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レーダー講習用指導書(基礎理論編)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


7.3 GMDSSにおける人工衛星と測位の実際
7・3・1 GMDSSに用いられる人工衛星の概要
 1957年10月に旧ソ連が最初の人工衛星スプートニック1号を打上げてから30数年が経過したが、その間の宇宙開発は人類を月に送るなど目覚ましいものがある。宇宙技術は、我々の身近なものとなっている。1963年のリレー1号衛星による最初の日米間のTV中継は、ケネディ大統領の暗殺の速報というショッキングな事件で開始されたが、今日では湾岸戦争やオリンピックの例でも分かるように、世界の出来事が同時進行で茶の間の中には入り込んでいる。海外旅行をすれば、世界の大半のところではホテルの自室からダイヤル直通で自宅に電話がかけられるし、気象衛星からの雲の写真は、TVの天気予報に欠くことのできないものとなっている。最近の技術では、ポケットにも入る衛星航法装置ができ、これをもっておれば、ハイキングや登山で道に迷うこともなくなりそうである。
 船舶の運航あるいは遭難時にも、これらの宇宙技術が数多く使用されるようになってきている。アメリカのマリサットシステム、それを継承した国際システムであるインマルサットの海事衛星通信設備は、1977年ごろから極地方を除く世界の全海域で、陸上と同じような明瞭な電話、ファクシミリ、データ通信等が可能となっている。また、NNSS、GPSなどの衛星航法システムは、全世界の海域の船舶の位置の決定にはデッカ、ロラン、オメガなどの地上系の電波航法システムよりも優れた性能を発揮している。GPSは前述のように約10mの精度での測位も可能であるが、さらに、特殊な用法ではセンチメートルオーダでの位置の決定法も研究されている。気象衛星、海洋観測衛星等のシステムの船舶、漁船への応用も数多く試みられている。
 船舶の遭難・安全への宇宙技術の利用は、「全世界的な海上遭難安全システム」、いわゆるGMDSSの一つの特長である。インマルサット海事通信システムのうち、特に、無指向性空中線の使用ができ、印刷電信システムのみのインマルサットC、そのインマルサットCとその装置の兼用もでき、遭難安全情報の放送の自動受信のできる高機能グループ呼出しと衛星利用の非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)がある。このEPIRBにはインマルサット衛星利用のもののほか、コスパス・サーサットの衛星利用のものがある。
 
7・3・2 人工衛星とその軌道
 石でもボールでもよい。それを上に向かって投げると、ある程度の高さまで上がって、落ちてくる。これは地球に引力(重力)があるからで、このときの石の飛んでいる道筋が放物線である。飛行機やヘリコプタは地上に落ちてこない。ヘリコプタの例でいえば、これは上向きにプロペラを回して地球の重力に逆らって上向きの推進力を作り、それが重力と釣合う、つまり平衡すれば空中に静止することができるからで、エンジンが止まれば、墜落をするほかはない。
 石に紐をつけてぐるぐると回してみよう。石は回している手を中心にぐるぐると円を描いて回転する。これは、石にそのような回転力を与えると、石は紐から離れて遠くへ飛んでいこうとする力が働き、これを遠心力という。この石が飛んでいかないのは、紐がついているからで、紐が石をその描いている円の中心つまり手元の方に引張っているからで、これを求心力といい、この場合は、遠心力と求心力が平衡していることになる。石をゆっくり回すと遠心力が弱くなり、平衡がやぶれて石は回らなくなる。
 ロケットに人工衛星をのせて打上げるとどうなるか。ロケットは、始めは真上(又は斜め上方)に打上げられるが、ロケットの推力にもよるが、地球の重力が働き、その軌道は次第に斜め上方から地球面に平行近くになってくる。こうした状態で、ロケットから人工衛星が打出される。地球の上空はもはや空気がないので、人工衛星は、空気の抵抗で減速されることなく、ロケットを離れたときの速度のエネルギーを永久に保ち続けることになる。こうして、人工衛星は、その速度による遠心力が地球の重力と平衡できる高さと速度エネルギーをもてば、もはや地球にもどることなく、地球を回り続けることになる。ロケットの推進力が不足するとこのような状態は得られず、衛星は地球に落ちるか、地球の大気圏の空気の抵抗で発熱し、燃え尽きてしまい、打上げは失敗となる。
 こうして、人工衛星は地球を回るが、それは、地球の衛星である月が地球のまわりを回り、地球や水星、金星、火星、木星、土星などの惑星が太陽のまわりを回るのと同じ原理である(地球の重力圏を離れるように打上げられて太陽を回るものは人工惑星と呼ばれる。)
 人工衛星は、各種の天体と同じ法則に従って運行する。その法則はケプラーの法則で三つの法則からなり、各惑星の運動の観測によってヨハネス・ケプラーによって導き出されたものである。この法則を地球と人工衛星という関係で述べると次のとおりになる。
第1法則:人工衛星は地球を中心又は一つの焦点とする二次曲線(円、楕円、放物線、双曲線)を描いて運動する。
第2法則:地球を中心とする衛星の運動は、一定の時間に衛星の動く動径が描く面積は等しい。
第3法則:楕円軌道の長半径の3乗と衛星が楕円の軌道を一周する周期の2乗との比は一定である。
 衛星の打上げで、火星探査などの人工惑星となって、地球の重力圏を脱するときは、放物線又は双曲線の軌道をとるが、人工衛星として地球を回るときには楕円軌道、又はその特殊な場合として円軌道(離心率が0である楕円軌道)となる。
 人工衛星の軌道は、上記の法則に基づいて、ケプラーの軌道の6要素、地球の中心を原点とする直交座標系上での三次元の位置と速度で表すことができる。直交座標系での表現も三次元の位置と速度で六つのデータで表されることになる。
 
(拡大画面:22KB)
図7・13 軌道6要素説明図
 
 ケプラーの軌道の6要素は、次のとおりで、それらは図7・13に示してある。まず、衛星軌道の楕円と、その楕円上の位置を示すのに三つの要素が必要である。すなわち、楕円の大きさとその形は、軌道長半径aと離心率eで規定され、その一方の焦点に地球の中心がある。この楕円の軌道上で地球に最も近いところを近地点、最も遠いところを遠地点と呼び、遠地点と近地点の距離の1/2が軌道長半径である。ケプラーの第2法則から分かるように、衛星はこの軌道上を等速度で動いているのではないが、その楕円軌道上の位置を示す要素が図では平均近点離角Mθとなっており、この要素にはいろいろな変形がある。衛星が楕円軌道を一周する周期Tは、第3法則から、が導かれ、Aから求められる。近似的に、で略算される。このTを用いて、Mθ=(2π/T)(t−tP)が求められる。tは現在の時間、tP衛星が近地点を通過した時間で、Mθの代わりに近地点通過時間tPを要素の一つとして使用することもある。こうして、Mθは角度を示しているが、平均値であって仮想の角度ではない。これに対して、楕円の中心において、衛星の位置と近地点とのなす角を離心近点離角Eといい、Mθ=E−esinEの関係がある。これで、ある時間tにおける軌道楕円上の衛星の位置が決まる。
 残りの三つの軌道要素は、この楕円軌道と地球との関係である。図を参照しながら見ていくと、軌道傾斜角iは、楕円軌道面と地球の赤道面とのなす角、昇交点赤経Ω(地球の経度を使用することもある。)は、軌道楕円面が赤道面と交わるところの赤経、すなわち、軌道の経度方向の向き、最後に、近地点引数ωは、地球中心における楕円軌道の近地点と昇交点のなす角で、地球に対する楕円軌道軸の向きで、これで楕円軌道と地球の関係が決まり、任意の時間における地球に対する衛星の位置が求められる。
 衛星は地球の自転に関係なく、こうして決まった軌道を回り続けるが、その軌道自身が地球の重力異常、軌道上にある残留大気の抵抗、太陽や月の引力、太陽の放射圧等が原因で少しずつ変化する。これを軌道の摂動というが、その原因と影響の大きさは軌道高度等によって異なり、例えば、残留空気の抵抗は、低高度の軌道のみが影響を受け、軌道の長半径が少しずつ減少する。また、太陽や月の引力は高い軌道の衛星のみがその影響を受ける。地球上から見た衛星の位置等の関係は、上述の軌道の6要素で求めた衛星の位置を、地球の中心を原点として地球とともに回転する直交座標系(緯度経度座標系)に変換するのである。







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