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付録1 (6・4)式の証明
 
附図1 経路差(R2−R1)の説明図
 
附図1より、R12=(Hs−He)2+R2、R22=(Hs+He)2+R2が得られる。
こゝで、R>>(Hs+He)>(Hs−He)であるから、
R1≒R+{(Hs−He)2/(2×R)}及び
R2≒R+{(Hs+He)2/(2×R)}と置くことができるので、
経路差R2−R1は次のようになる。
R2−R1≒{(Hs+He)2−(Hs−He)2}/(2×R)≒2×Hs×He/R
従って、位相差βは次の式で与えられる。
β=(R2−R1)×2×π/λ≒(4×π×Hs×He)/(λ×R)
こゝで、Er=ρ×E0×e-jα
 ただし、α=φ+βであり、ρは海面での反射係数、φは反射点での位相移動、βは経路の差による位相差である。
これより、Et=E0+Er=E0+ρ×E0×e−jαが与えられる。
こゝで、Et=F×E0と表すとすれば、
F=Et/E0=|1+ρ×e−jα|=1+ρ2+2×ρ×cosα
であり、海面において完全反射するとすれば、ρ≒1であって
F=2+2×cosαとなる。
またφ=180°=πであるとすれば、F=2+2×cos(π+β)となり、三角関数の公式からF=2×sin(β/2)を得る。
これに上のβの値を入れると、
F=2×sin{2×π×Hs×He/(λ×R)}となる。
これは電圧の比であるから、電力の比はこの2乗であって、
F2=4×sin2{(2×π×Hs×He/(λ×R)}を得る。
これが(6・4)式に入っているのである。
 
付録2 (6・6)式のAs及びAeの証明
第6・6図より、{Re+(Hs−As)}2=Re2+R12であって、
Re2+2×(Hs−As)×Re+(Hs−As)2=Re2+R12となる。
Reは地球の電波的等価半径であって、6371229.3m×4/3で与えられ、
(Hs−As)2はこれに比べて非常に小さいので無視すれば、
Re2+2×(Hs−As)×Re=Re2+R12となる。
これを整理して2×(Hs−As)×Re=R12を得る。
一方R1≒R×{Hs/(Hs+He)}、R2≒R×{He/(Hs+He)}であったから、
これを代入すれば、
2×(Hs−As)×Re=R2×{Hs/(Hs+He)}2となり、
As=Hs−(R2×Hs2)/{2×Re×(Hs+He)2}を得る。
同様にして、
Ae=He−(R2×He2)/{2×Re×(Hs+He)2}が得られるのである。
 
6・3・2 レーダーの最小探知距離
 レーダーの最小探知距離とは、PPI画面の上で自船からの距離を測定し得る最小の距離のことで、(1)自船レーダーのパルス幅(パルスの長さ)、(2)PPI用ブラウン管の最小輝点、(3)アンテナの垂直方向指向性(特にアンテナが高い位置に取り付けられた場合)等で決まることになる。また、海が荒れているときは海面反射が強くなり、その雑音のために小物標からの反射が隠されて最小探知距離が遠くなることに注意しなければならない。
(1)自船レーダーのパルス幅(パルスの長さ)
 パルス幅とは、発信パルスが続く時間のことであるが、アンテナからパルス状の電波が発信されると、発信が続いている時間すなわちパルス幅に相当する長さの電波が空中を伝搬して行くことになる。例えばパルス幅が0.25(=1/4)μsであれば、3×108(m/s)×0.25(μs)=75(m)の長さの電波が飛んで行くことになる。そのレーダーの波長が3cmであれば、この電波が空中を飛んで行くようすは、一両の長さが3cmの車両を連結して、先頭から後尾までの長さが75mあるという列車が空中を飛んで行くようであるのでパルス・トレーン(pulse train)といっている。アンテナの下には自船の船体があり、その船体から75mの半分すなわち37.5mの距離以内にある物標からの反射波は、自船の船体からの反射波とつながってしまうから識別できないことになる。このように最小探知距離の大部分は、パルス幅の時間に電波が空中で占める長さの半分の距離で決まる。
(2)PPI用ブラウン管の最小輝点
 PPI用ブラウン管の最小輝点は無限に小さくすることは不可能で、一定の大きさを持っているから、画面半径を何海里の表示範囲(レンジという。)とするかによって、その輝点が占める距離が決まる。表6・2は、ブラウン管の直径が.7吋及び12吋についての輝点の大きさと種々のレンジに対する輝点が占める距離を示す表である。
 
表6・2 ブラウン管の直径による種々のレンジに対する輝点が占める距離の表
ブラウン
管直径吋
有効半径(mm)
1スイープの長さ
輝点
(mm)
各レンジに対する輝点が占める距離(m)
1海里 2海里 4海里 8海里 20海里
7吋 76.2 0.5 12 24 48 96 240
12吋 127 0.9 13 26 52 104 260
 
 表6・2で分かるように、パルス幅0.25μsのレーダーでは、レンジが4海里以上になると、最小探知距離は輝点によって決まるようになる。
(3)アンテナの垂直方向
 指向性(特にアンテナが高い位置に取り付けられた場合)図6・9にアンテナの垂直方向指向性によって最小探知距離が決まるようすを示す。
 
(拡大画面:24KB)
図6・9 垂直方向指向性による最小探知距離







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