日本財団 図書館


(b)水深データの照射覆域
 照射覆域の大きさは、縦1.5度×横1.5度の大きさで決まる。水深10mにおける入射補角に対する海底面でのビームの照射覆域の変化を図36に示す。照射覆域は入射補角が40度付近から大きくなる。水深値計測は、直下のビームに比べて探査幅の端のビーム(入射補角が大きくなる)ほど、代表する面積が大きくなるために、端のビームほどエラーデータを含んだ場合に、誤差成分への関与が高くなり、結果として精度劣化となる。
 
図36. 入射補角と照射覆域の関係
(水深10m、音速1500m/sの場合)
 
(拡大画面:18KB)
図37. 斜距離の違いによる照射覆域の大きさ(水深10m)
 
 図37は、水深10mにおける直下ビームと外側ビームの照射覆域を表したものである。ロールの測定誤差や屈折補正による誤差よりも、各ビームの照射覆域の方が大きく、特に入射補角が40度を超える外側ビームほど、代表する面積が大きくなる。
 
(c)目標値の評価
 図38に示すように、直下ビームと外側ビームの照射覆域は、本研究の水平距離の目標値(送受波器直下13cm、外側ビーム110cm)を著しく上回っている。特に外側ビームにおいては、レンジ方向(航跡に直交する方向)で約4倍となる。
 
図38. 水深の照射覆域と目標値(水深10m)
 
2.3.2 海底面画像データの位置精度の評価
 海底面画像データの海底面上での位置は、直下水深値及びサンプリング間隔に依存する。海底面画像データのサンプリング間隔に対する海底面画像データの位置精度及び探査幅の検証について以下を実施した。
(1)直下水深値及びサンプリング間隔に対する位置精度の評価
(a)動揺データの精度による水平距離誤差
 海底面画像データの水平距離の誤差は、水深データと同様に測位、動揺センサーの精度、潮高補正、喫水補正から生じる。ここで水深データは、各ビームの受信時において、ロールの影響を受け、その水深値及び直下からの水平距離に影響を与えるが、海底面画像データは、原理的には発信時及び受信時において、ロールの変動があっても、送受信ビームの指向性内において、発信時からの時間順にデータ収録を開始するため、その位置精度はロールの影響を受けない。これはデータの収録中に、ロールの変動があっても同じである。したがって、動揺センサーの精度による水平距離の誤差は、発信時におけるピッチによるものが大きいと考えられる。POS/MVのピッチの測定精度は0.02度(±30度)であり、水深10mの平坦な海底面で仮定すると、外側ビームの水平距離の誤差は±5.2cmとなる。
 ヒーブによる誤差は、音波の送受信時のヒーブ差が大きいほど、斜距離補正時における水平位置誤差を生じる。斜距離補正の特性上、探査幅の外側よりも送受波器直下における誤差が大きくなり、例えば水深10m、送受信時のヒーブ差を5cmとすると、送受波器直下の水平位置で、約1.0mの誤差となる。
 
(b)斜距離補正後の海底面画像データ間の水平距離
 海底面画像データは、発信時からデータ収録を開始するため、最初の海底面からのエコーが戻ってくるまでの「海水層」のデータが含まれている。海水層のデータは、図39に示すような斜距離補正により、海底面画像データを水平方向へ並び替えを行うことによって、取り除くことができる。
 
図39. 海底面画像データの斜距離補正
 
 斜距離補正には、図中の斜距離補正ポイントを算出し、補正を行う。斜距離補正ポイントの算出には、最小水深値(最短斜距離)を用いる。
 斜距離補正後の航跡に直交する方向の海底面画像データ間の距離は、斜距離補正に使用する高度値の測深精度及び海底面画像データのサンプリング間隔に依存する。水深10mと20mにおける斜距離補正後の海底面画像データ間の水平距離の変化を図40及び図41に示す。図40は名古屋港での実験を例に、サンプリング間隔を1/15000秒、図41は、扇島南東沖を例に1/6184秒とした。海水層に含まれるデータ数は、直下水深とデータ収録における1秒間のサンプル数に比例して大きくなる。また直下付近における各サンプル間の距離が大きくなることから、斜距離補正時における誤差は、探査幅の外側よりも送受波器直下付近の方が大きくなる。
 
図40. 海底面画像データの各サンプル間の距離
(水深10m、サンプリング間隔1/15000秒、データ数500個の場合)
 
図41. 海底面画像データの各サンプル間の距離
(水深20m、サンプリング間隔1/6184秒、データ数1024個の場合)
 
(c)各ビーム内(1.5度)に含まれる海底面画像データ数
 名古屋港及び扇島南東沖実験のデータを例に、各ビームの照射覆域に含まれる斜距離補正後の海底面画像データ数を算出する。各海底面画像データの斜距離から入射補角を計算してデータ数を算出した。図42(a)は水深約8m、(b)は水深約20mの例である。
 
(a)水深約8m
 
(b)水深約20m
図42. 各ビーム内に含まれる海底面画像データ数(片側のみ)
 
 名古屋港実験のようにレンジ幅を25mに設定した場合は、サンプリング間隔が1/15000[秒]、海底面画像データ数が500個となり、海底面画像データの探査幅が水深データの探査幅よりも狭くなるため、外側ビームに含まれる海底面画像データが無くなる。これに対して扇島南東沖実験では、海底面画像データを含むビーム数が50本を超えていることから、水深の探査幅よりも海底面画像データの探査幅が広くなっている。
 (a)、(b)共に、送受波器直下近傍から外側ビームにかけて、各ビームの照射覆域が増加するため海底面画像データ数が増加する。外側ビームでは多くの海底面画像データが含まれるが、水深値が1個しか計測できないために、隣り合うビームで計測された水深値から補間する必要がある。一方、送受波器直下近傍では、ビーム内に含まれる画像データが無い場合もある。そこで画像処理では、あらかじめ設定したグリッドサイズで、メッシュデータを作成し、図43に示すように、送受波器直下から航跡に直交する距離方向に、各海底面画像データを並べる際に、メッシュ内に海底面画像データが無い場合は、それよりも外側の海底面画像データ値を内側へ並べることにより、連続した画像を作成する。内側へ並べる長さは、海底面画像データの航跡に直交する方向の長さと同じであるため、この範囲内の地形歪み除去は画像データからでは判別することができない。
 
(拡大画面:12KB)
図43. 画像処理におけるデータの配置







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION