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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/08 朝日新聞朝刊
「石油確保」探る日本 イラク戦争の戦況・復興、にらみ
 
 米英軍がイラクの大統領宮殿を占拠し、「戦後」を視野に入れた国際的な動きも急になってきた。石油を中東に頼る日本にとっても、フセイン後の石油確保は大きな課題だ。経済産業省と業界は、戦況と戦後復興の枠組み作りをにらみながら、表に出るタイミングを待つ。過去三十余年にわたって「失敗の連続」(石油業界幹部)だった日本の対イラク経済政策は、新たな局面を迎えている。
 「日本政府が復興事業に積極的にかかわるその先には、石油確保への期待感がある」。経済産業省幹部はこう明かす。政府系の石油資源開発(SK)は昨年7月までバグダッドに社員を派遣し、経済制裁解除をにらんでイラク石油省との関係を保ってきた。
 SKの中東担当者は「イラクは有望な油田が手つかずで残っている。生産の将来性は中東でもナンバーワンだ。石油関係のテクノクラートは優秀で、戦後も力を発揮するだろう」と期待する。
 だが、戦後復興の枠組みがどうなるか、統治機構で誰が主導権を得るかで、石油ビジネスの環境は大きく変わる。
 戦後復興事業と油田開発、石油増産とはコインの裏表だ。戦争の正面に立つ米国は、戦後復興も米英で仕切る意向を示している。
 フセイン政権下で油田開発の権利を得ていたのは、フランス、ロシア、中国など、今回の戦争に賛成しなかった国々の国策企業だ。排除され続けてきた米系の国際石油資本(メジャー)の進出が予想され、国際政治も絡んで仏、ロ、中の既得権は揺れ動く。
 石油公団の石井彰企画調査部長は「戦後の親米政権は経済復興を急ぐ。米系メジャーを招き入れ、油田開発を一気に進めるというシナリオも成り立つ」と見る。
◇安定保証なし
 イラクの戦後復興に向け、日本の影は官民ともに薄い。政府は武力行使をめぐる米英と仏独の溝を橋渡しすることなく、中国のように国連の場で「不動の存在感」を示すこともなかった。
 しかし、米英軍による戦争の早期終結の可能性が強まってきたことから、大手石油会社幹部は「いち早くブッシュ政権を支持した日本の強みも出てくる。日本は単独で動くより米と水面下で取引した方が石油確保に有利になるだろう」と話す。
 日本の石油会社が、豊富な資金と高い技術を持つ米系のメジャーと互角に争うのは容易でない。「米との協調関係を生かし、米メジャーとともに日本が石油の開発利権の一部を獲得する」。経産省幹部も戦争終結をにらみながら、今後の石油戦略をこう描く。
 それでも、不安は残る。日本の対イラク経済戦略は、イラクの度重なる戦争と国際的な経済制裁に大きく揺れ動いてきた。この30年の石油輸入量の乱高下が証左だ=グラフ。
 「フセイン後」に、中東地域の安定が保てるとの保証はない。出光興産は湾岸戦争後、メジャーと組んでイラクの油田開発に参加しようと検討したが、フセイン政権の崩壊を考えて見送ったいきさつがある。
 天坊昭彦社長は「日本政府は米国に追従しているが、イスラム世界が反米色を強めた時、日本も巻き添えになる恐れもある」と懸念する。
◇未回収の債権
 過去のイラク投資で生じた未回収債権の存在も大きい。第1次石油危機後の74年、イラクに10億ドル(当時2千億円相当)を借款供与する見返りに、10年間にわたる原油供給の保証を受ける経済協力関係を結んだ。
 イラクから日本への原油輸出は、第2次石油危機直後の79年と湾岸危機直前の89年には全輸入の6.1%を占めた。多くの日本企業がオイルマネーに群がり、火力発電所や病院など建設事業を次々と受注。しかし、度重なる戦争と国際的な経済制裁で官民合わせて対イラク債権約60億ドルが未回収のままだ。
 大手企業は「イラクが増産に動けば、債権は石油で回収できる」と復興に期待する。ただ、「債権はフセイン政権下のもので、新政権に引き継がれるかどうか」とも気をもむ。債権の存在が、戦後の復興支援、石油開発への食い込みの足かせになりかねない。
◇イラクの復興、G7で協議へ
 イラク戦争が急展開を見せる中、米ワシントンで11、12両日に開かれる主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、戦後の復興支援が話し合われる見通しになった。G7前後に行われる日米財務相会談でも話題になると見られる。
 ただ、イラクの戦後復興の枠組みを巡っては、武力行使をめぐる米英と仏独の亀裂から考え方に違いもある。日本の財務省では、突っ込んだ議論は難しいと見ている。
○新日本石油常務・佐谷信氏「原油調達につなげたい」
 米英軍がバグダッド中心部を占拠したが、原油市況は戦争の早期終結を織り込んでおり、正常な状態だ。基本的には安定するだろう。世界的に冬の需要期が終わって供給は余り、価格も下がる可能性がある。
 イラクが原油生産を再開し、供給過多になるという懸念もあるが、国際協調を崩すような事態は考えにくい。OPEC(石油輸出国機構)を離脱するかどうか、生産枠を守るかどうかが、当面の政治的な綱引きだろう。
 その先には、世界2位の埋蔵量を誇るイラクの石油開発が、復興の名の下に本格化する。これは我々にとって最大の関心事だ。何とか関係し、将来の原油調達につなげたい。ただ、これが日本にとって最も難しい点かも知れない。(談)
 
 
 
 
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