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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/28 朝日新聞朝刊
米新戦略「先制攻撃ためらわず」(12年前に始まった戦争:下)
 
●湾岸戦争終結5カ月後 国防次官草案「54日でイラク制圧」
 91年2月27日、当時のブッシュ米大統領はイラクへの勝利を宣言した。湾岸戦争が地上戦に入ってわずか100時間後だった。米国が率いる多国籍軍は、敗走するイラク部隊に猛攻をかけていた。だがバグダッドには進撃しなかった。米政府内では「クーデターや反乱で、フセイン政権は崩壊する」という楽観論と、「イラクが分裂し、もう一つの脅威であるイランの力が強まる」という警戒心が交錯し、「フセイン後」の構想がなかった。
 だがフセイン政権の息の根を止めなかったことを悔やみ、不満を募らせる人々も政権内にいた。ウォルフォウィッツ国防次官(現副長官)はチェイニー国防長官(現副大統領)の元で冷戦後の国防計画を練っていた。湾岸戦終結の5カ月後に策定を始めた極秘草案が92年3月に明らかになる。
 「米国の軍事的優位を維持しライバル出現は許さない。危機の際、場合によっては単独行動する。大量破壊兵器の脅威には先制攻撃も辞さず」
 イラクについて「90年代半ばまでに制裁は実効性を失い、イラクは軍事力を再強化して再び中東の脅威になる」と予測した。「米軍が集中攻撃し54日間で制圧」というシナリオも添えられていた。
 その年の11月、ブッシュ大統領は再選に失敗。次のクリントン政権は、査察と経済制裁、イラク南北に設定した飛行禁止区域を軸とした「封じ込め」政策をとる。「フセイン討伐」の計画は葬られたように見えた。
 00年の大統領選出馬に意欲を示した息子のブッシュ・テキサス州知事の公邸には、99年春ごろから専門家グループが集まっては、「外交音痴」と呼ばれたブッシュ氏に安全保障政策を延々と説いた。ウォルフォウィッツ氏もその中にいた。
 クリントン時代、同氏の「予言」通り、イラクへの経済制裁は有名無実化し、フセイン大統領は権力基盤を固めていた。「米国に政権打倒の意思はない」とみたフセイン政権は、査察への妨害を強めた。
●02年9月20日 米新戦略「先制攻撃ためらわず」
 ウォルフォウィッツ氏らは、国益と共に同盟国との協調を重んじる伝統的な現実主義とは一線を画し、米国の軍事力パワーで米民主主義を広めて一極支配を目指すことから「新保守主義者」と呼ばれる。ブッシュ氏に「長年、果たせなかった夢」をかけた。キリスト教右派の影響から「善と悪」の世界観が色濃いブッシュ氏も、「世界の悪魔を退治する」シナリオを抵抗なく受け止めた。
 ブッシュ新政権も当初は原油密輸出や武器輸入の阻止など、制裁の徹底を目指した。米ブルッキングス研究所は01年末、「戦争になればイラク兵の死者2千〜4万人、米兵死者は400〜4千人」という試算をまとめた。酒井啓子・アジア経済研究所主任研究員によると、当時のブッシュ政権も同種の試算をまとめたという。繁栄を謳歌(おうか)していた当時の米世論に「これだけの犠牲を受け入れる余地はなかった」と酒井さんは指摘する。
 同年9月9日付のロサンゼルス・タイムズ紙でパウエル国務長官は「フセインはいずれ自壊する。追放が可能か、予見はできない」と語った。
 その2日後、テロリストが乗っ取った旅客機が3千人近い米国民の命を奪った。ニューヨーカー誌は、テロをフセインを追放するための「神のたまものだ」と評した。
 ブッシュ政権は02年9月20日、政権発足から練り上げてきた「米国の国家安全保障戦略」を発表した。その文書にはこうある。
 「米国は、我々と同等かそれ以上の軍事力を築こうとする潜在的な敵を思いとどまらせる軍事力を持つ」「必要とあれば単独行動をためらわず、先制攻撃で自国を守る」
 その言葉づかいは、91年のウォルフォウィッツ草案に酷似していた。
 
<湾岸戦争>   <イラク戦争>
父・ブッシュ元大統領
第41代。89年〜93年1月
<フ>CIA長官
<レ>副大統領
  子・ブッシュ大統領
第43代。01年1月〜
<フ>国防長官 ラムズフェルド氏 現・国防長官
<ブ>一時国防長官候補    
<フ>大統領首席補佐官 チェイニー氏 現・副大統領
<ブ>国防長官    
<レ>国務次官補 ウォルフォウィッツ氏 現・国防副長官
<ブ>国防次官    
<レ>国防次官補 パール氏 現・国防政策諮問委員長
<ブ>統合参謀本部議長 パウエル氏 現・国務長官
 <注><フ>フォード政権(74〜77年)、<レ>レーガン政権(81〜89年)、<ブ>ブッシュ政権(89〜93年)での役職
 
 
 
 
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