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1・3 航行区域、漁船の従業制限、国際航海
1・3・1 航行区域
 船舶の航行の安全を確保するため、その大きさ、構造、用途等に応じて、船舶が航行することのできる区域の限度を示したもので、次の4種に区分されている。(船舶安全法施行規則第1章及び第2章)
(1)平水区域 湖、川及び港内並びに特定の水域
(2)沿海区域 日本国を形成する北海道、本州、九州、四国及びそれに属する特定の島、朝鮮半島並びに樺太本島(北緯50度以北の区域を除く。)の海岸20海里以内の水域
(3)近海区域 東は東経175度、西は同94度、南は南緯11度、北は北緯63度の線に囲まれた水域
(4)遠洋区域 すべての水域
 
1・3・2 漁船の従業制限
 漁船は、その操業形態等により他の一般船舶と同様に律し得ない事情があるから、一般船舶の航行区域に替え、従業制限をもって律することになっている(漁船特殊規則第2条)。従業制限は総トン数20トン以上の漁船については、第一種、第二種及び第三種の3種に、総トン数20トン未満の漁船については小型第一種及び小型第二種の2種に区別されているが、これは、従業区域と漁業の種類とを併せ考慮したもので、次のとおりである。
 
第一種・・・ 流網漁業、刺網漁業などの主として沿岸の漁業
第二種・・・ 鰹竿釣漁業などの主として遠洋の漁業
第三種・・・ 特殊の漁業(例えば、母船式漁業、トロール漁業、捕鯨業、漁獲物の運搬業務、漁業に関する試験・調査・指導・練習及び取締りの業務)
小型第一種・・・ 定置漁業、まき網漁業、曳網漁業等を主として本邦の海岸から100海里以内の海域において行う漁業
小型第二種・・・ さけ・ます流網漁業、まぐろ延縄漁業、かつお竿釣漁業等を主として本邦の海岸から100海里を超える海域において行う漁業
   
注:上記の詳細については、漁船特殊規則「第3、4、5、6及び7条」及び「漁船特殊規則第3条第11号及び第4条第9号に掲げる業務を定める件」を参照のこと。
 
1・3・3 国際航海
 国際航海とは、船舶安全法施行規則第1条により次のように定義されている。
 すなわち一国と他の国との間の航海をいい、この場合、一国が国際関係について責任を有する地域又は国際連合が施政権者である地域は、別個の国とみなされる。
1・4 船舶のトン数の種類(船舶のトン数の測度に関する法律・以下「トン数法」という。)
 船の大きさを表す単位をトン(ton)といい、大別して船の容積を表すトン数と船の重量を表すトン数の2種類に分けられる。これらトン数は種々の税金や手数料などを定める基準とされる。
1・4・1 容積トン数
 船の容積を示すトン数については、船舶のトン数の測度に関する法律及び関係法令にその測り方、計算法が詳細に定められている。
(1)国際総トン数(トン数法第4条)
 主として国際航海に従事する船舶についてその大きさを表す指標となるもので、船舶の閉囲場所の合計容積を算定し、この容積に定められた係数を乗じて算出した数をいい、国際航海に従事する長さ24m以上の船舶は国際トン数証書(トン数法第3、5及び8条)をもたねばならない。
(2)総トン数(gross tonnage G.T.)(トン数法第5条)
 我が国における海事に関する制度において、船舶の大きさを表すための主たる指標となるもので船舶の閉囲場所の合計容積を算定し、この容積に定められた係数を乗じて算出したトン数をいう。
(3)純トン数(net tonnage N.T.)(トン数法第6条)
 旅客又は貨物の運送の用に供する場所とされる船舶内の場所の大きさを表す指標となるもので貨物倉、満載喫水、旅客定員から算出する。
1・4・2 重量トン数
(1)排水トン数(displacement tonnage)又は排水量(displacement)(トン数法第50〜58条)
 船舶の水面下の体積と同容量の排除した水の重量は、アルキメデスの原理により、船の重量と等しいが、この重量をトン数で表したものを排水トン数又は単に排水量という。計算方法としては、上記の体積をメートル単位で計算し、淡水ならばその比重1、海水ならばその比重1.025を乗ずれば排水トン数が求められる。なお、船舶に貨物、旅客、燃料、食料等を満載した場合のトン数を満載排水トン数又は満載排水量といい、これらを積まない場合のトン数を軽荷排水トン数又は軽荷重量という。自衛艦などの大きさを表すときに用いる。
(2)載貨重量トン数(deadweight tonnage)(トン数法第7条)
 船舶の航行の安全を確保することができる限度内における貨物等の最大積載量を表すための指標となるもので、人又は貨物その他定められた物を積載しないものとした場合の排水量と基準喫水線に至るまで人又は物を積載するものとした場合の当該船舶の排水量との差をトンにより表したもので、普通貨物船の大きさを表すのにこれを用いる。
1・4・3 貨物船における各種トン数の割合
 上記において述べたようにトン数には種々あるが、船の種類により言い表し方が一応決っている。例えば、自衛艦では排水トン数、客船では総トン数、貨物船では載貨重量トン数というようになっている。普通の貨物船における各種トン数のおおよその割合を参考のため次に示す。
 
トン数の種類 各種トン数の割合
総トン数 100
純トン数 62(60〜63)
排水量 210(200〜230)
載貨重量 150(120〜200)
 
1・4・4 トン表示の起こり
 イギリスで15世紀頃、船が積みうる量を酒樽の数でもって表し、これによって税金を取ったことによる。
 この樽を叩くとタン(tun)という音がするので俗にタンと呼ばれ、幾タン積みの船と言うようになったが、いつしか、トン(ton)ときまったそうである。
 樽に酒をつめた重量が2,240ポンド(1,016kg)すなわち1英トンに当たる。また樽は252ガロン(40.3立方フィート)の容積があるから1ガロンは0.160立方フィートの単位が今日でも使用されている。
1・5 復習問題(1)
(1)船舶建造者はなぜ船舶に関係ある法規、規則等を守って建造しなければならないかを述べ、かつ、電気に関係ある法規5つをあげよ。
(2)国の検査と日本海事協会検査との関係を述べよ。
(3)小型船舶とは如何なる船舶であって、かつ、これの検査はどこが行うか述べよ。
(4)船舶の種類は分類の仕方によって幾つに大別されるか。このうち、推進動力による分類を細別せよ。
(5)旅客船の定義を述べよ。
(6)船舶の航行区域を定めた趣旨を述べ、かつ、区域名を記せ。
(7)国際航海の定義を示せ。
(8)漁船の従業制限の趣旨を述べよ。
(9)船舶のトン数の種類をあげ、そのうち総トン数について説明せよ。
(10)載貨重量トン数について説明せよ。







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