日本財団 図書館


4. 国際海事機関(IMO)での検討経緯・結果
 英国より油排出監視制御装置の信頼性に関する調査結果が報告され、今後具体的な提案を行うことが表明された。委員会では本件が重要な問題であることを認め、その本質を見極めた上で関係の小委員会に付託することを合意した。
 
 オランダより艦艇で使用した膜技術による油水分離器の性能に関する情報が示された。また米英両国よりそれぞれ自国での調査研究結果が報告された。委員会は更なる情報等を収集した上で、第42回海洋環境保護委員会で検討することとした。
 
 1973/78年の海洋汚染防止条約(MARPOL73/78)に基づく油汚染防止装置関連の指針及び仕様に関する決議、即ち海洋環境保護委員会決議:MEPC.60(33)「機関室ビルジの汚染防止装置の指針及び仕様」(平成4年10月採択)及び国際海事機関総会決議:A.586(14)「油タンカーの油排出監視制御装置の指針及び仕様」(昭和60年11月採択)の見直しが討議された。また、オランダ、英及び露から提出された文書を審議し、この見直し作業を「船舶の設計、設備」(DE)小委員会に付託することを合意した。なお、DE小委員会での作業はMARPOL73/78附属書Iの見直しが別途行われていることに鑑み、この作業の完了目標日としている平成14年を目途に、MEPCでの審議及び採択を考慮の上、成案の準備をするよう指示した。
 
 MEPCからの付託事項に関連する、予定の資料の提出がなかったため、実質的な見直し作業は行われなかった。次回以降、専門家による作業部会及び関心を有する各国間で非公式コレスポンデンスグループを設置することが検討され、わが国も参加を表明した。
 
 決議:MEPC.60(33)及び同:A.586(14)の見直し案の検討が開始された。オランダが提出した関連資料が紹介され、作業部会において具体的な作業が行われた。作業部会では、現在の油水分離器及び油分濃度計の性能が、実船のビルジに混入している未解明の油の処理に機能仕切れていないことに注目した。適切な検討を行うため、「装置の改良」及び「試験仕様の改善」を前提に、検討の対象として「乳化流体」、「試験流体」、「新技術の導入」、「油分濃度計の封印」、「油分濃度の記録」及び「乗組員の教育・訓練」の6項目を選定した。見直し作業の完了目標年までに効率的に作業を進捗させるため、コレスポンデンスグループが発足し、我が国もこれに参加した。
 
 会議の開催にあたり、コレスポンデンスグループが行う検討事項に関連して、我が国は以下の表明を行った。
 
・ビルジの処理を「ビルジのトータル処理システム」として検討すること。
・「油分濃度の記録装置」、「油分濃度計の封印」は見直し作業の付託事項外であるのでMEPCの指示を求めるべきであること。
・ISOによる油分濃度測定方法の基準作成は、国家間の審議機関であるIMO自身が検討すべきであること。
 各国の対応状況を考慮しつつ、作業部会は各決議の詳細な見直し作業を行った。
・「ビルジのトータル処理システム」は海洋環境保護委員会回章:235号「船舶の機関室の油性廃物処理システムに関する指針」(平成2年12月13日)を念頭に、MARPOL条約の規則として検討するようMEPCに提案することとした。
・用語の変更について「油除去装置」を「15ppm油水分離器」に「油分濃度計」を「15ppm警報装置」とすることとした。
・「記録装置」の導入は新造船を対象とすることとした。
・15ppm油水分離器の型式承認試験に用いる試験流体については、A、B及びCの3種に混入する燃料油、界面活性剤及び懸濁固形物の種類及び成分量を定めた。
・15ppm警報装置の型式承認試験に用いる試験流体については、継続審議とし情報収集につとめることとした。
・型式承認試験用設備については、見直し案に記載する構成案を作成した。
・型式承認試験において採取した試料の油分濃度測定方法の統一基準については、各国とも異なる測定方法を用いているので、ISOに検討を依頼することとした。現時点では現行の赤外分光法によることとした。
 なお、決議:A.586(14)の見直しは、時間的制約のため原案作成にまで至らなかった。
 
(1)統合ビルジ処理システム(IBTS)及び15ppm警報装置の改ざん防止等に関する我が国の提案について
 英国を始めとする多くの国から、IBTSは有効なビルジ処理システムであり、特に機関室の狭い小型船舶には効果的であるとの支持があった。これに伴い、次回DE小委員会よりIBTSを決議:MEPC.60(33)の見直し作業に含めて検討することが合意された。
 15ppm警報装置の改ざん防止措置については、構成要素の封印部分に対して十分な理解が得られなかったことから、更なる検討を継続することとなった。
(2)油分濃度測定に用いる赤外分光法の代替案について
 決議:MEPC.60(33)及び同A.585(14)に定める油分濃度測定のための赤外分光法は、油分抽出に用いる薬剤「四塩化炭素(CCl4)」がオゾン層破壊指定物質であるとの指摘があった。このため、赤外分光法に変わって「ガスクロマトグラフ」の採用が提案された。今後、国際標準機関(ISO)が「ガスクロマトグラフ」を油分濃度測定の代替案とするための作業を開始することとなった。DE小委員会では、この提案について「油分濃度測定の性能」、「現行法の削除の可否」及び「現行法と代替案の比較」を検討することとなった。
 
(1)決議:MEPC.60(33)に関する審議の模様は、以下のとおりである。
a. 15ppm油水分離器の「緊急時の機能」
 非常用手動操作機構に代わって、フエールセーフ(誤操作防止安全)機構とする。
b. 15ppm警報装置の「応答時間」
 流体が警報装置に流入したときから、5秒以下とする。
c. 15ppm警報装置の「記録装置」
 日時及び警報の状態を記録し、記録は3年間保管すること。精度の点検は製造者が認定した者のみが行うか、または較正された警報装置と交換することとする。
d. 15ppm油水分離器の「供給ポンプの容量」
 分離器の処理能力の110%を超えないものとする。
e. 試験流体の「組成」
 残渣燃料油を用いる試験流体は、残渣燃料油の仕様をISO.8217に示すRMF25またはRMG35とし、摂氏15度における比重が0.98以下にならないこと。また試験流体Cの油分は、試験流体1000gに対して3g(0.3%)を含むものとする。
f. 試験流体の「仕様及び試験方法」
 我が国より、試験流体の「仕様及び試験方法」に対して提案を行ったが、試験時間について8時間程度以下とすることを除き、試験流体A及びBの乳化濃度については、意見の一致を見ることが出来なかった。試験仕様をより簡明にすること及び試験流体再利用の観点から試験流体A.B及びCを個別に用いて試験する原案が好ましいとする意見もあり、更なる検討を行うこととした。
g. 15ppm警報装置の不調による規制濃度超の油分を含むビルジを排出した時の責任について
 我が国より、15ppm警報装置が改ざん防止のために封印された場合、装置の不調に起因して規制濃度を超える油分を含むビルジを船外に排出する恐れのあることの懸念を指摘した。この様な排出を生じた場合の責任について、定期的に較正を行い証書の発給に係わる製造者側と封印により調整不能な乗組員のいずれにあるのか、問題提起を行った。相当の関心は示されたものの、結論を得るまでには至らなかった。
(2)決議:A.586(14)に関する審議
 提出資料にもとづき審議が行われ、大きな進展があった。しかし、時間的制約のため最終的成案を得ることが出来なかった。今回の見直し案は、次回のDE46小委員会に上程されることとなった。なお、性能基準、技術仕様の改正決議は今後MEPCが対応すべきであるとされMEPC決議とすることが望ましいとの認識で一致した。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION