日本財団 図書館


(2)外部電源法
 外部電源法は、図8.8に示すように、船内に自動制御付電源装置を設置し、船体外板に不溶性電極と照合電極を取付け、不溶性電極から直流の防食電流を船体外板に流し、外板の電位を照合電極で検知して、常に防食状態を維持できるように自動制御装置により防食電流をコントロールする方法である。
 この外部電源法は、電源装置の容量、インバータ電源を使用した場合の高周波ノイズ対策、電極の種別、形状、配置、更に配線、配管などの複雑な技術及び工事が要求されるので、防食の専門家に相談すること。
 
図8.8 外部電源防食装置
 
8.5.2 FRP船の電気防食
(1)防食の対象
 FRPは合成樹脂であるので防食対象とならないが、次の構造物は金属であるので、防食対象となる。なお、ステンレス鋼のプロペラ軸に生ずる局部的な腐食については、8.5.2(2)で述べる。
(1)プロペラ(銅合金)
(2)プロペラ点検孔(銅合金)
(3)プロペラ軸(ステンレス鋼(SUS))
(4)軸受(鋼)
(5)舵(鋼)
(2)防食方法
 防食方法は流電陽極法を採用し、防食対象金属を船内で電線を用いて接続する。
(a)陽極の取付方法
 FRP船の船体に陽極を取付ける際には、水漏れのないよう十分注意する必要がある。陽極の取付け法としては、FRP船体に穴をあけボルトを通し、その間隙をシール剤で充填する方法と、陽極取付台を用いて、FRP船体とボルトの間隙をシール剤で充填して取付ける方法とがある。
 
(拡大画面:54KB)
図8.9 FRP船の陽極取付例
 
(b)陽極と防食対象の接続
 FRP船の外板に取付けられた陽極と防食対象金属とを船内で図8.10のように電線を用いて接続する。なお、船内のビルジのかかる箇所や船底においては、SUS製のワイヤーを使用する。
 プロペラとプロペラ軸は陽極と電気的に接続させる方法については、8.5.1(1)(c)と同様であるが、図8.7の船体への接地の代りに、図8.10のように配線する。
 舵軸・軸受・プロペラ点検孔への配線の接続は、7.3.3の機器の接地工事による。なお、高速船で陽極をトランサムに取付ける場合があるが、航走中は陽極が露出して防食効果は発揮されないが、停泊中は陽極が没水するので防食される。
 
図8.10 FRP船の防食配線
 
(c)ステンレス鋼製プロペラ軸の腐食
 ステンレス鋼製のプロペラ軸に局部的な腐食が生じることがある。ステンレス鋼の耐食性は、鋼材表面に形成される酸化被膜(不動態被膜)により維持されている。この被膜は、海水中の塩化イオンによって破壊されたり(孔食)、付着物や軸受材とプロペラ軸の極くわずかな隙間に生ずる溶存酸素の濃度差による一種の酸素濃淡電池作用により局部的に破壊されたりすると、その部分が陽極となり、不動態被膜の陰極との間の電位差によって局部的な腐食が進行する。
 防食対策としての留意点は、次のとおりである。
(1)ステンレス鋼の表面に異物が付着しないように常に注意する。
(2)ステンレス鋼の表面と他の物質との接触面に極めて薄い隙間を作らないようにする。
(3)亜鉛陽極やアルミニウム陽極で電気防食すること。
 
8.5.3 アルミ船の電気防食
 アルミ船を防食する場合は、船体のアルミ合金よりも卑な亜鉛やアルミニウムを陽極とした流電陽極法が一般に採用されている。しかし、アルミニウム陽極を過剰に取付け過ぎると、船体電位(陰極電位)が卑になり過ぎ、船体の腐食量が増すため、アルミニウム陽極を過剰に取付けず、陽極電位の若干貴(プラス)な亜鉛陽極を適正な数量を取付ける必要がある。
 なお、アルミ船の場合、外部電源防食法は、電極周囲の電位が局部的にかなり卑になるため、採用しないほうが良い。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION