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レーダー講習用指導書(機器保守整備編)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


3・4 マイクロ波集積回路(MIC)
 数年前までは、レーダーのような高周波領域で使える、雑音の小さい、信頼性の高い、価格も適当な、高周波増幅器に適した半導体素子は存在せず、Sバンドのような周波数の低いレーダーを除いては、マイクロ波帯の高周波増幅器は採用されていなかった。しかし、近年になってガリウム砒素FETが開発され、Xバンド用として、信頼性や価格についても船舶用のレーダーの使用に耐えられるようになった。
 従来の周波数変換部は局部発振器にガンダイオードを、混合器にはシリコンのミキサーダイオードを用い、また、これらを接続するための導波管で構成された立体回路を用いていた。
 この周波数変換部の、ガン発振器の代わりにガリウム砒素FETの発振器を、カートリッジタイプのミキサーダイオードの代わりにペレットタイプのミキサーダイオードを、導波管の立体回路の代わりにアルミナ基板上に形成したストリップラインによってこれらを接続し、全体を集積化したものを「マイクロ波集積回路(MIC)」と呼び、高周波増幅器を組み込みながら、従来の立体回路系のものよりも小型化されている。
 
(拡大画面:54KB)
写真3・1 MICの実装例
 
3・5 変調用の電子管と半導体
 マグネトロンを使って、幅の狭いパルス波形で、しかもレーダー用として大電力の送信を行うには、マグネトロンの陽極にパルス波形による高電圧を加えて、一時に電流を流してやる必要がある。このためには、送信休止時間中に電気回路の中へ電力を蓄えておいて、それを一時に放出する方法をとるのが普通であって、パルス変調回路には、このエネルギー放出のきっかけを作るスイッチ的な役割を果たすための電子管が使用されている。このための電子管として真空管(真空管を使ったパルス変調回路はハードチューブパルサと呼ばれる。)が使用されることもあるが、一般にはサイラトロンと呼ばれる放電管が使用され、また、最近ではそれを半導体化したサイリスタが使用されている。
 
3・5・1 サイラトロン
 サイラトロンはガラス管の中に陰極と陽極及び格子を構成した、一見真空管と同様な電子管であるが、真空管は管内が高真空であるのに対して、サイラトロンでは管内にアルゴンや水銀などの蒸気が適切な圧力で封入されている。このようなガスを封入した電子管を一般には放電管と呼び、冷陰極放電管と熱陰極放電管とがあって、熱陰極放電管の中で格子を持っているのがサイラトロンである。放電管のシンボルマークは真空管とよく似ているが、管内にガスが封入されているという意味の黒点を付してその区別をしている。(図3・9)
 
図3・9 放電管のシンボル
 
3・5・2 サイリスタ
 サイリスタはシリコン制御整流素子又はSilicon Controlled Rectifierの頭文字をとってSCRと略称され、ちょうどサイラトロンと同じような動作をする半導体素子である。サイリスタの構成は図3・10に示すようにPNPNの四層からなる接合素子である。そして、一段目と三段目及び四段目に金属板を付けて端子を引き出し、それぞれ、アノード(陽極)、ゲート及びカソード(陰極)と呼ばれている。アノードに正、カソードに負の電圧をかけると、段目のホールと二段目の電子はその境界J1において、それぞれ下方と上方に移動し、また三段目と四段目の境界J2においても同様で、互いに境界を通って移動しあうが、二段目と三段目の境界J2に空乏層となり、全体的には電流は流れない。この状態で電圧を順次高くしていくと、ツエナー現象を生じて突然電流が流れるようになるが、このツエナー現象をゲートに正の電圧を掛けることによって、アノードの電圧が比較的低いときでも起こさせて、電流を流そうというのがサイリスタである。すなわち、ゲートに正の電圧を掛けることによってゲートとカソードの間に電流が流れ、ゲートから入ったホールや、四段目から三段目に入った電子が空乏層に迷い込み、二段目と三段目の間に電流が流れることになって、ツエナー効果の発生を促進する。一度ツエナー効果が生ずると、SCRの内部抵抗は小さくなって、大きな電流が流れ続けるのでサイラトロンと同じような効果を持つことになる。
 
図3・10 サイリスタの構成
 
3・6 送受切替管
 レーダーでは普通、送信用と受信用に同じ空中線を使用し、例えば3cm波のレーダーでは、空中線への導波管に送信機と受信機がT分岐を通じて同時に接続されている。この場合、送信機の大きなパルス電力が直接受信機に入ると、受信機のダイオードが破損したり、その他の受信回路にも悪影響を与えたりするので、送信中は受信機を導波管回路から切り離す必要がある。また、逆に受信中には、弱い受信信号を、送信機側と受信機側とに分けると、更に弱くなってしまうので、受信中は送信機を切り離しておくことが望ましい。これを自動的に行うのがTR管とATR管であり、ともに導波管の一部に挿入して使用する一種の放電管である。これらの放電管は送信の出力により放電を開始し、送信が終わると直ちに放電が停止するように作られている。
 TR管はガス入放電管のため、使用しているうちに封入ガスの消耗などによってだんだん劣化してくるので、現在、送受切替装置として、サーキュレータ型デュープレクサやダイオードリミッタが多く使用されるようになった。
 サーキュレータの構造は図3・11に示すように静磁界によって一様に磁化されたフェライト棒を導波管に挿入したもので、この中をマイクロ波が伝搬するとき、一方向に進行するマイクロ波に対してはほとんど減衰せず、逆方向に対しては大きな減衰を与える非可逆特性をもっている。これは、マイクロ波の周波数とフェライトを磁化する静磁界とがある関係にあるとき、マイクロ波のエネルギーが著しくフェライトに吸収されることを利用したもので、共鳴吸収ともいわれ、マイクロ波が正円偏波のときだけ生じ、負円偏波のときは起こらない。また、フェライト自身がマイクロ波エネルギーを吸収するので、大電力でも使用できるという特長がある。
 
図3・11 サーキュレーターの構造







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