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2・7・5 動力電源用インバータ
 電力用半導体と制御用素子の飛躍的進歩に伴って、電動機速度の任意制御又は省エネルギーの目的から、交流電動機の制御用電源として陸上ではインバータの使用が最近急速に普及しつつある。船舶においても、低減速度にて連続運転が許容される比較的大形の補機用電動機に、省エネルギーの目的で採用される傾向にある。
 一般にインバータと称するものは一般用交流電源に接続して使用することを前提として作られているので、実際の装置は図2.110に示すようにコンバータ部(順変換装置、交流→直流)とインバータ部(逆変換装置、直流→交流)との組合せから成っており、特殊用途のものを除き、交流電動機の可変速運転用に通常、VVVF(Variable Voltage Variable Frequencyの略、可変電圧、可変周波数)制御方式のものが主として用いられる。
図2.110 主回路構成
 
 インバータには各種の形式上の分類があるが、その中でよく使用される種類の区及び一般的装置の機能と特徴は次の通りである。
(1)種類
(a)電圧形インバータと電流形インバータ
 インバータの出力端子から電源側を見た場合、電圧源となるものを電圧形インバータ、電流源となるものを電流形インバータと称する。主回路構成上の特徴としては、図2.111に示すように電圧形インバータは、コンバータ出力側のコンデンサにより平滑された直流電圧を得て、これを基にインバータ部で所定の周波数の交流電圧に変換する。一方、図2.112に示すように電流形インバータではコンデンサの代りに大きな直流リアクトルが接続され、インバータ部への入力電流を平滑にして所定の周波数の電流に変換する。
 VVVF式インバータは主に電圧形であり、VCVF(可変電流可変周波数)式インバータには電流形が主に用いられる。
 電流形インバータは電動機の正逆転運転を頻繁に繰り返し、ダイナミック運転(発電、回生運転)を行う場合に適しているが、電動機の特性に合せてインバータの設計を行う必要がある。
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図2.111 電圧形インバータ
 
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図2.112 電流形インバータ
 
(b)自励式インバータと他励式インバータ
 インバータの整流素子に転流を起こさせるに必要な電圧(転流電圧ともいう。)が半導体電力変換装置の構成要素から与えられるインバータは自励式インバータと称し、直流電源から電圧の確立している交流回路に逆変換する場合のように、転流電圧がインバータの負荷側の交流回路から与えられるインバータを他励式インバータと称する。したがって、交流電動機運転電源用のインバータは自励式インバータに属する。
(c)整流素子による分類
 逆変換主回路用の整流素子にはサイリスタ、GTO(ゲートターンオフサイリスタの略)又はパワートランジスタが用いられる。
 サイリスタは誘導負荷の場合転流を確実に行わせるために、強制転流回路を付加する必要があり、回路構成がやや複雑になる欠点がある。一方、GTOやパワートランジスタは自己消弧形の素子で、ゲート電流又はコレクタ電流の制御により主回路をON−OFFさせることができるので、回路構成上望ましい素子とみなされており、最近の急速な開発に伴い、サイリスタに代って広く採用されるに至っている。現在ではパワートランジスタは1200V、300A程度のものまでモジュール化されており、GTOにおいて4500V、3000Aのものまで開発されている。一般に広く使用される中容量(約300kVA)以下のインバータにはパワートランジスタが主流を占めて使用されており、船用のインバータの殆んどパワートランジスタが対象になるとみなされる。







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