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3・8 自動制御と遠隔制御
 
3・8・1 自動制御の意義
 制御とは、一般にある量を常に一定値に保つようにするか、又はあらかじめ定めた値にそって変化させる力を、人為的、機械的又は電気的に行うことであって、一般には人為的に行ってきたが、制御する機器が複雑多岐にわたってくれば、人為的では間に合わず、機械的、電気的又は機械+電気の機能を使用して、自動的に行うようになった。これを自動制御という。
 自動制御には次の方式があって、制御の目的に応じて、その何れかを選び又はそれらを併用する。
 
(1)フィードバック制御系(feed back control system)
 あらかじめ定めた目標値と被制御機器(物体・機械等)の被制御量とを比較し、その偏差を検出し、その結果を被制御量の調節装置にフィードバック(帰還)させながら調節し、たえず偏差を零にさせる動作を自動的に行わせる制御方式をいう。この場合下図に示すとおり、常に被制御量の調節装置とフィードバック回路とが閉回路をなしているので、この系を閉回路制御系又はフィードバック制御系という。
 
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図3・17 フィードバック制御系図
 
(i)定値制御 例えば、発電機の電圧を一定に保ったり、また、油の温度を一定に保ったりするように、ある量や値を常に一定値に保つ制御方式である。
 
(ii)追従制御 被制御系を目標値の変化に追従させる自動制御方式で、例えば自動操舵装置で船が指定進路より外乱等によって外れるとその角度を検出し、かじを自動的に動かして指定進路にもどす方式等をいう。
 
(iii)プログラム制御(Program control)  被制御量をあらかじめ定められたプログラムに従って変化させる制御装置をいい、例えば炉中の温度を制御する場合図3・18のように時間とともに温度を制御させる制御方式をいう。
 
 
図3・18 プログラム制御図
 
 
(iv)プロセス制御(process control) 被制御量即ち温度、圧力、流量、PH、濃度、粘度等の工業生産工程に適用する量を制御する方式をいう。
 
(2)シーケンス制御系(sequence control system)
 制御装置にフィードバックしないで自動制御系で、あらかじめ定めた順序に従って制御の段階を逐次進めていく方式をいい、別の名称を開回路自動制御系という。制御の段階において(1)制御動作が完了した後、次の動作に (2)動作後一定時間経過後次の動作に(3)制御結果に応じて次の動作を選定する、等の経過があって、動作の移行するには種々の組合わせを考慮して定めることができる。主機関の自動制御にも用いられる。
 
3・8・2 遠隔制御の意義
 機器の運転、停止、速度制御等を機側にて操作しないで、遠隔の所で、押しボタン又は操作ハンドル等の一動作で行うようにしたものである。したがって、複雑な動作機構から成り立っている機器にあっては、前記の自動制御方式のいずれかが組み入れてある。また、その動作を監視するために計器、動作表示、警報盤など組み入れた監視盤を必要とする。
 船舶の主機関その他の機器を遠隔及び自動制御する場合には、高度の重要性があるため、機関制御室として一室を設け、上記のみならず通信装置、非常警報装置等を含めてある。これについての詳細は“JMS9804日本船舶標準協会規格の機関制御室の計画標準”を参照のこと。
 
3・8・3 電気・空気式ディーゼル主機関遠隔操縦装置
 ディーゼル主機関の操縦方法には、前後進切替、始動停止、増減速の三つの基本操作がある。この操作を機関から離れた制御室又は操舵室等から行うことを遠隔操縦といい、(1)機械式(リンクロッド方式)(2)電気+油圧式(3)電気+空気式(4)全電気式の4種類の方式がある。
 一般に、電気+空気式遠隔操縦装置とは、機関の操作ハンドルを、圧縮空気を動力とする空気シリンダ、エアモータ等によって駆動し、かつ、それらの制御は電磁空気弁などを使用し、電気的に遠隔制御する方式と、また、機関の操作ハンドルを駆動することなしに機関付ガバナモータ及び始動空気電磁弁群を直接遠隔操作する方式とがある。図3・19はその後者の一例を示したものである。
 この系統図において、制御室の切替ハンドル(3)を操舵室(W/H)側に切替えると、制御空気は(8)の始動空気タンク(標準30kg/cm2)から(9)の減圧弁(標準30kg/cm2から7kg/cm2に減圧)を通して操舵室制御系統に供給される。そこで、操舵室のテレグラフハンドル(1)を前進(又は後進)の任意の回転数に設定すれば(4)の電磁弁により(5)の前後進の切替弁及び(6)の電磁弁によって(6)の始動空気制御弁が動作し、主機関が始動する。続いてテレグラフハンドルの指令位置に従って(10)のガバナモータが駆動し、主機関は所定の回転数まで増速(又は減速)する。また、(3)の切替ハンドルを機関制御室(C/R)側に切替え、(2)の操縦ハンドルを前進(又は後進)に操作すれば(5)の前後進切替弁及び(6)の始動制御弁が動作し、主機関は始動する。機関速度はリンクロッドにより、直接燃料調整軸を操作して増(減)速を行う。
 
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図3・19 電気+空気式ディーゼル主機関遠隔操縦装置系統図







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