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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/22 朝日新聞朝刊
無人機台頭、攻撃参加も(検証・大統領の戦争 その戦術)
◆ロボット化 「現実感」喪失の恐れ
 イラク上空、高度2万メートル。戦争開始から毎日、窓のない奇妙な白い機首の米軍機が、交代で24時間連続飛行を続けてきた。米空軍の無人偵察機グローバルホーク=写真、AP。特殊カメラでとらえた情報を、地上の司令官に送るのが任務だ。
 公式には試験段階だが、今回、戦場に駆り出された。製造元ノースロップ・グラマン社の担当者は「作戦開始を命じるクリックだけで、人手もかけず、23時間以上飛び続ける」と自慢する。
 17日付ニューヨーク・タイムズ紙によると、激しい砂嵐で有人偵察機が離着陸できなかった時も、同機は高空から赤外線特殊カメラによる戦略情報を提供した。
 空軍が持つ別の無人機プレデターは、もっと低く飛ぶ。イラク軍前線の細かな動きを探知し、情報を地上部隊に即座に伝え続けた。敵の奇襲を未然に防ぎ、攻撃までの時間も大幅に短縮した。
 海兵隊はシルバーフォックス機を初めて実戦に投入した。前線に携行可能な大型模型飛行機サイズで、敵情偵察の斥候(せっこう)代わりに使える。陸軍も無人機を使い、すっかり米軍の「流行」になった。
 マイヤーズ統合参謀本部議長は16日、「我々が前線で使っている無人機は10種以上に及ぶ」と明らかにした。ブッシュ大統領自ら「無人機が足りない。あらゆる種類が重要になってきた」(01年12月)と述べたほどだ。
 無人機は、単なる「目」にとどまらない、殺傷能力も備えたロボット兵器に変容しつつある。
 先月22日、イラク南部を飛行中のプレデターが、イラク軍の対空砲へミサイルを発射した。搭載カメラの映像を見ながら、イラク国外とみられる非公開の場所に駐留する部隊が遠隔操作した。
 米軍需産業大手は、次世代無人攻撃機の開発を競っている。攻撃能力の向上や高速化、レーダーに捕捉されないステルス能力も見据える。
 ノースロップ・グラマン社は今年2月、空母搭載型無人攻撃機の試験飛行に成功した。担当者は「無人機は、単調(Dull)で汚く(Dirty)、危険な(Dangerous)作戦から、我が軍の要員を解放できる」と売り込む。
 日本でいえば「3K」任務のロボット化だ。だが、技術、資金の豊富な米軍以外で、要員がこうした任務から解放される事態は当面、ありそうもない。
 軍事研究団体グローバル・セキュリティーのジョン・パイク代表は「今世紀半ば、米軍の戦力の大半はロボット兵器になる可能性がある」と予測し、こう警告する。
 「米国は戦争の現実感を失いつつある。ブッシュ政権は無人機を始めとする軍事力の優位に酔い、外交問題の解決に武力をますます安易に使おうとするだろう。だが、圧倒的に強い米国に直面した敵は、テロや大量破壊兵器で対抗する。解決策にはならない」
(ワシントン=梅原季哉)
◆非人道兵器 また使われた集束爆弾
 クラスター(集束)爆弾や対人地雷、劣化ウラン弾が、今回の戦争で、また使われた。いずれも、民間人の命を奪い、健康を損なう非人道的な兵器として、使用禁止を求める声が広がっていた。
 クラスター爆弾は、親爆弾から200以上の子爆弾が散らばり爆発する。バグダッドやバスラなどの大都市でも使われた。米英軍は使用を認め「広範囲に攻撃できる有効な兵器」(米中央軍のソープ報道官)、「自軍の被害を未然に防ぐ合法兵器」(フーン英国防相)と使用の正当性を主張した。
 周辺の民間人を無差別に殺傷する。子爆弾の1割以上が不発弾となるため、「第2の地雷」と呼ばれる。バグダッドで19日、クラスター爆弾とみられる不発弾が爆発。米兵4人と不発弾を届けた子どもが負傷した。英軍は不発率を下げた新型を導入したが、それでも5%は不発だという。
 人権団体ヒューマンライツ・ウオッチは「人口密集地での使用は、事実上、民間人への大量殺戮(さつりく)と等しく、国際法に違反する」と指摘する。この爆弾は、日本の航空自衛隊も配備している。
 劣化ウラン弾は比重が重く、装甲板を打ち抜く貫通性に優れる。米中央軍のブルックス准将が3月26日の記者会見で使用を認め、「人体への影響は、近くで大量に粉塵(ふんじん)を吸入した場合に限られる」と述べた。
 91年の湾岸戦争で米軍が初めて戦車攻撃に使った。その後、帰還兵やイラクの子供に白血病やがんの発病が相次いだ。国連環境計画(UNEP)は昨年3月、残留する劣化ウラン弾の腐食から地下水に汚染が広がる危険性があると警告した。
 一方、イラク軍はクウェート国境や北部の都市キルクーク周辺に多数の対人地雷を敷設した。非政府組織(NGO)の連合体「地雷禁止国際キャンペーン」(ICBL)が非難声明を出した。北部では今月、取材中のフリーカメラマンが地雷を踏んで死亡している。対人地雷禁止条約には、イラク、米ともに署名していない。
(沢村亙)
◆バスラの英軍 市街戦避け住民を懐柔
 イラク南部最大の都市バスラを巡る攻防は2週間に及び、この戦争唯一の本格的な都市攻略戦になった。英軍は、住民の協力を取り付け、市中に潜む民兵をあぶり出そうとした。湾岸戦争の反省や、北アイルランドでの経験を生かした作戦だった。
 バスラ近郊に達すれば住民が決起する、という楽観論が英軍にあった。イスラム教シーア派の多い同市で、市民は長年、フセイン政権に抑圧され、体制に強い反感を抱いてきた。
 だが、市民には、91年の湾岸戦争後、政権打倒に立ち上がりながら国際社会から見放され、政権に激しく弾圧された記憶が根強く残る。不信を和らげようと、英軍はラジオで「今度は、決して見捨てません」と呼びかけた。
 政権派の民兵ら約1千人がバスラに送り込まれた。彼らがゲリラ戦を挑み、市民を威圧していると英軍は見た。この状況で市中へ入れば、待ち伏せ攻撃を受けるだけでなく、市民の巻き添えもありうる。英軍は、時間をかけて体制派を除去する作戦を立てた。
 あえて完全封鎖せず、郊外に検問所を設け、出入りする住民から市内の様子を探った。顔を隠した地元の協力者に頼み、民兵を識別した。
 情報を得て、英軍は3月末から敵の拠点を次々襲撃した。4月5日、化学兵器の責任者とされる大統領のいとこでイラク南部の軍司令官だったアルマジド元国防相の自宅を米英軍が爆撃。同氏は爆撃で死亡したとされる。
 6日朝、市中心部で略奪が始まった。抵抗勢力の弱体化とみて、英軍は市内に入った。翌7日、ほぼ全域を制圧した。
 北アイルランド紛争が激しかった90年代初めごろまで、英軍は市街に紛れる過激派をあぶり出すため、情報提供者の獲得に力を注いだ。得られた情報をもとに、先制攻撃も仕掛けた。カタール前線司令部の英軍報道官は「住民との接し方など、北アイルランドでの経験が生きた」と話した。
(ドーハ=久田貴志子、ロンドン=福田伸生)
◆誤爆 機械と人間、双方に限界
 精密誘導弾などのハイテク兵器が、この戦争では大量に使われた。軍事目標を確実にたたき、民間人被害を防ぐというふれこみだった。それなのに、民間人の巻き添えや「友軍誤爆」と呼ばれる同士打ちが続いた。
 「精密誘導兵器が目標を外す確率は約10%。攻撃数が多い分、失敗も多くなる」と、英国の軍事専門家ロバート・ヒューソン氏は指摘する。
 レーザー誘導弾は、移動する標的もピンポイント爆撃できる。だが、砂嵐、煙幕などの影響を受け、目標を外すこともある。GPS(全地球測位システム)誘導弾は天候に左右されないが、地形や地勢の特性によって、目標位置の計算がずれる可能性は残る。
 攻撃目標の選定にあたって、市民への影響を考慮するのが米軍の建前だ。だが、湾岸戦争で空軍を指揮したグロソン退役大将は今年、「『イラクの民間被害を減らすため、米軍兵士を危険にさらすのもやむを得ない』という論理は、我々の考え方に反する」と話した。
 目標や状況次第で、人命への配慮は二の次になる。米軍は4月7日、フセイン大統領らが会合を開くとの情報に基づき、バグダッドの住宅街に900キロ爆弾4発を落とした。「大統領殺害を優先し、住民の巻き添えも意に介さない攻撃だ」とヒューソン氏はいう。
 イラク北部で今月6日、米特殊部隊とクルド部隊が支援に来た米軍機に爆撃された。18人が死亡した。目標設定ミスが疑われている。アフガン戦争でも、空爆対象の位置の入力ミスで、米兵が直撃を受けた例がある。
 イラク戦争は、湾岸戦争やアフガン戦争よりも空と陸の連携の機会が多い。人的ミスの危険性もそれだけ高い。
 敵味方を自動識別し、友軍誤爆を防ぐシステムは、米軍すら予算不足などのため導入途上だ。
 英軍の死者は21日現在、30人。イラク軍との戦闘による死者9人より、友軍誤爆と友軍同士の事故による死者の方が多い。
(ロンドン=外岡秀俊、ワシントン=梅原季哉)
○「湾岸」から教訓、地雷撤去に工夫
 91年の湾岸戦争で、米軍の地上部隊はイラク軍が砂漠に敷設した地雷原に苦しんだ。その教訓から、米軍は対戦車地雷を誘爆させる特殊な砲弾で進路を切り開き、戦車の前部に鋤(すき)状の地雷除去装置も取り付けた。
 高速道路では、路上に置かれた地雷の周囲にテープを巡らし、離れた場所から引っ張って地雷を路面から除いた。
 イラク軍の敗色が濃くなると、町の住民が地雷の敷設場所や民兵の隠れ家、武器の隠し場所などを米軍部隊に次々に提供した。
 
 
 
 
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