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船舶安全法施行規則の一部改正について
 
平成14年2月
海事局
 
1. 改正の背景
 安全管理手引書は、船舶及び当該船舶を管理する陸上の事務所の組織、業務計画等を文書化したマニュアルであり、船舶・陸上を含めたトータルな安全管理システムの構築及び確実な実施を目的として、1974年の海上における人命の安全のための国際条約(昭和55年条約第16号。以下「条約」という。)により、その作成と船内への設置が義務付けられている。
 安全管理手引書は、1987年3月に発生したヘラルド・オブ・フリーエンタープライズ号の転覆事故(水密扉の閉鎖不良、188人死亡)等近年の海難事故の多くが人的要因により発生しているとの認識から、その対策として1994年5月の条約改正により導入されたもので、国際航海に従事する船舶に対し、次のとおり段階的に適用されることとなっている。
(1)1998年7月1日から適用の船舶
(ア) 旅客船
(イ) 総トン数500トン以上の貨物船の一部
 (油タンカー、ケミカルタンカー、ガズ運搬船、ばら積み貨物船、高速貨物船)
(2)2002年7月1日から適用の船舶
 総トン数500トン以上の貨物船で(1)(イ)以外のもの
 我が国では、船舶安全法施行規則(昭和38年運輸省令第41号)第12条の2の規定により安全管理手引書の作成及び船内への設置を義務付けているが、対象船舶は上記(1)に限られている。これは、条約改正を受けて国内法令を改正した平成9年当時、上記(1)と(2)では適用開始年月日が大きく離れていることから、(2)への適用に当たっては、しかるべき時期に別の省令により改正を行うのが適当であるとの法令的な判断によるものである。
 このため、安全管理手引書の適用範囲を条約どおりに拡大する必要があるが、安全管理手引書の審査には十分な期間が必要とされることに鑑み、条約適用3ヶ月前の施行を目途として省令改正を行う。
 
2. 改正の概要
(1) 船舶安全法施行規則第12条の2第1項の適用対象を、総トン数500トン以上の一般貨物船にも拡大する。
(2) 今回新たに適用対象となる船舶で、施行日に現に船舶検査証書を有する船舶については、平成14年7月1日まで適用しないよう所要の経過措置を設ける。
 
3. 今後の予定
 公布:平成14年3月上旬
 施行:平成14年4月1日
 
船舶区画規程等の一部を改正する省令について
 
平成14年6月
海事局安全基準課
 
1. 改正の背景
 我が国では、船舶の施設について定めた船舶安全法(昭和8年法律第11号)第2条第1項に基づく命令である船舶区画規程(昭和27年運輸省令第97号)において、船体に設けるべき区画の要件が定められている。
 この区画の要件は損傷時復原性を確保するために必要なものである。船舶が風や波等で傾いても起きあがって元に戻り、安定して浮いていることが出来る能力のことを復原性という。船舶の復原性には2種類あり、損傷のない通常の状態での復原性を非損傷時復原性あるいは単に復原性といい、損傷して浸水した場合においてもなお残存する浮力により維持される復原性を損傷時復原性という。
 このうち、損傷時復原性については、1974年の海上における人命の安全のための国際条約(昭和55年条約第16号)(以下「SOLAS条約」という。)によりその要件が定められており、我が国では、船舶区画規程においてSOLAS条約と同様の内容を規定し、国際航海に従事する船舶に適用するとともに、内航のRORO旅客船に対しては、通達に基づき独自の損傷時復原性基準を適用している。
 国際海事機関では、1994年に発生したRORO旅客船エストニア号の事故を契機としてRORO旅客船の安全対策を大幅に強化するSOLAS条約改正を行ったが、その後、非RORO旅客船についても安全対策の見直しを進めてきたところ、今般、同条約が改正され、最大搭載人員400人以上の国際航海非RORO旅客船の損傷時復原性基準が強化され、非RORO旅客船に対してもRORO旅客船とほぼ同様の損傷時復原性基準が適用されることとなった。このため、船舶区画規程において同様の改正を行う必要がある。
 また、これを契機として、我が国の内航旅客船においてもRORO旅客船と非RORO旅客船の区別無く損傷時復原性の要件を課すことについて検討を進めてきたが、我が国においても、毎年十
数隻程度の旅客船が衝突、乗り上げ海難を起こしており、そのような海難により船体を損傷、浸水する可能性があること等から、内航旅客船においてもRORO旅客船と非RORO旅客船の両方に損傷時復原性の要件を課すべきであるという結論に達した。
 
2.改正の内容
(1)最大搭載人員400人以上の国際航海非RORO旅客船に対し要件を追加。
(2)内航RORO旅客船に課す損傷時復原性基準の設定(現在の通達により定めている基準を若干強化する。)
(3)内航非RORO旅客船に課す損傷時復原性基準の設定(内航RORO旅客船に課す予定の損傷時復原性基準よりは緩い。)
 
3. 今後のスクジュール
 公布:平成14年6月下旬
 施行:平成14年7月1日
 
内航旅客船の損傷時復原性に係る基準の改正
 
 改正により、損傷時復原性に係る要件として、次のとおり、(2)の要件を追加。
 
現行 改正案
(1)損傷による浸水後も十分な浮力が残っていること。
  (風浪のない静的な状態で浮いていられること。)
(1)損傷による浸水後も十分な浮力が残っていること。
  (風浪のない静的な状態で浮いていられること。)

(2)残った浮力により一定の復原性が維持されること。
(風浪のある状態でも浮いていられること。)
 
 
内航旅客

船の種類
長さ 想定浸水区画数
現行 改正案
(1)の要件 (2)の要件 (1)の要件 (2)の要件
RORO 45m未満 1 - 1 1
45m以上 79m未満 1※ - 1※ 1
79m以上 2 - 2〜3 1〜3
非RORO 79m未満 - - 1 1
79m以上 - - 1〜3 1〜3
※船首尾においては二区画







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