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第2章 研究の内容
2.1 海底起伏あるいは傾斜によって生じる地形歪みの検証及び補正方法の確立
2.1.1 地形歪み起因
 SeaBat8101で収録される海底面画像データは、海底面から戻ってくる音波が斜距離となるために、送受波器に近いものから順番にデータ収録される。また船上におけるデータ収録及び再生装置として使用されているHYPACK MAXソフトウェアは、データ収録された順番に画像表示を行う。海底面が起伏に富む場合、収録されている海底面画像データは、必ずしも送受波器直下から順番に戻ってこないため、現状のハードウェア及びソフトウェアを使用した画像作成において、送受波器の動揺による幾何学的補正だけで作成した画像は、地形歪みを含む画像となる。この現象は曳航式サイドスキャンソナーも同様であるが、マルチビーム音響測深機によって得られた海底面画像データの受信方法が、時間で制御されているため、航跡に直交するライン上において、斜距離の違いによる海底面画像データの移動が生じるためである。
 
(1)地形歪みの種類
 SeaBat8101やサイドスキャンソナーの海底面画像データには、図1に示したような地形の起伏による地形歪みが含まれている。
 
(a) フォアショートニング
(b) レイオーバ
(c) シャドウィング
図1. 海底面画像データに含まれる地形歪みの種類
 
(a)フォアショートニング(foreshortening)
 送受波器側の斜面で、地形の高い地点までの距離(斜距離)が縮んで観測されることにより、斜面が縮んで表現される画像の歪みをさす。
(b)レイオーバ(layover)
 俯角の大きい近距離にある送受波器側の斜面が急である場合において、水平投影面上ではより遠方にある地形の高い地点からの散乱波が、より手前(送受波器側)に位置する地形の低い地点からの散乱波よりも時間的に先に戻ってくることから、画像上での位置関係が逆転する歪みをさす。
(c)シャドウイング(shadowing)
 送受波器側と反対の斜面の情報が得られない現象をさす。情報が得られない部分をシャドウという。
 
(2)実データに見られる地形歪み
 実際の海底は、図2に示すような複雑な地形変化に伴い、複数の種類の地形歪みが音響画像に含まれている。地形歪み補正後の座標は、斜距離補正座標(2)からF離れた座標(1)にデータを配置する。
 
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図2. 地形歪みと仮想海底面、実海底面との位置関係
 
2.1.2 研究手法と期待される成果
 本研究は、解析精度を把握するため、既知のターゲットを海底面に設置してデータ収集を行うことにより、地形歪み除去手法及び画像処理法の確立、SeaBat8101の取得精度の評価並びに得られた地形歪み除去画像の評価を行う。
 平成14年度は、データの収集及び取得データの評価を行うことにより、設定した目標値が達成可能か検証を行い、送受波器の動揺及び送受信ビームの拡がりを考慮した画像処理プログラムの試作を行う。
 
(1)地形歪み補正の手法
 地形歪み補正の概念図を図3に示す。
 
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図3. 地形歪み補正の概念図
 
 海底からの最初の音波が受信される時間から求まる最短斜距離位置(図中PpH)は、傾斜海底面に垂直となる位置であり、地形歪みは、この位置を送受波器の直下位置として仮定した仮想海底面上に斜距離補正を行う時に生じる。これらの海底面画像データの地形歪みによる移動変位は、上図に示す計算式によって理論的には成立する。
 本研究では、地形図とサイドスキャン画像を同時に作成可能で、かつ両者の位置精度が同一であるマルチビーム音響測深機の収録データを用いて、地形歪みの除去方法を検討する。マルチビーム音響測深機は、地形図とサイドスキャン画像の位置精度が同一であることから、他のシステムのデータを用いた地形歪み補正処理に比べて、位置精度の高い画像が作成できる可能性がある。
 本研究の流れを図4とする。既知のターゲットを用いたデータ収集を行い、SeaBat8101の収録データから海底面画像データを抽出、データ一次処理において各種補正を実施し、最終的に水深データと組み合わせることによって地形歪み除去を行う。本年度の計画を斜線で示す。
 
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図4. 本研究の流れ







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