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報告 III
国内規制の動向について
 
III 国内規制の動向について
 
国土交通省海事局 安全基準課
金子 栄喜
 
1. SOLAS条約改正等に伴う省令改正について
 第69回海上安全委員会(MSC)(1998年開催)から第73回MSC(2000年開催)において採択されたSOLAS条約の改正及び第44回海洋環境保護委員会(MEPC)(2000年開催)から第46回MEPC(2001年)において採択されたMARPOL条約の改正が本年7月1日又は9月1日に発効することに伴い関係省令等の改正を行った。
(1)SOLAS条約改正関連
●ISMコード適用船舶の拡大
●旅客船の2区画可浸
●航海設備要件の強化
●消防設備の見直し
●アスベストの使用規制
(2)MARPOL条約改正関連
●シングルハルタンカーフェーズアウト
 
2.  限定近海船等に係る省令改正等について限定近海船関連規則の整備、
 測地系の見直し等により以下の関係省令等の改正を行った。
●限定近海船の満載喫水線規則の整備
●海図の変更
●小型船舶の兼用拡大
●小型船舶用救命胴衣技術基準の見直し
 
3. 未発効条約の国際的動向について
(1) 船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約
   2001年10月に採択され、欧州及び米国で規制の検討が行われている。欧州においては、EU指令の改正を行い早期に有機スズ系塗料の使用規制を行うこととしている。
(2) MARPOL条約附属書VI(大気汚染防止)
   1997年9月に採択された附属書VIには、北欧を中心として5カ国が批准している。米国は、現在、批准のための作業を進めており、議会を通過しだい批准することとしている。また、米国では、条約の窒素酸化物にかかる規制が緩いとして、独自の厳しい規制を検討している。(条約基準の30%減)
 附属書VIは、採択の際、5年後に発効しない場合は、発効要件を含めて見直すこととしており、当該見直しが2003年から行われる。
(3) トレモリノス条約議定書
   1993年3月に採択されたトレモリノス条約議定書には、北欧を中心として8カ国が批准している。その他の国で批准へ向けた作業を行っている情報はないものの、中国において漁船検査のための「漁船船舶法定検査規則」が2000年6月から施行されている。
 
4. その他
 2001年のIMO総会で採択された海上衝突予防条約の改正が2003年11月に発効することとなり、号鐘の設置免除船が拡大される。(長さ12mから20m)
 
1. 未発効条約の国際的な動向について
条約 採択日 批准国 概要 動向
TBT条件*1 01年10月 0 03年1月以降 塗布禁止 米国:検討中
EU:欧州委員会指令にて実質強制化
08年1月以降 存在禁止
発効要件:25カ国 25%
MARPOL附属書VI*2 97年9月 5 窒素酸化物、硫黄酸化物等の排出規制 米国:法案を国会に提出済
発効要件:15カ国 50%
トレモリノス議定書*3 93年3月 8 SOLASの漁船版 中国:漁船船舶法定検査規則(00年6月施行)
EU:欧州委員会指令にて実質強制化
発効要件:15カ国 14000隻
  *1:船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約
  *2:1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書 附属書VI
  *3:1977年の漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関する1993年の議定書
 
2. SOLAS改正による国内規則改正等について(平成13年10月〜)
事項 公布日 施行日 改正等概要 備考
限定近海船要件 01年10月 01年10月 ●限定近海船満載喫水線要件 規制緩和
海図の変更 02年3月 ●測地系の変更(日本測地系→世界測地系)に伴い海図変更 世界的な動向
小型船舶の兼用拡大 02年3月 02年4月 ●小型漁船の兼用を遊漁船から作業船等へ拡大 規制緩和
ISMコード適用拡大 02年3月 02年3月 ●国際航海貨物船のISMコード義務化 SOLAS条約改正
旅客船の2区画可浸 02年6月 02年7月 ●一般旅客船の損傷時復原性要件 SOLAS条約改正
航海設備要件の強化 02年6月 02年7月 ●AIS、VDR等の設置 平成13年度成果報告参照
消防設備要件の強化 02年6月 02年7月 ●機関室局所消火装置等の設置 平成13年度成果報告参照
アスベスト使用規制 02年6月 02年7月 ●エッセンシャルユース以外への新規使用の禁止 SOLAS条約改正
シングルハルのダブルハル化 02年6月 02年9月 ●シングルハルのダブルハル化の前倒し MARPOL条約改正
小型救命胴衣技術基準改正 02年10月 03年前期 ●色要件緩和、小児用救命胴衣細分化、浮力補助具追加 船舶職員法改正
海上衝突予防法の改正 本年末予定 03年11月 ●号鐘設置免除船舶の拡大(12m→20m) COLREG条約改正
      ●表面効果翼船に係る規定の追加  
海上保安 未定 04年前期 ●AIS既存船適用前倒し等 SOLAS条約改正
アクセス設備 未定 04年後期 ●タンカー、バルカーに検査用のアクセス設備を義務化 SOLAS条約改正
水位監視 未定 04年後期 ●バルカー船倉に水位監視装置を義務化 SOLAS条約改正
 
 
TBT条約の概要
(拡大画面:101KB)
附属書  
I: 防汚方法の管理
II: 新規物質提案に必要な事項
III: 技術グループ審議に必要な事項
IV: 防汚方法のための検査及び証書の要件
 
 
船舶安全法施行規則の一部改正について
 
平成14年2月
海事局
 
1. 改正の背景
 安全管理手引書は、船舶及び当該船舶を管理する陸上の事務所の組織、業務計画等を文書化したマニュアルであり、船舶・陸上を含めたトータルな安全管理システムの構築及び確実な実施を目的として、1974年の海上における人命の安全のための国際条約(昭和55年条約第16号。以下「条約」という。)により、その作成と船内への設置が義務付けられている。
 安全管理手引書は、1987年3月に発生したヘラルド・オブ・フリーエンタープライズ号の転覆事故(水密扉の閉鎖不良、188人死亡)等近年の海難事故の多くが人的要因により発生しているとの認識から、その対策として1994年5月の条約改正により導入されたもので、国際航海に従事する船舶に対し、次のとおり段階的に適用されることとなっている。
(1)1998年7月1日から適用の船舶
(ア)旅客船
(イ)総トン数500トン以上の貨物船の一部
 (油タンカー、ケミカルタンカー、ガス運搬船、ばら積み貨物船、高速貨物船)
(2)2002年7月1日から適用の船舶
 総トン数500トン以上の貨物船で(1)(イ)以外のもの
 我が国では、船舶安全法施行規則(昭和38年運輸省令第41号)第12条の2の規定により安全管理手引書の作成及び船内への設置を義務付けているが、対象船舶は上記(1)に限られている。これは、条約改正を受けて国内法令を改正した平成9年当時、上記(1)と(2)では適用開始年月日が大きく離れていることから、(2)への適用に当たっては、しかるべき時期に別の省令により改正を行うのが適当であるとの法令的な判断によるものである。
 このため、安全管理手引書の適用範囲を条約どおりに拡大する必要があるが、安全管理手引書の審査には十分な期間が必要とされることに鑑み、条約適用3ヶ月前の施行を目途として省令改正を行う。
 
2. 改正の概要
(1) 船舶安全法施行規則第12条の2第1項の適用対象を、総トン数500トン以上の一般貨物船にも拡大する。
(2) 今回新たに適用対象となる船舶で、施行日に現に船舶検査証書を有する船舶については、平成14年7月1日まで適用しないよう所要の経過措置を設ける。
 
3. 今後の予定
 公布:平成14年3月上旬
 施行:平成14年4月1日







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