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3. 調査研究の成果
 本委員会は、IMOが平成12年に開始した海洋環境保護委員会決議:MEPC.60(33)「機関室ビルジの汚染防止装置の指針及び仕様」および国際海事機関総会決議:A.586(14)の見直しに対応するために設置されたものである。
 IMOにおける両決議の見直し作業は3年で終了し、平成15年に成案を得る予定としている。この作業を実施するに当たり、海洋環境保護委員会は「船舶の設計設備(DE)小委員会」に見直し作業を付託し、原案を得ることとした。DE小委員会では、見直し作業を実施するに際して、定例会合の時間のみでは不足と判断し、コレスポンデンスグループを設けて、次期会合までの間においても情報交換を行い、作業の進捗を図った。
 本委員会では、国内の関係分野における官民からの意見を集約、調整してIMOでの審議の場に臨んだ。見直し作業の要点は、以下の6項目に置かれた。
 
・型式承認試験の仕様に乳化流体を追加する。
・型式承認試験に用いる試験流体の成分を見直すこと。
・新技術を導入すること。
・油分濃度計を封印すること。
・油分濃度計に記録装置を付加すること。
・乗組員の教育、訓練に関すること。
 
 これらの6項目のうち、
 乗組員の教育・訓練に関する事項は、IMOの「船員の訓練、資格及び当直(STCW)小委員会」の所掌事項(ISMコード)の要件を採用することとし、当委員会の検討課題から除外した。
 他の5項目に関しては、コレスポンデンスグループへの連絡の都度、DE小委員会及びMEPC開催の時期に合わせて、我が国の意見の反映に務めるとともに、資料の提出を行い、積極的に作業部会にも参画して、これらの会合に貢献した。
 
・「型式承認試験の仕様に乳化流体を追加すること」については、当委員会が2年間に渡って実施した研究室内実験及び実器試験設備規模での実験結果を解析して、DE小委員会に資料を提出し、見直し案の作成に寄与した。
 
・「型式承認試験に用いる試験流体の成分を見直すこと」については、実船のビルジ採取による実態調査を纏め、その結果をDE小委員会に提示し、試験流体成分仕様の検討の用に供した。
 
・「新技術の導入」については、ビルジの油水分離技法として、欧米が採用している「膜式油水分離方法」を解析した上、保守・整備及び労働負荷を含めて船舶用としての適否の判断を行った。
 
・「油分濃度計の封印」については、乗組員の通常の保守・整備を必要とする部分を除き、油分濃度検出の中枢部分のみとすべきこと。また油分濃度計の意図的改ざん防止を効果的に行う方法について意見を表明し、問題点の解明と具体的措置の検討に貢献した。
 
・「油分濃度計への記録装置の付加」については、特段の技術的問題のないことを確認し、新造船より適用することとして賛意を表した。
 
 これらの主要課題に対応したほか、我が国が提案した「統合ビルジ処理システム(IBTS)」が機関室ビルジ処理に有効であることがMEPCにおいて認められ、海洋環境保護委員会回章:235号「船舶の機関室の油性廃物処理システムに関する指針」(平成2年12月13日)との関連において一層の検討を推進する事が決定した。
 この事実は、我が国の提案が国際的に認識された大きな成果の一つに挙げられるものと思われる。







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