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5・3 電力
5・3・1 水の仕事と電気の仕事
 
図5・11
 
 図5・11(a)と(b〉とは、(a)は水の仕事、(b)は電気の仕事を図解したものである。
 いま、図5・11(a)について述べれば水圧があって、コックを開けば水が流れ、水車を回わし、水車は仕事をする。その仕事の量は、水圧の大きさと、水の多少によって決まる。電気の場合は、スイッチを閉じれば図5・11(b)のように電源の電圧V〔V〕の大小と流れる電流I〔A〕の大小によって電熱器上のやかんの湯が早く沸くか遅く沸くか、即ち仕事の大小が決まる。以上述べた事柄から電力を考えよう。
5・3・2 電力
 電気工学では電力とは1秒間にする電気的仕事量である。
 電力の単位にはワット〔単位記号W〕を用いる。この意味は1〔V〕の電圧で1〔A〕の電流を単位時間1〔秒間〕流したときの電力に等しい。これは次のように表される。
 電力の記号をPとすれば
P=V・I〔W〕・・・(5・5)
 図5・11(b)においてオームの法則によりI=V/Rとおけるから
 (5・5)式はP=V2/R〔W〕・・・(5・6)
 また、同様にV=IRであるから
 (5・5)式から
P=I2R〔W〕・・・(5・7)
となる。上記3式は電力の計算式である。
 電力の単位〔W〕は小さいので103〔W〕=〔kW〕(キロワット)が多く用いられる。
〔例題〕(1)20〔Ω〕の抵抗に10〔A〕の電流が流れているときの電力は何〔kW〕か。
〔解〕(5・7)式からP=102×20=2000〔W〕=2〔kW〕
〔例題〕(2)ある抵抗に100〔V〕の直流電圧を加えたら、20〔A〕の電流が流れた。
 このときの電力は何〔kW〕か。
〔解〕(5・5)式から P=100×20=2000〔W〕=2〔kW〕
 
5・4 ジュール熱、ジュールの法則
 図5・11(b)において、電熱器の抵抗R〔Ω〕のところに電流I〔A〕を流せば、そこに熱が発生することはよく知られている。導体間を移動する自由電子が周囲の原子に衝突して原子の振動がはげしくなるために発生する熱であると考えられる。これを電流の熱作用という。
 この発生する熱量は、その回路の電気抵抗R〔Ω〕と、流れる電流I〔A〕及び流れる時間t〔s〕に関係する。このような熱をジュール熱といい、ジュールの単位を用い単位記号〔J〕が使用される。
 よって、t秒〔s〕間に発生する熱量は次式で表される、
H=RI2t〔J〕・・・(5・8)
 この(5・8)式をジュールの法則という。
 この法則は1843年イギリスのジュールが発見したものである。
 なお、従来は熱量Hにはカロリー〔単位記号cal〕が単位として使用されていたが、国際単位系(略称SI単位)を基本にした新計量法により、平成11年10月1日からは、カロリーの代りにジュール〔単位記号J〕を使用することになった。従って、今後の熱量計算では、(5・8)式を熱の仕事当量J:4.186〔J/cal〕で除さないことになる。
 
5・5 電力量
 電力Pがある時間の間に仕事をする量を電力量という。電力量の単位にはワット秒〔単位記号Ws〕又はキロワット時〔単位記号kWh〕が使われる。すなわち、ワット秒〔Ws〕はI〔W〕の電力を1秒間使用したときの電気エネルギーであって、1ジュール〔J〕に相当する。
 1キロワット時〔kWh〕は1〔kW〕の電力を1時間〔h〕使用したときの電気エネルギーであって、1〔Ws〕と1〔kWh〕との間には次の関係がある。
 1〔kWh〕=3600×103=3.6×106〔Ws〕=3.6×106〔J〕・・・(5・9)
 電力が時間的に一定であれば、
電力量=電力P×時間t・・・(5・10)
 通常はキロワット時〔kWh〕が多く用いられる。
〔例題〕500〔W〕の電力を消費する電熱器を10時間連続して使用したときの使用電力量は何〔kWh〕か。また、この電熱器の1時間の発生熱量は何キロジュールか。
〔解〕電力量 Pt=0.5×10=5〔kWh〕
熱量 H=500×3600=1800000〔J〕
ここで 1000J=1kJ(キロジュール)であるから
H=1800〔kJ〕







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