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(2)温度試験方法の種類
 交流発電機の温度試験方法として次の種類がある。
(a)実負荷法
(i)水抵抗による場合
(ii)金属抵抗による場合
(iii)系列並列による場合
(iv)他の電気機器に負荷する場合
(b)零力率法
(c)等価温度試験法
 次にこれらの方法の概要を説明する。
(a)実負荷法
 電源設備の許す範囲内で、小中容量機では実負荷により温度試験を行うことができる。水抵抗による場合は図2・12のような接続とし、力率の調整はリアクトル又は同期機を力率調整用電動機(CM)として使用する。必要とする無効電力は次の式により算定することができる。
 
 
 ここに、
PN;必要とする無効電力(kVar)
P;発電器定格出力(kVA)
COSθ;発電機定格力率
(電流×同期インピーダンス)=(発電機電圧)なる条件が必要であるのでCMの同期インピーダンスがあまり大きいと、無効電力は取りにくい。
 
図2・12 実負荷試験回路例
 
(b)零力率法
 同期機を無負荷で発電機として運転し、定格周波数で殆ど零力率の電流を流し温度上昇を推定する方法である。同期調相機ではそのまま適用し得るが、同期発電機又は同期電動機の場合は、界磁電流の不足から定格出力に対するkVAが得られない場合がある。従って下記のいずれかの方法で温度を推定する。
(i)定格出力に対するkVAに近い値が得られるように、できるだけ大きい界磁電流で試験を行い、その結果を下記要領で補正すれば、定格状態の温度上昇が算出できる。
(イ)まず、定格電圧無負荷(電機子電流が最小の状態)で温度試験を行い、各部の温度上昇を測定する。
 電機子巻線;t0
 電機子鉄心;tCO
(ロ)零力率試験を行い、各部の温度上昇を測定する。
 電圧v′、電流I′の時の巻線;t′
 電圧v′、電流I′の時の鉄心;t′c
 界磁電流I1′の時の界磁巻線;t1
(ハ)定格電圧をV、定格電流をI、定格界磁電流をIfとすると、定格状態の温度上昇は(イ)(ロ)の温度を使用し次のように求めることができる。
 
(拡大画面:12KB)
 
 上記の試験電圧V′及び試験電流I′は、できるだけ定格値に近い値であることが必要であるので90%以上が望ましい。
(ii)電機子電流及び界磁電流が、定格値になるような電圧V′で、零力率試験を行い、この時の電機子巻線の温度上昇t′、電機子鉄心の温度上昇tC′、界磁巻線の温度上昇tfを求める。その結果を下記要領で補正すれば、定格状態の温度上昇が算出できる。
(イ)定格電圧Vの時の鉄損と、前記試験電圧V′の時の鉄損との差に等しい鉄損を生じるような電圧にて、無負荷(電機子電流が最小な状態)で温度試験を行い、電機子巻線の温度上昇t0、電機子鉄心の温度上昇tCOを求める。
(ロ)定格状態に補正した温度上昇は、
電機子巻線:t=t′+t0
電子機鉄心;tC=tC′+tCO
磁界巻線;tf
(iii)電機子電圧及び界磁電流が、定格値になるような電流I′で零力率試験を行い、この時の電機子巻線の温度上昇t′、電機子鉄心の温度上昇tC′、界磁巻線の温度上昇tfを求める。その結果を下記要領で補正すれば、定格状態の温度上昇が算出される。
(イ)端子を短絡しておき、定格周波数で定格電流Iの2乗とI′の2乗の差の平方根に等しい電流を流した状態にて、無負荷の温度試験を行い、電機子巻線の温度上昇t0、電機子鉄心の温度上昇tCOを求める。
(ロ)定格状態に補正した温度上昇は、
電機子巻線;t=t′+t0
電子機鉄心;tC=tC′+tCO
界磁巻線;t1
(c)等価温度試験による温度推定法
 実負荷法又は零力率法によらないで、温度上昇を推定する方法で、鉄損温度上昇試験及び抵抗温度上昇試験により行う。
(i)鉄損温度上昇試験
 発電機を定格電圧で無負荷運転を行い、各部の温度上昇を求める。この時の上昇値を下記の値とする。
電機子巻線;t0
電機子鉄心;tCO
界磁巻線;tf′(界磁電流If′)
(ii)抵抗損温度上昇試験
 発電機の端子で三相短絡を行い、定格電流を流し、定格速度で運転し各部の温度を測定する。
 この時の温度上昇値を下記の値とする。
電機子巻線;t′
電機子鉄心;tC
界磁巻線;tf″(界磁電流I″f
(iii)(i)、(ii)の温度上昇値を得ると、全負荷時の温度上昇は次のように推定する。
電機子巻線;t0+t′
電機子鉄心;tCO+tC
界磁巻線;tf′×(If/If′)2
 ただし風損による温度上昇値が無視できない場合は、上記の和による温度上昇から、風損による温度上昇を引き、界磁巻線に対しては、測定値から風損による温度上昇を引いたものを、電流の2乗で補正し、その値に風損による温度上昇を加えればよい。なお上記で算出した界磁巻線の温度上昇値は、磁極表面損の影響で、一般に高く算出される。このため界磁巻線の温度上昇値をさらに正確に求めるには、次のようにするとよい。
 定格電圧のほかに、定格電圧の20〜30%高い電圧(全負荷界磁電流に相当する、無負荷誘起電圧近くの値)で鉄損温度試験を行い、次の式で全負荷時の界磁巻線温度上昇値t3を算出する。
 
(拡大画面:4KB)
 
 ここに、
t1、t′1;界磁電流i1、i′1による鉄損温度試験時の界磁巻線の温度上昇
W1、W1′;界磁電流i1、i′1による鉄損
t2;短絡時の界磁電流i2による温度上昇







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