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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/18 朝日新聞夕刊
米、説得努力乏しく 対イラクでブッシュ大統領、最後通告演説
 
 【ワシントン=三浦俊章】「団結した世界に対して、抵抗することはできない」。91年の湾岸戦争の開戦を告げるブッシュ元米大統領の演説の一節だ。息子の現大統領が12年後に、今度は国際世論が分裂する中、同じイラクへ事実上の開戦通告を行うとは何という歴史の皮肉だろう。戦争は不可避という米国の説明に納得しない声が世界にあふれている。大統領は17日の演説で、自らの政治生命と米国の威信、国際社会の未来のすべてを、軍事力行使にかけた。(1面参照)
 ブッシュ演説には二つの目的があった。イラクのフセイン大統領への最後通告と、米国民と世界に対する戦争が不可避だという説明だ。最後通告は明快だったが、いま戦争以外にイラクを武装解除する方法はないという説明は、最後まで国際社会を説得できなかった。
 大統領は「常任理事国のいくつかがイラクの武装解除決議に拒否権を使うと明言した」として、「国連安保理が義務を果たさないから我々自らが行うのだ」と述べた。フランスなどのせいで国連が機能しないという責任転嫁である。しかし、査察の継続が武装解除につながるというフランスなどの主張への有効な反論にはなっていない。
 もともと米英が目指したのは、安保理の議決に必要な15票中の9票だった。たとえ拒否権を行使されても、多数を取れば、正当性の理屈は立った。それさえ獲得できなかったのは外交の失敗にほかならない。
 湾岸戦争前の5カ月間、当時のベーカー国務長官は5回にわたって長期の外国訪問にでかけ、計39カ所を回り、周到にイラク包囲網を構築した。一方、昨年9月以来、パウエル現国務長官の外遊は、2月に北朝鮮問題で東アジアを歴訪した以外は、大統領同行を除くと2日間を超えるものはない。あまりにも外交努力が乏しかった。
 大統領が固執したイラク攻撃の根拠は、米国民の脳裏を去らない同時多発テロの記憶だ。「危険は明白である。イラクの助けで入手した化学、生物、核兵器を使って、テロリストは数十万人の市民を殺すことができる」という発言は、イラクを放置すれば、9・11がまた起こるという米国民の恐怖心理に乗っている。だが、テロリストとイラクとを直結させる具体的な証拠はない。
 大量破壊兵器の廃棄が目的だったはずのブッシュ大統領は、国際社会のコンセンサスがないまま、先制攻撃による政権打倒というむき出しの軍事解決に踏み込んだ。
●仏外相「正当化できぬ」
 【パリ=国末憲人】フランスのドビルパン外相は17日、米英が国連決議を経ずにイラクを攻撃しようとしていることを「正当化が全くできないばかりか、周辺地域や世界に重大な結果をもたらす」と厳しく批判した。
 同外相は「国連安保理の大多数の理事国はフランスと同様、イラクの武装解除を査察によって続けるべきだと考えている」と主張。米英などの決議案撤回を「結局、十分な支持を集めることができなかったからだ」と分析しつつ、「国際社会の考えが明白にもかかわらず、米、英、スペインは今日、力に訴えることを決めた。この決定を、フランスは残念に思う」と非難した。
 また、米英側が仏批判を強めていることに対して「フランスは国際社会が一致した行動を取ることができるようずっと努めてきた。イラクへの査察受け入れを求めた国連安保理決議1441の採択はその成果だった」と述べ、米英側が協調を乱していると反論。「国際社会での合法性を主張できる唯一の権威は国連だ。イラク問題でも国連こそが中心的な役割を果たすべきだ」と、米英の単独行動を牽制(けんせい)した。
●査察委、「作業計画」を提出
 【ニューヨーク=福島申二】国連のアナン事務総長は17日の安全保障理事会の非公式会合後、イラクで活動中の大量破壊兵器査察団や人道支援関係者ら国連要員を撤収させることを安保理に通知したが、一方で、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長は同日、今後の査察の「作業計画」を、議長国を通じて安保理に提示した。作業計画には、イラクに対して今後優先的に行うべき大量破壊兵器の武装解除を12項目にわたって示した文書が盛り込まれている。
 査察継続を求めてきたフランス、ドイツ、ロシアの3国は作業報告などを協議する19日の安保理協議を、緊急の「外相級会合」として開催することを要望。3国の外相は出席の方針を固めている。国際協調の枠外でイラク攻撃が確実視される中、平和的な武装解除の可能性を最後まで追求する姿勢を見せている。
●国連職員に退去命じる 国連事務総長
 【ニューヨーク支局】国連のアナン事務総長は17日、イラク国内で活動する国連の査察官と人道支援関係のスタッフ、湾岸戦争以来、同国内の非武装地帯で活動している停戦監視団の要員に、速やかに退去するように命じた。
●米軍受け入れ、国会に再提案 トルコが方針
 【アンカラ=平田篤央】トルコ政府は17日夜、大統領、軍首脳と緊急会議を開き、米軍に基地使用と領内通過を認めるよう早急に国会に再提案する方針を固めた。米に協力しないまま開戦すれば、戦後体制への発言力と、巨額の経済援助を失うことを考慮した。
●対イラク参戦、豪が閣議決定
 【シドニー=大野拓司】オーストラリアのハワード首相は18日午前、対イラク参戦を閣議決定したことを明らかにした。この決定を受けて、豪国防当局は、すでにペルシャ湾岸地域に送り込んでいる特殊部隊など計2千人規模の豪軍兵員に対し、戦闘開始への態勢を整えるよう指示した。
●「化学兵器をイラク準備」 米TV
 【ワシントン=村山知博】米CNNテレビは17日、国防総省当局者の話として、イラク軍が化学兵器を準備している証拠があると伝えた。米軍かイラク市民を標的に使う恐れがあるという。
 CNNによると、イラク軍の精鋭部隊・共和国防衛隊に化学兵器が配備されたとの情報がある。
●米軍24万人態勢 イラク周辺
 【ワシントン=坂尻信義】米国防総省当局者は17日、イラク周辺地域・海域に展開している米軍兵士が約24万人にのぼることを明らかにした。英軍やオーストラリア軍を合わせると、30万人規模の兵力がすでに整っている。地上軍によるイラク侵攻に必要とされる25万人(湾岸戦争時の半数)を大きく上回る。
 米英軍の動向を追っている軍事問題研究所グローバル・セキュリティーやCNNテレビなどによると、米軍が最も多く駐留しているのは、イラクと国境を接するクウェート。陸軍や海兵隊など15万人前後が国境付近に集結している。
 この中には、湾岸戦争やアフガン攻撃で先陣を切る役割を果たしてきた精鋭部隊の米陸軍第101空挺(くうてい)師団も含まれる。同師団は3月初め、イラク国境沿いに駐留キャンプを立ち上げた。
 他国では、サウジアラビアに約1万人、米中央軍が前線司令部を置くカタールに約8千人、第5艦隊司令部があるバーレーンに約5千人など。また、ペルシャ湾の艦船には海軍や海兵隊の約5万人、地中海の2空母戦闘群は約2万人が乗り込んでいる、という。
●米の補正予算、1000億ドル規模か
 【ワシントン=山脇岳志】ブッシュ米大統領は米議会に対し、イラク戦争の戦費や戦後処理にかかる費用をまかなうための補正予算を速やかに成立させるよう求める方針だ。17日、大統領らと面談した議会幹部によると、来週にも具体的な数字が示される見通しだ。
 米メディアによれば、ホワイトハウスが求める補正予算の規模は、1千億ドル(11兆9千億円)に達する可能性がある。野党の民主党は、ブッシュ政権が大型減税案を議会で通しやすくするため、巨額にのぼる戦費の試算を議会に示してこなかったと批判を強めている。政権の意向通りには可決されない可能性もある。
◆米大統領演説(要旨)
 イラク問題は、最後の決断の時を迎えている。10年以上にわたり米と他の諸国は忍耐強く努力を重ねてきた。イラクの武装解除を戦いなくして実現しようとしてきた。イラクは大量破壊兵器をすべて廃棄すると約束した。それが湾岸戦争終結の条件だった。それ以降、国際社会は12年間も外交努力を続け、多くの決議が国連安保理で可決された。武装解除監視のため多くの査察団を送り込んだが報われなかった。安保理決議に従っていない。
 査察団は平和裏に武装解除を進めようとしてきたが繰り返し失敗してきた。間違いなくイラクはまだ大量破壊兵器を隠している。テロリストを支援し、アルカイダの工作員を訓練の対象としてきた。
 危険は明白だ。脅威をうち砕くために、我々はあらゆる手段を講じる。悲劇へと進むのではなく、安全な道へと進む。恐ろしい日が来る前に危険を排除する。米国は自分たちの安全を守るために武力行使をする権限を持っている。
 米国は国連とともにイラクの脅威に立ち向かおうとした。問題を平和裏に解決したかったからだ。我々は国連の任務を信じている。
 私は昨年9月、国連総会で危険を終わらせることを訴えた。同11月に安保理は決議1441を採択し、イラクが全面的に即時に武装解除しなければ、「深刻な結果」を招くと訴えた。
 しかし、今日、イラクが武装解除を行ったとはとうてい言えない。フセイン(大統領)が力を持ち続ける限り、武装解除はできないだろう。
 この間、米国は安保理の枠内で問題の解決を求めてきた。しかし、常任理事国の中には拒否権の行使を表明した国々もある。こうした国の政府は我々と同様、危険の認識を共有しているが、それを排除するための決意を持っていない。安保理はその責任を全うしていない。だから我々がそれを全うするのだ。
 一部の中東諸国は、公式、非公式にフセインに国外退去と平和的な武装解除を求めたが、フセインは拒否してきた。
 フセインとその息子たちはイラクを48時間以内に去らなければならない。これを拒否すれば、軍事行動に踏み切る。軍事行動は我々が選ぶ時期に始まる。ジャーナリストや査察官を含むすべての外国人は、イラクをただちに退去すべきだ。
 多くのイラク国民もラジオで私の演説を聴いていると思う。軍事行動を始めても、国民は標的とならない。同盟国がフセイン政権を排除した後に、我々は食糧と医薬品を提供し、繁栄した新しいイラクをつくるための援助を行う。隣国への戦争、毒物工場もなくなり、独裁者はいなくなる。みなさんの解放の日は近づいている。フセイン政権はまもなく終わるのだ。
 大量破壊兵器排除のための多国籍軍の平和的入国を認めれば、イラク軍は名誉を持って国を守ることもできる。イラク軍と情報機関の人々に言う。瀕死(ひんし)の政権のために戦うな。イラクのすべての軍人、民間人にも聞いて欲しいが、どのような戦争でも自分たちの運命を決めるのは自分たちの行動だ。イラク国民の富の源である油田を破壊するな。大量破壊兵器を使うという命令に従うな。我々は戦争犯罪を裁く。
 フセインやテロ組織が米国民にテロを企てる可能性もある。イラクの情報機関と関係ある者を国外退去させた。敵が我々の本土を狙って士気を落とそうとするだろうが、彼らは失敗するだろう。我々は平和を愛する国民だが、殺人者の脅しには屈しない。我々に攻撃を仕掛けた者とそれを支援した者には重大な結果が訪れる。
 我々は行動を起こす。起こさないことのリスクの方が大きいからだ。我々は脅威に今、立ち向かう。
 悪意のある人間が生物・化学兵器や核による脅しをたくらんでいる今世紀には、宥和(ゆうわ)政策はかつてない災いをもたらすだろう。世界の安全のためには、フセインにいますぐ武装解除に踏み切らせるしかない。
 イラク国民は自由を持つ権利がある。独裁者がいなくなれば、中東に平和な国をつくる先例を示すことができる。米国は中東の自由と平和のために全力を尽くす。自由を持てば暴力を乗り越えられる。今夜、同盟国とともにこの責任を担う。
(ワシントン=アメリカ総局)
 
 【写真説明】
 対イラク攻撃が迫り、イラク北部のクルド人自治区ドホークで17日、家財道具を車に積んで北のトルコ国境へ向けて避難するクルド人家族=ロイター
 
 
 
 
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