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3・4・3 蒸気タービン及びボイラ
(1)蒸気タービン(Steam turbine)
 ボイラで作った水蒸気がもっている熱エネルギーを、蒸気の膨張によって大きい流速にして、運動エネルギーとし、その運動エネルギーを、噴き出し口即ちノズルと回転羽根車とによって機械的仕事に変える熱機関である。
 蒸気タービンの起源は、遠く紀元前120年頃、ギリシャのヘロンが案出した一種の反動タービンである。これは、かまで蒸気を作り、金属球を支える両側の柱から、球に蒸気を送り金属球の上下に曲った管から蒸気を噴出させると、その反動で球が垂直面内で回転するという原理である。
 その後いくつかの方式のタービンが考案されたが、1884年にイギリスのパーソンスが蒸気の圧力を数段に分ける、いわゆる多段階衝動タービンを製作し、発電機に直結できる回転数(2000〜3000rpm)のものができるようになった。ここで初めて実用化されるようになった。
 以下、多く使用されているパーソンスタービンについて説明する。
 
図3・7 パーソンスタービンの略図
 
図3・8 パーソンスタービン羽根の略図
 
 パーソンスタービンは反動タービン又は不等圧タービンといわれている。これは、図3・7にみるとおり固定された案内羽根と回転羽根とがあって、蒸気がこれらの羽根を通過するときに圧力が減圧されるからである。図3・8は案内羽根と回転羽根の形を示し、蒸気の通過する道を示した簡略図である。
 蒸気の効率を良くするために、大容量のタービンになれば、タービンの羽根を装置した車室が1車室でなく、次のような組合せの車室が設けられる。高圧蒸気から中圧、低圧蒸気にと、順次、減圧される蒸気を有効にとらえる装置が現用されている。次にタンデム形の一例を示す。
 
図3・9 タンデムタービン形図
 
(2)復水器(Condenser)
 蒸気タービンの熱効率を良くするために、図3・9のに示すとおり用いるもので、器内を真空に近く保ちタービンからの排出蒸気を容器内に導き、冷却すれば、蒸気は凝結する。このようにすれば数段階の羽根を経て低圧になった蒸気をさらに膨張させることができる。全体として熱の落差が増加し、熱エネルギーを有効に使用することができる。この目的のために用いるので蒸気タービンには必ず付属されている。
(3)調速機
 3・4・2(6)に述べたとおりである。
(4)ボイラ(Boiler)
 蒸気タービン等に送る水蒸気を発生させるため、多量の水を入れ、これを加熱するための器をボイラという。船舶の推進機関に使用するボイラを主ボイラ、その他の目的例えば補機、加熱、暖房等に使用するボイラを補助ボイラ(又はドンキーボイラ)という。使用燃料はC重油だきが殆んどである。また、ディーゼル機関の排気ガスを有効に使用する排気ボイラ(廃熱ボイラ)等がある。一般に使用されているボイラの種類は次のとおりである。
(a)丸ボイラ型の炉筒煙管ボイラ
 直径2〜5メートル程度の横置円筒胴の中に蒸発伝熱面をもったボイラである。
 
図3・10 船舶用炉筒煙管ボイラ
 
 図3・10は一例で、Aは炉筒、Bは燃焼室、Dは煙管、Cは蒸気ドームである。
普通蒸気圧 18〜20kg/cm2
発熱量 10T/h 内外である。
 ボイラ効率は石炭だきが65〜75%、油だきで75〜80%である。
注:ボイラ効率とは蒸気に吸収された熱量と供給燃料の燃焼熱量との比をいう。
(b)水管ボイラ
 蒸気胴と水胴又は管寄せとの間を連結する多数の水管をもって、蒸発伝熱面をつくっているボイラである。
 これには横形、縦形などがあるが、図3・11は簡単な横形水管式ボイラの一例を示す。
 水管式ボイラの特徴は、
(1)軽量小型である。
(2)保有水量が少ないので早く汽じょうできる。
(3)高圧高温に耐える(61kg/cm2・515℃)
(4)缶水循環が明確であるから蒸発量が多い。
(5)ボイラ効率70〜90%
 等であり、高出力機関用に適している。発生した蒸気は飽和蒸気であるから、これをボイラの煙道又は火炉壁に設けた過熱器や再熱器で加熱して蒸気タービンに供給し、蒸気タービンの熱効率を高める必要がある。なお、燃焼制御、過熱蒸気温度制御、給水加減等は、自動的に制御盤で行われている。
 
図3・11 横形水管ボイラ
 
3・4・4 ガスタービン(gas turbine)
 ガスタービンが最初に動いたのは、1902年コーネル大学の大学院生のS.A.モスが試験的に製作したことによる。その後1905年2人のフランス人アルマンガンとルマールがこれを実用化し今日に至った。
 蒸気タービンは蒸気を吹き付けて動力を発生させるが、ガスタービンは、蒸気の代わりに、高熱ガスをタービンの羽根に吹き付けて、動力を得る装置で、図3・12は基本的な原理図である。図3・12にみるように、大気圧の空気が圧縮機に入る。ここで3〜5気圧に圧縮された空気は燃焼室に入る。そこへ燃料が入って炉と同じように連続的に燃焼する。この燃焼された高圧高温のガスが、ガスタービンの羽根にぶつかり、ガスが膨張するとともに、ガスタービンには機械的仕事をする。この膨張ガスは排気ガスとして大気に放出される。この場合、空気圧縮機はガスタービンの軸に直結されているので、ガスタービンの有効出力は、圧縮機に必要な動力(普通半分以下)を差し引いた残りの動力である。ガスタービンの熱効率を高めるために、排気ガスを直接大気に放出しないで、熱交換器をとおして、燃焼室に入る空気を予熱して大気へ放出する方法(図3・12の点線の部分)又はこの予熱した空気を、更に、冷却して圧縮機へ入れる方法等がある。前者を開放再生サイクルガスタービンといい、後者を密閉サイクルガスタービンという。
 
図3・12 開放サイクル又は再生サイクルガスタービン原理図







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