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初級講習用指導書(電気機器編)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


(2)サイリスタ整流器の動作特性
 サイリスタ整流器の動作特性はダイオード整流器に比し、複雑で微妙であるが、その中で特に基本的な特徴と思われる点について説明する。
(a)転流
 転流とは電流がある相の整流素子から他の相の整流素子に移ることをいう。ダイオードによる三相半波整流回路を例にとり、各相のダイオードの電流の移り変りを見ると次のようである。
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図2.93 三相半波整流回路における転流過程
 
 図2.93、(a)結線図に示すu相のダイオードDuに電流が流れていたとし、これが(b)図の各相電圧波形中の0点、即ちu相とv相がプラス方向で同電位になった時点を過ぎるとv相の方が電圧が高くなり、(c)図中の電圧eの作用のように、ダイオードDuには逆電圧がかかるようになるので、0点でダイオードDuに電流が流れなくなり、即ち消弧の状態に至る。一方ダイオードDvは順方向の電圧がかかることになるので通電を開始する。このように電流の転移が相の素子相互間で自然に行われるのを自然転流、0点を自然点弧時点という。自然転流は電源電圧のかかり具合によって行われるので、電源転流とも呼ばれる。サイリスタで、ゲートパルスの位相制御を行う場合の位相制御角とは、0点即ち相前後する相の電圧が互いに等しくなる波形の交点からの位相角の遅れをいい、そのため制御遅れ角とも称する。サイリスタ整流装置では一般に自然転流の作用を利用しているが、直流から交流に交換するインバータ装置や、電流の断続間隔を変化させることによって一定の直流電圧から可変減圧の直流電圧を得るチョッパ制御では、自然転流を行うことができないので、ターンオフ動作時に一定時間サイリスタ両極に逆電圧を加えて、順電圧方向の阻止能力を確実に回復させるように作用する強制転流方式を採用する必要がある。
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図2.94 サイリスタによる三相半波整流回路における転流過程
 
 整流回路で転流が行われる場合の整流素子間の電流の移り替りの時間的変化は電源側の整流器用変圧器及び発電機の回路に含まれるインダクタンスによって影響を受け、この電源インダクタンス(この2πf倍を転流リアクタンスと称す。)があると図2.94に示すように、整流素子の受け取る電流は瞬間的に変わるのではなく、ある有限の時間をかけて移り替る。これは整流素子の接続されている回路に含まれるインダクタンスが電流の瞬間的な変化を妨げるからである。図2.94はサイリスタによる三相半波整流回路において、位相制御角を60°にした場合の転流の様相を示したもので、この回路では負荷電流を平滑とするために平滑インダクタンスLdが挿入されている。U1相にあるサイリスタS1が導通しており、ある制御位相角において次の相のアームにあるサイリスタS2が点弧されると、変圧器は転流期間中二相短絡となり、ある有限の時間中2つの相のサイリスタが閉じた接点と同じ働きをする。この短絡現象に伴ってU2相の立上がる電流はサイリスタS2を流れるi1を打ち消し、次のアームのサイリスタS2の電流i2を形成する。この2つの電流の和i1+i2は平滑インダクタンスのために常に一定の値Idを保つ。このように転流過程において2つの電流が重なり合う時間の長さを「転流重なり期間」又は「転流重なり角」といい、位相角の大きさで表される。転流重なり角μは電源インダクタンスの大きさのみでなく、直流電流の大きさ及び位相制御角αにも関係し、約90°位相制御時には最小となる傾向がある。なお、転流期間中に生じる非平滑直流電圧は転流に関与している変圧器の2次電圧の和の1/2に相当して時間的に変わる。
 
(b)三相全波純ブリッジ整流回路のゲートパルス
 この回路は図2.95に示すように整流6アーム全部がサイリスタを有し、1サイクル周期に6制御パルスを与える代表的な制御整流器の回路であるが、整流回路としての確実な動作を達成するためにゲートパルスの与え方が重要であるので、その概要を下記に述べる。
 点弧用のゲートパルスは負荷を通じて電流が電源側に循環できるよう正、負極側のサイリスタが交互に且つ相順にしたがって図2.95のC図に示すように、サイリスタのゲートに供給されねばならない。ゲートパルスは(180°−α)の時間幅を有するシングルパルスか、又は適当な間隔を有するダブルパルスで、ダブルパルスの場合は、後のパルスが次に動作するサイリスタの主パルスと同時に発生する。
 B図及びC図は位相制御角70°の場合を示すが、SugパルスでサイリスタSuを点弧する際は、同時にサイリスタSyも導通状態にされるので、点弧以後はμ相とv相の電圧曲線により示される差電圧が負荷側のPN端子間に加わることになる。u相とv相の電圧曲線の交点Pに至ると、抵抗負荷の場合は、誘導逆起電力が発生しないので、サイリスタ両端子間に加わる電圧は零となり、サイリスタ電流は流れなくなる。
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図2.95 三相全波ブリッジ回路のゲートパルスと整流電圧波形







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