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4.5 特殊工事
 ここでは、危険場所など特殊区画のケーブル布設及び特殊なケーブルの布設方法についての規則又は注意事項について記述する。
 なお、危険場所とは、一般に、貨物タンク、貨物ポンプ室、蓄電池室などをいうが、詳しくは、運輸省の船舶検査心得302−6及びNK鋼船規則検査要領H2.9.12−1.を参照のこと。
 
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※ポンプ室、タンク、タンクに隣接する区画及び斜線の部分が危険場所。
図4.44 危険場所の一例
 
4.5.1 危険場所のケーブル布設
 危険場所には、ケーブルを布設してはならない。やむを得ず布設する場合は、次による。
(1)ケーブルの種類
 ケーブルは、次のいずれかとしなければならない。ただし、ケーブルのがい装又は金属シースが腐食するおそれのある場合には、がい装又は金属シースの上にビニルシール又はクロロプレンシースを施さなければならない。
(a)無機絶縁銅被のもの
(b)鉛被金属がい装のもの
(c)非金属シース金属がい装のもの
(2)ケーブルの布設
 ケーブルの布設は、次によらなければならない。
(a)ケーブルは、できる限り、船体中心線付近に布設すること。
(b)ケーブルは、甲板、隔壁、タンク及び各種の管から十分離して布設すること。
(c)ケーブルは、原則として機械的損傷を受けないように適当に保護すること。また、ケーブル及びその支持物は、船体構造物の繰返し伸縮作用に耐えるように取付けること。
(d)危険場所の甲板及び隔壁を貫通するケーブル及びケーブル用管の貫通部は、必要に応じ、ガス水密構造とすること。
(e)無機絶縁ケーブルを使用する場合は、確実な線端処理を行うよう特に注意すること。
(f)危険場所を通過、又は、危険場所に設置された機器に接続する動力及び照明用ケーブルの金属保護履は、少なくとも両端で接地しなければならない。
(3)蓄電池室内のケーブル布設
 蓄電池室には、原則として蓄電池用ケーブル及び室内電灯器具に至るケーブル以外のケーブルは布設してはならない。
(4)冷蔵庫内のケーブル布設
 冷蔵庫内に布設されるケーブルは、次による。
(a)ビニル絶縁ケーブルを使用する場合には、倉内の低温に耐えるものであること。
(b)ケーブルは、鉛被のもの、あるいは防水性がよく倉内の低温に耐える材質のシースを有するものであること。
(c)ケーブルは、原則として防熱装置の内部に埋込まないこと。
(d)ケーブルが防熱装置を貫通する場合には、これと直角に布設し、両端を密封した管に納めること。
(e)ケーブルは、天井、側壁又は通風ダクトの表面から離して布設し、導板、ハンガ又はクリートで支持すること。ただし、がい装上に防食層を施したケーブルを使用する場合には、これらの表面に直接布設することができる。
(f)ケーブル支持用の帯金、導板、ハンガなどは、亜鉛めっき又は他の適当な防食処理を施したものであること。
(5)本質安全回路のケーブル布設
(a)本質安全防爆形電気機器の本質安全回路のケーブルは、専用のものとし、一般回路用ケーブルとは、分離して布設しなければならない。
(b)種類の異なる本質安全防爆形電気機器の本質安全回路は、原則として、それぞれ別個のケーブルで配線しなければならない。やむを得ず多心ケーブルで共用する場合は、各心又は各対ごとに遮蔽を施したケーブルを用い、遮蔽を有効に接地しなければならない。
(6)誘導障害に関するケーブル布設
 一般電路と後述する妨害電路又は敏感電路が並行する場合は、妨害電路は450mm以上、敏感電路は50mm以上一般電路から離して布設する。ただし、一般電路と直交する場合は、この限りでないが、機器メーカーと十分協議すること。
 なお、妨害電路とは、レーダー変調器のパルス電路、送信空中線電路および水中音響機器送波器電路、サイリスタ応用機器電路などをいい、敏感電路とは、受信空中線電路、水中音響機器受波器電路などをいう。
(7)磁気コンパス付近のケーブル布設
 磁気コンパスの近くには、ケーブルを布設しない。やむを得ず布設する場合は、回路を開閉しても、発生する磁界によって磁気コンパスの指度に影響を及ぼさない距離をとること。
(8)船体伸縮継手部のケーブル布設
 ケーブルは、できる限り、船体構造物の伸縮する部分を横切って布設することを避けなければならない。やむを得ず布設する場合には、ケーブルは、伸縮する部分の長さに応じた半径の湾曲部を設けて布設しなければならない。この半径は、ケーブル外径の12倍以上としなければならない。
(9)カーホールド内のケーブル布設
 カーフェリー、自動車運搬船などのカーホールド内に、重要用途や非常用の動力及び航海装置用などのケーブルを布設することが避けられない場合には、IEC 331の試験に合格した耐燃性ケーブルを使用するか、又は、これらのケーブルをA60相当以上の防熱を施した鋼管内又は鋼製ダクト内に布設すること。
(10)石炭運搬船貨物倉内のケーブル布設
 貨物倉を通過するケーブルは気密の厚肉鋼管に収め、管の両端は倉外に出る部分で電線貫通金物などにより封鎖すること。
 
4.5.2 危険場所の電気設備
 液化ガスばら積船及び液体化学薬品ばら積船の電気的危険場所においては、「危険物船舶運送及び貯蔵規則」の第236条及び第300条に基づいて「船舶検査心得」で使用が認められている本質安全防爆構造の電気設備及び附属書の電気設備以外使用してはならない。







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