシリアに派遣する。しかし、国際社会はネオコンの一挙手一投足に敏感にならざるを得ない。
 ネオコンは、イラクが民主化すればシリアやイランなどにも変革が広がるという長期的な「民主化ドミノ効果」を確信している。同時に、米軍の圧勝を前に「ならず者国家」群が委縮し、おのれの振る舞いを改める、という即効性の「戦勝効果」にも期待をかける。
 そんなネオコンに内外の視線は厳しい。クラウトハマー氏が講演した先のAEIではこんなやり取りがあった。
米国人記者   中東の民主化が進めばより反米になるのではないか。
ク氏   民主主義国は互いに戦争をしない。
オーストリア人記者   あなたたちはナイーブすぎる。
ク氏   あなたたちこそ、シニカルすぎる。
 反対されればされるほど、かたくなになる。ネオコンは、自らの世界観に揺るぎない自信を持ち始めているようだ。
 ●全盛期到来か
 ネオコンは全盛期を迎えるのだろうか。
 「ネオコンに力を与えたのがブッシュ大統領なら、その妨げになりうるのも大統領だ。カギはイスラエルにある」。政権の内情に通じた共和党関係者が明かした。
 ブレア英首相は、ネオコンの天敵となったパウエル国務長官とともに、中東和平に本腰を入れるよう大統領に強く働きかけている。米政権内にも、パレスチナ自治政府の改革と、イスラエルの入植活動の中止は並行して進めようという考えがある。ところが、ネオコンにとっては、「アラファト議長放逐」が先決だ。
 ユダヤ系が多いネオコンは、イスラエルのシャロン政権と密接なつながりがある。かつて、ネタニヤフ政権にフセイン追放の提言書を渡したのも、パール国防政策諮問委員やファイス国防次官らのネオコンだった。
 ブッシュ政権がパレスチナ問題にどこまで踏み込めるか。ネオコンの今後の力を占うリトマス試験紙になるだろう。
○米国のネオコン総帥格、リチャード・パール氏に聞く
 米国のネオコン・グループの総帥格とも呼ばれる前国防政策諮問委員長のリチャード・パール氏に、イラク戦争と今後の考え方について聞いた。
 ――イラク戦争をどう総括しますか。
 「正しいやり方で行われ、正しい結果を生んだ戦争だった。高精度の軍事技術を駆使し、イラクの人命被害が最小限になるよう心がけた。ダムや油井を破壊から守り、醜悪な政権を崩壊させた。ただ、まだ始まりだ。まともで安定した、個人の権利を尊重する政府をつくらなければならない」
 ――これから中東に変化が起きますか。
 「イラク新政府をつくり、経済を成長させれば、中東諸国の国民は刺激され、おのれの国にも変化を求めるようになる。イラクが発展すれば、独裁に代わる体制があることの実証となる」
 「中東ではイラン、シリアなどのテロ・大量破壊兵器問題がある。イランでは体制への不満が相当あり、現体制はいずれ自壊する。シリアは、どうすれば自分の利益になるか、よく考えるだろう。すべての解決に2年かかるか、5年かかるか、わからない。一つひとつ片づけていく」
 ――国連はもう用済みですか。
 「国連には力も意志も決意もない。イラク解放の手助けさえできなかった。テロと大量破壊兵器にも無力だった。イラク復興に中心的な役割を果たすべきだという主張は、ばかげている」
 「ただ、国連は死んでいない。国連憲章を改正し、21世紀にふさわしい機構に再編するのは可能だ。テロを支援し、大量破壊兵器をつくる国に介入する権利を持たねばならない。日本はフランスより大国だが、常任理事国ではない。理事国の構成も見直しが必要だ」
 ――日本は常任理事国になるべきだ、と。
 「日本にその備えがあるかどうかわからない。日本はほえない犬だ。だれもがそこにいることを知っているが、国際政治には低姿勢だった」
 ――北朝鮮の核問題はどう解決すべきですか。
 「交渉で説得できるとは思えない。だが、金正日(総書記)は利害得失を計算できる。核開発などを放棄した方が得だという結論にたどり着くよう、彼の思考を改めさせるのが最善の道だ。前の政権は脅迫に屈して見返りを与えた。必要なのは圧力だ」
 「米国の軍事力がいかに効果的に投入されたか、北朝鮮は目撃した。我々はイラク共和国防衛隊を破壊した。同じことは北朝鮮軍にもできる。軍事オプションを排除してはならない。それを除外すれば『そちらが何をしようとも、北朝鮮の体制を危険にさらすことはしない』と言うようなものだ。金正日を安心させることはない」
 
 レーガン政権の国防次官補当時、その対ソ連強硬姿勢に「暗黒の王子」の異名がついた。国防総省が許認可権を持つ企業の顧問だったことを批判され、国防政策諮問委員長職を辞任したが、同委員にはとどまり、政権への発言力を保っている。
 
<新保守主義(ネオコン)>
 80年代のレーガン政権の頃から強まってきた保守主義の潮流。民主党の反共リベラルが源流。(1)単独でも軍事力を行使する(2)世界を善悪二元論的な対立構図でみなし、外交に道義的な明快さを求める(3)国際協調主義に懐疑的――などが特徴。最も先鋭的な先制攻撃論は、ブッシュ・ドクトリンとして国家の安保政策にも採用された。
 現政権には、大統領以下、ネオコンの理解者や同調者は多いが、本来のネオコンは、幹部では、国防総省のウォルフォウィッツ副長官とファイス次官、国務省のボルトン次官、ホワイトハウスのリビー副大統領首席補佐官、エイブラムズ国家安全保障会議上級近東部長ら20人ほど。ただ、政権と密接な関係を持つ元高官や知識人たちにその人脈は広がっている。
 
 【写真説明】
 リチャード・パール氏=鮎川弥生氏撮影
 
 
 
 
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