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付録1.6 第8回IMO・BLG小委員会報告
[I]会合の概要
(1)平成15年3月24日〜28日 ロンドンIMO本部
(2)参加国又は機関
 アルゼンチン、豪、バハマ、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、キューバ、サイプラス、朝鮮民主主義人民共和国、デンマーク、エクアドル、フィンランド、仏、独、ギリシャ、インドネシア、イラン、イスラエル、伊、日本、レバノン、リベリア、マレーシア、マルタ、マーシャル群島、メキシコ、蘭、ナイジェリア、ノルウェー、パナマ、ペルー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、韓国、ルーマニア、ロシア、サウジアラビア、シンガポール、スペイン、スウェーデン、トルコ、英国、米国、ベネズエラ、香港(China)、ICS、ISO、IUMI、ICFTU、IAPH、BIMCO、IACS、CEFIC、OCIMF、IFSMA、OGP、AWES、INTERTANKO、ITOPE、DGAC、INTERCARGO、IPTA、IMCA及びWNTI
(3)議長等
議長 Mr. AZ. Alam (シンガポール)
副議長 Mr. S. Oftedal (ノルウェー)
事務局 Mr. J. Westwood-Booth & Mr. J. Crayford
(4)日本からの出席者(敬称略、順不同)
石原 彰 在連合王国大使館一等書記官
加藤 隆一 国土交通省海事局
岡村 敏 日本造船研究協会
赤塚 宏一 日本船主協会(ロンドン)
松永 昌樹 日本海事協会
吉田 千秋 理工学振興会
関口 秀俊 東京工業大学
戸松 憲治 内航総連合会
柳瀬 啓 日本造船研究協会
濱田 高志 日本海事検定協会
(5)議題
(1) 議題の採択
(2) 他のIMO機関の決定
(3) 油流出を解析するための確率論の問題
(4) MARPOL 73/78 附属書Iの見直し
(5) MARPOL 73/78 附属書IIの見直し
(6) 化学品の安全性及び汚染の危険性の評価
(7) IBCコード及びIGCコードの電気設備に関する規定の改正
(8) FPSOs及びFSUsへのMARPOL附属書I要件の適用
(9) タンカーにおける毒性物質を含む貨物の運送における人的保護の要件
(10) オイルタギングシステム
(11) IBC及びIGCコードの防火要件の見直し
(12) シップリサイクリング関連事項
(13) 海難事故の分析
(14) IACS統一解釈の検討
(15) BLG 9の作業計画及び議題
(16) 2003年議長及び副議長の選出
(17) その他の議題
(18) MSCへの報告
 
[II]審議結果の概要
1. 議題の採択(議題1関連)
 会議に先立ち、IMO事務局長オニール氏より開会の挨拶が述べられた。今次会合において審議される議題の説明が行われ、この中で、確率論的手法を用いた油流出量の見直しについてDGを、MARPOL附属書Iの全面見直し、FPSOs及びFSUsへのMARPOL附属書Iの適用及び有害液体物質の汚染分類の見直し及びMARPOL附属書IIの全面見直しについてWG1、2、3を設置し審議することとした。
各議題については、特段のコメントも無く採択された。
 
2. 他のIMO機関の決定(議題2関連)
 事務局より、NAV48、SLF45、DSC 7及びMSC76の報告(BLG8/2)、MEPC48の報告(BLG8/2/1)、COMSAR7、FP47及びSTW34の報告(BLG8/2/2)及びDE46の報告(BLG8/2/3)がされた。
各報告について、特段のコメントも無くノートされた。
 
3. 油流出を解析するための確率論の問題(議題3関連)
(1)プレナリーでの審議
 CGのコーディネーターである独国からCG報告書(BLG8/3)の説明がなされた。審議の結果、今回のドラフティンググループにおいて変更予定の箇所をプレナリーにて示すように指示がなされた。引き続き、ノルウェーより、OBO船のクライテリア修正の為の提案文書(BLG8/3/1)の説明がなされた。これに対し、ドイツ、米国等より、本案はBLG7にて既に妥協案が合意されており、これ以上のクライテリアの修正には賛成できない旨の発言があり、結果として本案は否決された。また、中国より詳細計算手法の提案があり、本案についてもDGにて審議することとなった。
 DGでの本格的な審議に先立ち、今回のDGの作業項目ついて検討すべきことをとりまとめるよう以下の事項(BLG8/J/5)が承認のためにプレナリーに提出された。
船側損傷と船底損傷との比率、潮流変化の取り入れ法等の説明を含む今回改正した仮想流出量計算の理論の背景をもう少し詳しく記述する。
各種定義の解説を加えると共に、詳細計算についての記述の検討をする。
油バージに対する計算例を追加する。
審議の結果、本案は承認され、引き続きDGにて以下の作業項目に従って検討するよう指示された。
暫定ガイドラインを完成させる。
Explanatory Noteを完成させる。
 
(2)DGでの審議
 DGは、米国を議長に我が国の他、独国、伊、蘭、ノルウェー、中国、韓国で構成されたが、実質の議論に参加したのは我が国を始め米国、独国、蘭、ノルウェーの5ヶ国であった。
 暫定ガイドラインについては、3箇所の誤字修正のみ行った。Explanatory Noteについては、解説文及び図表の追加作業を行った。我が国がCGにて作成・報告したC3の解説、詳細計算の解説、VLCCを用いた計算例についても、若干の語句の修正・追加のみで問題なく承認された。
 中国提案の計算手法の採用についてはBLG6で既に否決された経緯もあり否決され、その結果前回BLG7での合意通り日本提案の詳細計算手法をそのまま採用することとなった。
 
(3)プレナリーでの審議(WG開催後)
 プレナリーにて、ワーキンググループ議長(米国)より、BLG7/WP7に従ってドラフティンググループでの審議結果を説明した。審議の結果、ガイドライン案、Explanatory Note案ともに問題なく承認され、Resolution案として次回MEPCにて審議する事となった。
 
4. MARPOL73/78附属書Iの見直し(議題4関連)
(1)SI単位導入、新28規則改正等(関係文書BLG8/4/1、2(INTERTANKO)、/4/7(イラン))
(イ)プレナリーでの審議(初日)
 SI単位については、韓国は現場で利用されていないとの理由でその導入に反対した。リベリアは、産業界に配慮し新旧単位系の両方を用いればいいと発言した。“ppm”については、SI単位とは関係なく従来より用いられているものであり、そのまま用いられるべきであるとギリシャが発言し、我が国が支持した。また、ppmは無次元量でありSI単位化はそもそもありえない旨IAPHが発言した。議長からは、SI単位化はIMOのポリシーであると説明があった。
 INTERTANKOの提案文中、「crude oil」を定量的に定義する提案については、ギリシャより現行第13規則に既にこの用語が用いられ規制されているので、実質的な変更は避け、現行の定義(第1規則(28))を維持すべきとの指摘があり、我が国及びマーシャル諸島がこれを支持した。
 以上の発言を踏まえ、“ppm”を維持し、できるかぎりSI単位化を進めていくとのIMOのポリシーに沿って、SI単位化を前提としてWGでドラフトを作成することとされた。
 28規則改正及び関連するUI(統一解釈)追加により貨物配管システムとシーチェストの間の分離を強化し、船舶のカーゴシーチェストからの偶発的な油漏洩を防ぐとのINNTERTANKO提案については、サイプラス、蘭等多くの支持を得て、WGで検討されることとなった。
 また、第5議題の、油タンカー以外のタンカーやガスキャリアーであって、油を積載する場合は油タンカーとみなすように既存の附属書I中の“油タンカー”の定義を変更するとのノルウェー提案(BLG8/5/1)についても、附属書I見直しのWGで検討することとされた。
(ロ)WGでの審議(第二日)
 WG議長の指名を受けた S. Dimakopoulos氏(ギリシャ)の下で、我が国の他、カナダ、チリ、蘭、中国、ギリシャ、英、米、独、ノルウェー、INTERTANKOが参加し、BLG8/4(新附属書案)に沿って逐条審議が行われ、SI単位関係については“ppm”を“ppm(体積/体積)”旨の定義を設けそのまま使用とすること、載荷重量の定義中の“特定重量”を“相対密度”にする等の修文が行われた。28規則改正及び関連するUIについては、適切にドラフティングされた。
 プレナリーから検討を指示されていた、ノルウェー提案(BLG8/5/1)に基づく“油タンカー”の定義の変更については、同提案に従って“any other tanker”という表現を定義中に含めると現行第2規則(2)と矛盾を生じるので避けるべきとの指摘を我が国より行い、反映された。
(ハ)WGでの審議(第三日)
 ノルウェー提案(BLG8/5/1)に基づく“油タンカー”の定義の変更について、附属書IIの見直しに関するWGでの審議結果を踏まえ、同定義中の“ケミカルタンカー”を“NLS(有害液体物質)タンカー”に修正することとされた。
 
(2)400GT未満の船舶の機関室ビルジ処理に係る提案(BLG8/4/3(日本))
(イ)プレナリーでの審議(初日)
 上記処理に関して、比較的小さい船舶については、ビルジタンクや15ppmでの適切な排出のための装置の設置できるスペースがない場合があり、そのような船舶については、新15(6)規則においても現行附属書Iの9(2)規則のとおり、「実行可能で合理的な限りにおいて」という表現を追加するべきとの我が国の提案については、以下のコメントがあった。
(ノルウェー) 新規則14.4で日本の懸念は払拭されており、改正は不要。
(サイプラス) 規則の目的を鑑みると、400GT未満の船舶でも油性物質は保管しなければならず、日本の提案に反対。
 ギリシャ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンがノルウェーを支持し、韓国が我が国の提案を支持した。
 これに対し、我が国より我が国提案中の「as far as practicable」の挿入場所を修正して、油性物質の保管(retain)と排出(discharge)の両方に掛かるようにすればフィージブルではないかと反論したところ、WGでの検討を継続することについてパナマ、サイプラスの支持があり、我が国が代案を示した上でWGで検討することとされた。
(ロ)WGでの審議(第二日)
 我が国より、新14.4規則でいうところの400GT未満の船舶に対して、主管庁がビルジ保管のための設備及び15ppmでの排出のための設備の両方とも設置することが実際的ではないと判断する場合がありうるが、そのような場合、新15.6規則は理屈の上で適用不可能ではないか、従って我が国提案のような修文が必要ではないかと発言した。これに対し、議長が以下の考えを示し各国の意見を求めたところ、特段の異義は表明されなかった。
(a) 新14.4規則については、ビルジ保管又は排出のための設備を両方又は片方又は何も持たない場合の3通りがありうる、
(b) 新15.6規則については、新14.4規則に関わらず、主管庁の承認した設計の設備を動作させて航行中に排出する等の条件を満たして15ppm未満で排出する場合以外は、保管設備の有無に関わらずビルジ等の油性物質を船内保管して受入施設に排出するということ(この解釈に関して船底にたまったビルジをバケツなどで汲み上げて陸上に揚げることなどが例示された。)
 また、我が国よりWG議長に対し、新14.4規則における新15.6規則の引用は、新15.6規則が“as far as practicable”で実施されることを意味するのか問うたところ、「排出」が新15.6規則に従うことのみを指しており、日本が考えるような意味は含まれないとの回答があった。
 
(3)油除去装置(OFE)備付義務に関する免除規定を設ける提案(BLG8/4/4(蘭))
 プレナリーでの審議において、特別海域のみで航行する船舶に対する油水分離器(OFE)の免除に関し、特別海域から100時間内の航行の場合、OFEを備え付けなくてもよいとの免除規定を設ける本提案については、我が国より、一般海域のみを航行する船舶に適用される規定とのアンバランスが発生するとの懸念を表明し、一般海域船と同様の基準とすべきと発言した。またギリシャは、受入施設が不足していることがIMOの恒久的議題になっている現状を鑑みると本提案により不法投棄が増え、汚染の増大につながるリスクがあり、受入れ困難と発言した。
 サイプラスからは、100時間の考え方、受入施設のキャパシティは大丈夫なのか等未検討の事項が多いと指摘し、反対した。アルゼンチンは、提案の趣旨をフィージブルにするには受入施設に関する検討が必要と発言した。BINCOは、受入施設不足の問題について、ギリシャを支持した。以上の発言を踏まえ、本提案は棄却された。
 
(4)油排出監視装置(ODM)に関する提案(BLG8/4/5(蘭))
 プレナリーでの審議(初日)において、油性物質を全て船内で保持することを前提にした船舶については、ODMを持たなくてよいとの本提案については、サイプラスより提案のように細かく免除規定を設けていくことに反対との発言があった。また、ノルウェーより受入施設が整備されているかどうか分からないのにそのような規定を設けることは不適切との発言があり、我が国もこれを支持した結果、本提案は棄却された。
 
(5)油除去装置に関する統一解釈の追加提案(BLG8/4/6(スウェーデン))
 プレナリーでの審議(初日)で、新14.1及び14.2規則に関して油除去装置に関する解釈の追加を求める本提案については、我が国らが、油分濃度計、15ppm警報等の搭載義務範囲に関して解釈案の内容が規則の規定内容を逸脱しているとの指摘を行った結果、本提案は棄却された。
 
(6)プレナリーでのWGレポートの審議(WG後)
 米国からの提案により、FPSOs及びFSUsに船種変更されたタンカーを再びタンカーとして運航する際に「主要な改造」を行ったものとみなし、13F、G規則等がかかるとの解釈が、合意され今回の附属書I関連の文書に反映された。
 その他については、特段の審議無く承認された。







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