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10.3.3 接地の方法
 接地を効果的にさせるためFRP船では、図10.9のように特別の接地銅板と接地線を設ける。無線機器用と一般用とは、分離して設置したほうがよい。
 
図10.9
 
(1)災害防止策としての設置
 人体に対する危険防止のため金属、機器及びケーブルの接地、並びに避雷のための接地銅板と接地線の布設は次のように行う。
(a)接地銅板
 接地銅板は水線下に設ける。大きさは0.2m2以上(例えば定尺銅板(1200mm×365mm)の1/2以上)とし、厚さは0.5mm以上とする。
(b)主接地線
(1)主接地線には、すずめっき軟銅線又は平角銅線を使用し、その大きさは断面積50mm2以上であることが望ましい。
(2)主に、船体の上下方向になるべく直線的に布設し、下端は接地銅板に接続する。
(3)甲板や隔壁を貫通する場合には、貫通ボルト(同一断面積以上のもの)を取付け、銅管端子又は圧着端子を使用してこれに接続する。
(c)支接地線
(1)支接地線にはすずめっき軟銅線又は平各銅線を使用し、その大きさは主接地線の約1/2の断面積とする。
(2)支接地線は、電気機器の装備されている区画を対象として、主に船首尾方向になるべく直線的に布設し、主接地線に接続する。
(3)大形金属構造物、例えば大形補機、燃料油タンク、燃料油管、清水タンク、梯子、クレーン、金属製リギンなども支接地線で有効に接地をする。
 なお、無線機器が装備されている場合は、手すり、サッシ、ワイヤロープのような細長い金属物には、送信電波によって誘導電圧が発生することがあるので、これらの金属構造物はできるだけ空中線から離し、長さも短くすることが望ましい。誘導電圧が人体に電撃を与えるおそれのある場合には、絶縁物で金属を被覆するか、支接地線で主接地線に接続する。
(d)避雷用の接地線
(1)避雷用の接地線には75mm2以上のすずめっき軟銅線又は平角銅線を使用して、できるだけ直線的に布設し、鋭角に曲げないようにする。
(2)接地銅板(一般用又は無線機器用接地銅板の近い方)に極力接触抵抗のないように確実に接続する。ただし、接続ははんだだけで行ってはならない。
(3)マストの頂上から接地銅板までの間の抵抗は0.02Ω以下であること。
(4)落雷対策の接地に関する詳細については、付録の「避雷設備」を参照のこと。
(2)ノイズ対策としての接地
 ノイズ対策としての接地は、他の接地とは異なり、単純に低抵抗で接地すればよいというものではなく、ノイズの発生を減少させ、除去するように施工する必要がある。
(a)接地銅板
 ノイズ対策としての接地銅板は特に設けず、10.3.3(1)(a)の接地銅板を共用する。
(b)主接地線
 原則として10.3.3(1)(b)の主接地線を共用する。ただし、接地する機器に特に低インピーダンスの接地が要求される場合には、銅帯を用いて別に布設してもよい。
(c)支接地線
(1)支接地線には錫めっき軟銅線又は平角銅線を使用し、その大きさは主接地線の約1/2の断面積とする。ただし、低インピーダンスの接地を要求される場合には、主接地線と同断面積の銅帯を使用する。
(2)支接地線は、ノイズ対策の必要な機器が装備されている区画内に、できるだけ水平方向、直線的に、かつ、できるだけ最短距離に布設し、主接地線に接続する。ただし、ノイズ除去のための接地が必要でない場合には10.3.3(1)(c)の支接地線を共用してもよい。
(3)無線機器用の接地線とはできるだけ離して布設する。
(d)各機器と接地線との接続
(1)ノイズ対策の必要な機器などと接地線とは、幅30mm以上の銅帯で接続する。
(2)特に強いノイズを発生する機器の接地は、他の機器の接地線とは別に接地線を設けて、接地銅板のところで接続するようにする。
(3)複数の機器で構成される装置において一点接地を行う場合には、各構成機器間の接地接続には絶縁電線を使用する。(図10.10参照)
 
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図10.10 ノイズ対策を要する機器の接地
 
(3)無線機器における接地
 無線機器(送信機、受信機、航海用無線機器、計測機器など)の接地線には高周波電流が流れる場合があるので、接地線も空中線と同様に考えなければならない。
 したがって、無線周波帯における有効な接地を行うためには、接地線のインピーダンスを極力小さくしなければならない。
(a)接地銅板
 接地銅板は水線下に設ける。大きさは0.2m2(例えば定尺銅板(1200mm×365mm)の1/2以上)とし、厚さは0.5mm以上とする。
(b)主接地線
(1)主接地線には、厚さ0.5mm以上の銅帯を使用するが、銅帯幅などについては無線機メーカーと相談すること。
(2)機器の装備されている区画内に、できるだけ直線的に、かつ、最短距離で布設し、下端は設置銅板に確実に接続する。
(3)甲板や隔壁を貫通する場合は、貫通ボルトを使用せず、銅帯を連続させたほうがよい。
(c)支接地線
(1)支接地線には銅帯を使用し、大きさは主接地線の1/2の幅とする。
(2)機器の設置されている区画内に布設し、主接地線に確実に接続する。
 ただし、27MHz帯以上の無線機器のみを装備している場合には10.3.3(1)の接地でもよい。
(d)各機器と主接地線や支接地線との接続方法
(1)送信機(送受信機を含む、以下同じ)の主接地線は、無線機器用の接地銅板から最短距離で送信機に接続する。この主接地線には他の機器を接続してはならない。送信機(空中線切換器を除く)と他の機器は図10.11のように接続する。
 
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(注)
※印の各機器と支接地線とを接続する機器接地線には、幅が30mm以上の銅帯を用いることが望ましい。
図10.11 送信機と他の機器の接地例
 
(2)無線機器に使用する空中線切換器には避雷の目的もあるので、接地線には銅帯を使用し、その断面積は75mm2以上とし、主接地線に確実に接続する。主接地線の断面積が75mm2以上ない場合は、直接接地銅板に接続する。







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