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グループSST指導者の役割と指導のポイント
 グループにはメンバーにとって、プラスに働く力と同時にマイナスに働く力があります。職員はグループの持つプラスの力を最大限に、マイナスの力を最小限にするよう努力します。そのためのポイントを以下にあげました。
 
1)グループが始まるまでに、寮生の健康状態、寮生がSSTに対して持っている気持ちやグループ内で予測される行動などについて情報を集め、対応を考えておきます。
 この作業をソーシャルワークでは「波長あわせ」または予備的共感と呼んでいます。
 
2)その日のSSTのやり方について、職員間で打合せます。よく話し合って、その日の手順や各職員の役割、必要な器材、教材などの準備をしながら、自分の気持ちも整えます。
 
3)寮生とよい関係を保ち、どの人にも公平に接し、SSTの参加を促します。
 
4)参加しにきてくれた寮生を歓迎し、一緒に部屋の用意をします。
 
5)「SSTグループは互いに助け合うために作っているので、他の人のよいところをたくさん見つけてほしい」と伝えます。「もし、プライバシーに関わることが話しにでてきたときは、このグループのなかだけにとどめてほしい」と秘密保持の原則を伝えます。ストレスにならぬように「自分が話したいことだけ話していい」と言いましょう。
 
6)リーダー自身がいつも「よいコミュニケーションのモデル」として行動するよう心がけましょう。とくにグループのなかでは明るい表情、大きな声に気を付けましょう。
 
7)SSTグループの目的を参加者全員が理解していることを確かめます。SSTは必ず役に立つので、一緒にやろうという職員の熱意を伝えます。
 
8)グループの雰囲気が暖かくなり、寮生がリラックスするように、適切なウォーミングアップの活動を選び、楽しく進めます。
 
9)寮生が練習問題を決めることができるように、必要な情報を提供し、練習に動機づけます。本人が希望する課題が本当にその寮生にとって適切であるかどうかを、関連する情報をもらいながら一緒に考えていきます。
 
10)練習課題が出ないときには、職員から本人にとって適切な練習課題を提案し、その理由も説明して、本人の参加意欲を助け、同意が得られたら練習します。
 
11)抽象的な練習課題、長期目標とも言える練習課題が述べられたら、それを取り組みやすい部分に分ける(細分化)ことを助け、練習の結果、身につくと期待されるスキル(獲得目標)をはっきりさせます。
 
12)練習を希望する寮生を支持し、他のメンバーの共感や協力を引き出します。
 
13)職員は発言中の寮生に注意を払うと同時に、他の寮生がどう反応しているかにも注意を向けます。グループ全体の雰囲気がまとまらない感じ、他の人がしらけて全体のエネルギーが下がっている感じは職員にとっての注意サインです。
 
14)練習の場面に入り、ロールプレイをする時は、練習する寮生自身が相手役を選ぶようにします。
 
15)練習のよかったところを伝えることを正のフィードバックといいます。見ている人が正のフィードバックをするときは、寮生の発言が直接練習した人に向けてなされるように奨励します。職員が不用意に媒介したり、本人に代わって発言しないように注意します。
 
16)グループ過程にメンバーが最大限に参加し、メンバー間に最大限の相互作用があるように働きかけます。まだ、発言していない人はいないか、注意をむけます。
 
17)グループ全体の意識が「いま、ここで」どんな感情とどんな問題に集中しているかに敏感になり、SSTの練習を一時、中断してでも、取り上げる必要があると思われる動きがでてきた場合には、柔軟にグループを運営し、SST以外の方法も用います。
 
18)練習が型にはまり、活動がマンネリ化しないように、楽しい創造的な展開を工夫します。
 
19)寮生一人ひとりから、SSTの練習をしてどうだったか、グループに参加してどんな意味があったと思うかなど、会合以外の場所でもフィードバックをもらい、改善に努力しましょう。
 
20)SSTグループのあとでは、職員間で短時間でも必ずふりかえりをします。
 
21)SSTグループと各寮生に関して、必要な記録を残しておきます。
 
22)定期的にSSTのグループ運営をふりかえり、指導の適切性や施設全体の処遇プログラムとの整合性についてふりかえります。
 
23)他の職員、保護観察官、施設役員等、関係者にSSTの現状を伝え、助言と協力をもらいます。
 
 グループSSTを複数の職員で行なう時、その日の指導を主となって進める人をリーダー、そのリーダーを一心同体で、影になり日向になって進行を助ける人をコリーダーといいます。
 サブリーダーでなく、共同リーダーの意味をもつ「コリーダーco-leader」という言葉が使われているのは、リーダーもコリーダーも平等で上下関係はなく、互いにカバーし合って、協力していく職員同士と位置付けられているからです。
 一人でリーダーをせざるを得ない職場にいる人には残念ですが、実際、コリーダーがいると非常に心強いものです。コリーダーの責任と特にカバーして働いてもらう役割をあげておきます。
 
コリーダーの役割
1)一人ひとりが集まってくる様子を注意深くみていて、ふりかえりのときにリーダーに情報を提供します。
2)SSTの最中におきる参加者同士の相互作用に注意を払って、リーダーが気が付かない時に、自分から動いて必要な介入をします。たとえば、緊張のあまり、発言できない人の隣りに座って、気分をほぐすような言葉かけをするなど。
3)グループのなかで、寮生の発言に拍手したり、練習に対して、正のフィードバックをしたり、積極的に発言します。
4)ロールプレイのとき、お手本となる行動(モデリング)をとる役を引き受けます。
5)必要に応じて黒板(白板)にポイントを書き、寮生にわかりやすくするだけでなく、リーダーの時間が有効に使われるように助けます。
6)リーダーが途中で迷ったとき、行き詰まったとき、不適切な行動を取ったりしたときにカバーします。
7)個人やグループの記録をつける係になるときもあります。







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