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2・3・4 無負荷特性の測定
(1)発電機の無負荷飽和特性
 発電機の巻線が設計どおりになっているかどうかを検討するため、界磁電流に対する誘起電圧の関係を調べる。
(a)発電機法
 発電機を無負荷とし、駆動機で一定速度で運転し、界磁電流に対する誘起電圧を測定する。これを図2・18図に示し無負荷飽和特性曲線という。なお鉄心はヒステリシス特性を持っているので、界磁電流の可変は上昇方向のときは上昇方向のみ、降下方向のときは降下方向のみで行うこと。誘起電圧は回転速度に比例するので、多少異なるときは補正することができる。
 
図2・18 発電機法による無負荷飽和曲線
 
(b)電動機法
 発電機を駆動機で運転できない場合は発電機を電動機として単独運転し、回転速度を定格値に保ち、各端子電圧に対する界磁電流の値を測定すると図2・19のような無負荷飽和曲線が得られる。
 なお無負荷入力電流による抵抗電圧降下、電機子反作用による減磁分を厳密には差し引きかねばならないが、一般には非常に小さく省略することができる。
 
図2・19 電動機法による無負荷飽和曲線
 
(2)電動機の無負荷特性
 電動機を無負荷で単独運転し、定格電圧に保ちながら界磁電流に対する回転速度を測定すると図2・20が得られる。回転速度は、無負荷ではほぼ端子電圧に比例し、界磁磁束に反比例する。
 
図2・20 界磁電流
―速度曲線
 
2・3・5 効率算定
 効率には実測効率又は諸損失を求めその値を使った規約効率がある。ここでは一般に使われる規約効率の算定法を述べる。
(1)規約効率の算定式
 次によって求める。
 
(拡大画面:7KB)
 
 ここに、
η;規約効率 P1;出力(W)
eb;ブラシ電圧降下
W″C;負荷を考慮した総鉄損(W)
Wm;機械損(W)
WCO;電機子回路抵抗損 Ia2Ra(W)
WS;漂遊負荷損(W)
WB;ブラシ電気損 2ebIa(W)
WF;界磁損 Ia2Ra(W)
If;電機子電流(A)
Ra;電機子巻線抵抗(直巻、補極、補償巻線抵抗を含む)(Ω)
If;界磁電流(A)
Rf;界磁巻線抵抗(Ω)
(2)規約効率に含まれる諸損失
(a)固定損
(i)無負荷鉄損、(ii)機械損(軸受摩擦損、ブラシ摩擦損、風損)
(b)直接負荷鉄損
(i)電機子巻線中の抵抗損、(ii)ブラシ電気損、(iii)直巻・補極及び補償巻線中の抵抗損、(iv)負荷により増減する鉄損
(c)励磁損
(i)分巻巻線の抵抗損、(ii)他励磁巻線の抵抗損、(iii)その他の界磁巻線の直接負荷損に含まれない抵抗損
(d)漂遊負荷損
(i)鉄中の漂遊負荷損、(ii)導体の漂遊負荷損、(iii)整流作用により増加したブラシ損
(e)その他主機と一体をなしている部分で分離測定困難なもの。
(f)次の諸損失は設備全体の損失には含めるが、主機自身の損失には含めない。
(i)伝達装置(ベルト・歯車など)の損失
(ii)励磁装置の損失、ただし、主機から分離困難な直結励磁機の風損・軸受摩擦損及び鉄損は主機の損失に含める。
(iii)界磁調整器の損失
(iv)付属補助機器の損失
(v)直結はずみ車などの損失
 そのほか、損失の帰属について疑問がある場合はあらかじめ協定する。
(3)各損失の算定
(a)W0;無負荷損(W)の測定
 機械を無負荷で運転して損失を測定し、異常がないことを確かめる。損失は効率の算定に使う。
(i)発電機法による測定
 発電機又は電動機を損失の分かっている他の駆動機で一定速度に運転し、被測定機の端子電圧を定格値の125%から零まで駆動機の入力とともに測定する。各電圧における損失を端子電圧に対してプロットすれば図2・21が得られる。
 被測定機の損失は次の式による。
W0=WT−(WM+WL)=WC+Wm (W)・・・(2・20)
ここに W0;被測定機の無負荷損(W)
WT;任意の電圧での駆動機入力(W)
WM;駆動機の無負荷損(W)
WL;駆動機の負荷損(W)
WC;無負荷鉄損(W)
Wm;機械損(W)
 
図2・21 無負荷損曲線
 
(ii)電動機法による測定
 駆動機のない場合は、電動機として無負荷で回転速度一定とし界磁電流を調整しながら、任意の端子電圧に対する電動機入力を測定し図2・19と同様な曲線を得る。
 無負荷損は次の式による。
W0=ELI−(I2Ra+2I)(W)・・・(2・21)
 ここにEL;端子電圧(V)、I;入力電流(A)、
2I;ブラシ損失(W)、Ra;電機子巻線抵抗(直巻、補極、補償巻線抵抗を含む)(Ω)
(b)W″C;負荷を考慮した総鉄損(W)
 図2・21から次によって求める。
発電機の場合 (端子電圧+内部電圧降下)に対する無負荷損曲線上の鉄損
電動機の場合 (端子電圧−内部電圧降下)に対する無負荷損曲線上の鉄損
(c)Wm;機械損(W)
 図2・21から求める。
(d)WCO;電機子回路抵抗損(W)、I2a・Ra(W)
 Ia(電機子電流)は自励発電機の場合は(IL+If)(負荷電流+界磁電流)、自励電動機の場合は(IL−If)(負荷電流−界磁電流)となる。Ra(電機子巻線抵抗)は直巻・補極・補償巻線抵抗を含み、基準巻線温度に換算した値とする。
 
絶縁の耐熱クラス 基準巻線温度
A、E、B 75℃
F、H 115℃
 
(e)WB;ブラシ電気損(W)、2ebIa
 ebは次の値による
 炭素ブラシ eb=1.0V(各ブラシ)
 金属黒鉛ブラシ eb=0.3V(各ブラシ)
(f)WS;漂遊負荷損(W)
 測定困難なため次の値が使われる。
補償巻線なし直流機では基準出力の1%
補償巻線付の直流機では基準出力の0.5%
 基準出力とは、一定速度のとき、最大定格電流、最高定格電圧における出力とする。
 電圧による速度制御のとき、最大定格電流と、損失を求めようとする回転速度におけるその端子電圧とを組合わせた場合の軸出力をとる。
 界磁制御の電動機のとき、定格電圧と、最大定格電流とを組み合わせた場合の軸出力をとり、最低速度における場合は上記の値とし、他の速度の場合は表2・10の係数を乗じたものとする。
 
表2・10 漂遊負荷損速度係数
速度比 係数
1.5:1 1.4
2:1 1.7
3:1 2.5
4:1 3.2
備考 (1) 速度比とは損失を算定しようとする回転速度と規定速度との比である。
  (2) 本表以外の速度比に対する係数は、補間法により求めるものとする。
 
(g)WF;界磁損 I2fRf (W)
 ここにIf;界磁電流(A)
Rf;界磁巻線抵抗(基準温度に換算した値)(Ω)







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