日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/11/09 朝日新聞朝刊
イラク、また瀬戸際外交か 国連安保理が査察決議採択
 
 【アンマン=川上泰徳】大量破壊兵器の査察強化に関する新しい安保理決議に対し、イラクは受け入れを示唆し始めた。決議は米英の武力行使に枠をはめているというのがイラクの主張だ。米国を挑発しつつ、国連や友好国の仲介を引き出すという、政権生き残りのための瀬戸際外交を始める構えを見せている。(1面参照)
 「受け入れ」へのイラクの態度の変化は、新決議の採決が避けられない情勢になった今週初めから始まった。4日にサダム・フセイン大統領は国営通信に「新たな決議が国連憲章と国際法、イラクの主権と安全保障、独立を尊重し、米国の武力行使の隠れ蓑(みの)でないならば、我々は受け入れを考慮する」と語った。
 武器査察では、10月に国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)に無条件受け入れを表明しており、「新たな決議は必要ない」としてきたが、その修正だった。
 イラクはこれまでも米国に挑戦的な態度をとりつつ、国連との協調姿勢を示す両面作戦を繰り返してきた。
 97年11月には国連査察団から米国人排除を主張して査察を拒否し、武力行使寸前までいったが、ロシアの仲介で査察を受け入れた。
 98年2月の危機でも、アナン国連事務総長がバグダッドを訪問し、フセイン大統領との直接会談で、大統領宮殿を含む査察実施で合意し、米国の武力行使の口実をつぶした。
 湾岸戦争以来、米国による最大の武力行使となった98年12月は、クリントン大統領の不倫疑惑の最中だった。「疑惑隠し」との批判も強く、武力行使の正当性に疑問符が付けられた。攻撃実施で国連査察の継続は不可能となった。
 今回、バース党機関紙「アッサウラ」は7日に、「相手(米国)と違って、我々は安保理決議の無視や違反はしない」と強調した。新決議の建前を逆手にとって、武力行使にはやる米英を牽制(けんせい)する手段だ。
 イラクは今後、査察受け入れの姿勢を示しつつも、「主権尊重」などの条件を付けて、米英の反発を引き出しつつ、武力行使に反対する仏ロ中との溝を広げようとする危うい綱渡りに出ると見られる。アラブの民衆の反米感情をあおり、アラブの指導者に圧力をかける狙いもある。
 米英の武力行使が避けられない場合も、武力行使の正当性をそぐことで、国連やロシアや仏が仲介に出る余地をつくり、政権の生き残りを図るという腹だろう。新たな決議の採択は、フセイン政権の新たな瀬戸際外交の始まりを意味する。
○仏「米牽制に一定の成果」
 【パリ=大野博人】フランスにとって「イラク問題」とは「米国問題」にほかならなかった。国連安保理決議で、牽制(けんせい)しようとしたのはフセイン政権ではなく米ブッシュ政権だったといえる。単独行動や先制攻撃に傾斜しかねない米国の行動を、なんとか国際法秩序の枠組み内に押しとどめるためだ。その点で、今回の決着には一定の成果があったという見方が仏国内では主流だ。
 8日付ルモンド紙は社説で「この争いは国際社会にとって基本的な原則の尊重にかかわるものだった」と指摘、「その中でフランスは自らの役割を担った」と評価した。
 原則とは国際法秩序を指す。ブッシュ政権が当初もくろんだような、対イラク武力行使をほぼ自動的に許す決議の採択は、国連という国際社会の協議の場の軽視につながる。「争点は単なるイラク問題をはるかに超えていた。中東の安定や石油、さらには21世紀の国連の役割と米国の地位がかかっていた」。有力週刊誌ヌーベル・オプセルバトゥールは交渉に当たった外交官のそんな証言を紹介している。
 仏政府は、一国支配の姿勢を強める一方の米国が国連に対して優位に立つ前例を作りたくなかった。すでに9月はじめ、シラク大統領はブッシュ政権の「先制攻撃戦略」を「きわめて危険」と牽制している。
 しかし、米国に反対するだけでは「イラク寄りの国」というレッテルを張られる。そこで打ち出したのが国連決議の「2段階方式」だ。フランスが反対しているのは「対イラク戦争」ではなく「国連抜きの戦争」というイメージを作ることに成功した。安保理常任理事国として、米国の国連軽視が自らの発言力低下につながるとの懸念も背景にあった。
○ロシア、権益追いつつ妥協
【モスクワ=喜田尚】「まだ不安が残る。だが、大きく改善したのも事実だ」。対イラク新決議の採択に向けた最終段階でロシアが示した反応は矛盾したものだった。イラク攻撃に傾斜する米国を止める力がないのは明らかだが、「イラク問題」には現実的な利益が絡む。一定の妥協は成立したが、ロシアは今後も協調と権益の二つを追うことになる。
 プーチン政権は対米協調路線の中でイラクに対する制裁解除を求める姿勢ばかりが目立った従来の路線の変更を迫られ、イラクに査察の受け入れを迫ってきた。このため、9月にイラクが無条件査察受け入れを表明した直後は「新たな決議は必要ない」との立場をとらざるを得ず、孤立の危機にさらされた。
 その後、「安保理理事国の多くが望むなら」(プーチン大統領)とフランスの「2段階方式」を軸とする新決議案採択に同調し、フランスの主張に乗った。仏ロの協調で米国の譲歩を引き出し、最後は何とか「自動的に武力行使に移る決議は認められない」と主張してきたメンツを維持した。
 ロシアがイラク問題で妥協、協調をはからざるを得ない理由の一つにはチェチェン問題もある。最大の懸案への国際的な理解を求めたいロシアにとって、イラク問題で孤立するわけには行かない。
 しかし、米国によるイラク攻撃になれば、フセイン政権が認めている自国石油会社の油田開発権など大きな経済権益がゆらぐ。対米協調路線の前にイラク問題が立ちはだかる状況には何の変化もない。
○対イラクと北朝鮮は別 米大統領が強調
 【ワシントン=坂尻信義】ブッシュ米大統領は7日の記者会見で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発問題に、対イラク戦略とは一線を画す考えを強調した。
 9日に東京で予定されている日米韓3国の高官協議、監督・調整グループ会合を前に、米国が日韓中ロなどとの協調を重視する姿勢を確認した。
 ブッシュ大統領は会見で、「それぞれ脅威には違った対応が必要だ」と北朝鮮とイラクへの対応に差をつけると述べる一方、江沢民・中国国家主席が先の米中首脳会談で唱えた「朝鮮半島の非核化」という言葉を「興味深い」と紹介し、「平和な国々の一員に迎えられたいなら、ウラン濃縮はすべきでない」と北朝鮮に核開発計画を放棄するよう求めた。
◇第2の決議、言及なし 新決議、三つのポイント
【ニューヨーク=福島申二】国連安保理の対イラク新決議は、これまでにない厳しい内容だ。
 ◆査察方法 イラク国内に8カ所ある大統領関連施設への査察に対し、イラク側は国家の主権や尊厳にかかわるとして抵抗してきた。新決議は大統領施設への無条件、無制限の自由な出入りを要求している。さらに、科学者や官僚、その家族を国外へ連れ出してでも、自由に事情聴取できることを求めている。
 ◆武力行使の表現 「重大な違反」と、武力行使の意味を含む「深刻な結果」がキーワード。「重大な違反」は湾岸戦争の恒久停戦を定めた「安保理決議687」(91年4月)などへの違反を指す。停戦決議への違反によって停戦は無効となり、湾岸戦争での武力行使を容認した「安保理決議678」(90年11月)にさかのぼって、すぐにでも攻撃の根拠が与えられるという解釈が可能になる。だが新決議では、「さらなる重大な違反」があっても直接「深刻な結果」につながるとはせず、表現を弱めた。
 ◆第2の決議 新決議はフランスが提案していた「2段階決議方式」にかなり近い。第1段階でイラクに期限を設けて査察受け入れを求め、拒否や不履行があった場合には第2段階として武力行使を容認するという、二つの決議を安保理で採択する案。だが、新決議には、拒否や不履行が報告された場合に安保理を招集するくだりはあるものの、第2の決議を必要とするとの文言はない。協議さえ開けば決議なしでも攻撃に踏み切れるのかどうか、米英があえて、その解釈の余地を残したとされる。
 
 【写真説明】
 イスラム教のラマダン(断食月)が始まっているイラクの首都バグダッドで8日、モスクの前で祈る市民たち=ロイター
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
47位
(28,694成果物中)

成果物アクセス数
178,950

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年4月22日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【憲法改正について】
10.私はこう考える【教育問題について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から