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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/19 朝日新聞朝刊
フセイン体制の終わり イラク(社説)
 
 「彼は死んだと思う」
 ブッシュ米政権のカード大統領首席補佐官が数日前、そう述べた。
 イラク戦争が始まってから、ひと月になる。フセイン大統領が生存しているのか否かは、依然としてわからない。だが、いずれにせよ、政治的には二度と生き返ることはない。カード氏はそういいたかったのだろう。
 これからの占領統治を指揮するフランクス米中央軍司令官もバグダッドに入った。無秩序と混乱のなかで、独裁体制の恐怖から解放された人々の喜びとともに、24年間続いたフセイン時代は歴史となった。
 バグダッド陥落直前に処刑されたとみられる多数の政治犯の遺体が見つかった。フセイン体制下の恐怖政治や人権侵害の実態が今後明らかになっていくだろう。
 フセイン氏は、対イラン戦争と湾岸戦争という二つの大戦争を国民に強いた。少数民族のクルド人を化学兵器を使って虐殺し、湾岸戦争後に蜂起したイスラム教シーア派の国民を弾圧した。
 その結果として12年間にわたって国連の経済制裁下に置かれ、国民の生活は大産油国とは思えないほど苦しかった。
 戦争と圧政ゆえに、多くの国民から忌み嫌われたフセイン政権だが、嫌われれば嫌われるほど強圧的な支配を強めた。
 権力の基盤となったバース党は、もともとアラブ民族主義の理想を掲げた政党だ。しかし、権力闘争の過程で政敵を次々と粛清したフセイン氏の手法は、ソ連のスターリン体制を思わせる。
 こうしたやり方でなければ、多部族、多宗派のイラクをまとめることはできなかったという見方さえ米欧にはある。
 しかし、そんなフセイン氏の独裁体制を一時は支え、軍事大国化させたのが他ならぬ米国だったことを忘れてはならない。
 イラン・イラク戦争では衛星情報を供与し、生物化学兵器の開発にまで協力した。当時、米国が最も恐れていたイランの脅威を抑え込むためだった。
 米国だけではない。フランスは原子炉建設を助けた。イラクの核武装を恐れたイスラエルの空爆で破壊されたが、米国もこれを「先制攻撃」として批判した。
 ロシアはソ連時代に膨大な軍事援助を行った。仏独伊も石油欲しさに新型兵器を次々と売り込んだ。こうしたご都合主義がフセイン政権を増長させてきたのだ。
 戦争という手段に訴えたことは残念だが、イラクを「民主化」させたいという米国の願いそのものは間違ってはいない。
 体制の息の根は止まった。
 しかし、相手は、民主主義の伝統が乏しいうえ、イスラム教と政治との分離を認めないアラブの風土だ。力だけで価値観を押しつけることには限界がある。
 フセイン氏は去ったが、フセイン氏を生んだ土壌は残る。問題は、時間はかかるだろうが、それをどう変えていくかだ。
 
 
 
 
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