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13. (社)日本舶用工業会
研究項目 研究期間 担当 平成14年度
予算(千円)
研究開発内容
計画 年度
1. 将来燃料油の燃焼特性計測装置用高精度燃料ポンプ     事業グループ
技術チーム
  船舶による海上輸送は世界交易の90%以上を占め、消費するエネルギーも多大なものとなる。ここに経済原則が導入され、残渣油の利用や陸上廃油の舶用燃料への混入などが促進された。この結果、大気汚染や舶用機関のトラブルの増加が助長された。特に海上輸送の主力であるディーゼル機関のスカッフィングは、被害が甚大であり運航経済を圧迫する大きな要因となっている。 燃料の燃焼性に起因するスカッフィングを予測防止するには、燃焼後期の火炎の観察が不可欠となる。しかし既存の燃焼試験装置は、燃料噴射の精度が悪く火炎観察の基準がばらつくので、適正な観察が出来ずにいる。 本調査研究は、スカッフィングを引き起こす燃料を使用前に予測する事を前提とし、これに適した燃料ポンプを開発する事を目的に実施する。
2. 超高効率・高出力・低公害舶用内燃機プラント     事業グループ
技術チーム
  舶用内燃機関における高出力化・高性能化・コンパクト化への要求が持続拡大する一方で、C02削滅および公害物質の排出抑制は至上の命題となってきている。先行する自動車用内燃機の排出規制は、将来あらゆる内燃機関を含めた熱機関すべてに波及することは必至であり、またその規制に先んじて超高効率低公害舶用内燃機関を開発し実用化することは、社会経済並びに舶用工業に対する計り知れない貢献を果たすことになる。 本調査研究では、出力数MW〜十数MWクラスの舶用内燃機プラントを対象として、革新的な性能改善(熱効率55%レベル以上)を実現する「排熱回収エネルギー筒内帰還型内燃機関」のF/Sに取り組む。本システムは、機関の排熱を利用して活性化した気液混合状態の高温・高圧の水、いわゆる超(亜)臨界水を生成し、それを内燃機の筒内に噴射して、効率・出力向上、および有害排出物の低減を図るものである。 本年度は、システムのモデル構築、超(亜)臨界水の燃焼浄化作用、またシステム構成要素の検討などの調査研究を行い、システムの実機実現性を確認することを目的とする。これにより、実証試験事業化への道を切り開くことが可能となる。
3. 4ストロークディーゼル機関燃料噴射制御     事業グループ
技術チーム
  舶用ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物NOxは大気汚染の原因の一つとして、その低減が求められており、IMOは外航船に対し段階的にNOx排出量の低減を義務化する規制を実施する。この規制の第二次レベルをクリアする方法として、噴射圧力の高圧化、プリ噴射・ポスト噴射・断続噴射などにより各負荷状態において最適なタイミングで燃料噴射制御する方式が有効であると考えられている。一方、将来規制化されると予想されるC02排出量の低減については、燃費の低減が有効であることがわかっており、燃料噴射の最適制御方式は燃費低減も兼ね備えているため、将来NOx規制が強化された場合も、根幹となる方式である。 本調査研究では、4ストロークディーゼルエンジンを対象とした、燃料噴射の最適制御装置を製品化し、普及促進につなげる。
4. IT技術を利用した小形舶用エンジンのメンテナンス     事業グループ
技術チーム
  小形舶用エンジンの主な使用先である国内沿岸漁業は、漁業資源の減少などによる生産高の減少傾向が止まらず、後継者不足から来る漁業者の高齢化が進んでいる。このため、自船エンジンの保守管理にも十分な手間を掛けられない状況になりつつある。一方、機関メーカーサイドでも売り上げ減からくる人員削減が避けられず、ユーザーに密着した十分なフォロー体制を維持することが難しくなって来ている。 この様な状況下、エンジンに掛かる負担は漁場の遠距離化による高負荷連続運転や、栽培漁業の増加による急加減速の繰り返し運転などによって急増している。 このため、不適切な運転やメンテナンス不足が増加、故障や生能・寿命劣化など安全性と経済性双方で問題を引き起こしており、保全活動の仕組みを根本的に変革する必要が出てきている。 本調査研究は小形舶用エンジンの保全活動を効率化して故障や性能劣化を未然防止、これによりエンジンに関わる総ライフサイクルコストを低減すると共に、運行の安全を確保することを目的として、IT技術を利用した小形舶用エンジンの遠隔式保全支援システムを開発するものである。
5. 舶用内燃機関に対する環境規制とクリーン燃料油     事業グループ
技術チーム
  舶用ディーゼル機関は、その高い熱効率によりC02の排出抑制には貢献する一方で、NOxやSOxの排出量は他の熱機関に比べるとかなり多い。このためIMOでは、船舶からの大気汚染防止に関する新議定書を採択し、NOxやSOx(燃料中硫黄分)については規制が適用されることとなった。 しかし、今後これらの規制は、特定海域や内航船舶などを対象に強化されることは必至と考えられ、従来の燃料を使用しつつ厳しい規制に対応できるかどうかは極めて疑問がある。 このため、本調査研究では、舶用内燃機関におけるクリーン燃料の使用をその対応策の有力侯補としてとらえ、その経済性を調査するとともに、環境規制に対する適合性や技術課題を把握して将来エンジン開発の指針を得ることを目的とする。
6. 舶用ディーゼル機関の起振力低減     事業グループ
技術チーム
  近年、舶用ディーゼル機関の高出力・高効率化は目覚しく、機関の往復動・回転慣性力が増大し、そのバランシングが重要となっている。従来は不釣合偶力による船体振動の懸念から、必要以上のシリンダ数を選択する場合や、2次バランサーといった高価な装置を追加装備する場合があった。これらに対し、クランク軸不等角度配置(不等着火)により良好なバランスを有する機関を製作することが有効であることは知られているが、最適化の課題として一般化されていない。 本調査研究により解法の意味合いを明確にすることにより、最近の計算ソフト・ハード並びに情報工学の進歩と相まって、あらゆる気筒数の機関に対してバランス最適化を検討するシステム開発が可能となる。これは、船舶建造コストの低減に大きく寄与し、舶用機関の経済性・信頼性を向上するものであり、わが国の船舶関連業界全体の国際競争力強化に貢献することができる。
7. 内航船用小型高精度軸馬力計     事業グループ
技術チーム
  内航船の活性化の一つとして、運航管理と安全性向上及び運航コストの低減が望まれている。このための対策の一つに、主機関の運転状況を的確に把握し、トルクリッチによる事故を防止すると共に燃料経済性を高める方法がある。 主機関の出力を計測する装置としては従来から軸の捩れ角と回転数から馬力を算定する軸馬力計が用いられているが、従来の馬力計は寸法、重量共に大きく高価格のため内航船舶には普及しなかった。本研究は微弱なレーザー光線と反射鏡及び規のアルゴリズムにより小型で高精度の軸馬力計を実現するものである。
8. 小型・高性能のスリム型デッキクレーン     事業グループ
技術チーム
  貨物船のデッキ上に据え付けられるデッキクレーンは、限られた積載スペースを有効に確保するため、可能な限りコンパクトで軽量であることが求められる。特にコンテナ船に搭載されるデッキクレーンは、積載コンテナ数を可能な限り増加出来るようコンテナ幅に合わせた外形寸法2.4m以内のコンパクトさが要求されている。この2.4m以内のクレーンはスリム型クレーンと呼ばれる市場に出回っているが、価格は通常型(4.4〜4.6m)に比べ約2倍もする。本調査研究では、従来型とは異なる小型、高性能なスリム型のデッキクレーンの開発を目的として実施する。
9. 漁船冷凍設備向け汎用冷媒R22の代替冷媒R417Aの能力/運用面     事業グループ
技術チーム
  現在開発され一部使用されているオゾン破壊係数がゼロであるR404A、R407C、R507A、R134aなどのHFC系冷媒は、既設のR22設備に対して、圧力、冷凍機油等の面からそのまま冷媒のみを置換して、現用設備を再利用することができなかった。ところが、冷媒の置換だけで冷凍設備は冷凍機油も含めてそのまま可能であるR22の代替冷媒として、HFC系冷媒であるR417Aが最近紹介されるようになってきた。 このことは、現在、R22を使用している既存漁船の冷凍設備およびその他の冷凍設備にとって朗報ではある。しかしながら、この冷媒を実際に既設のR22設備に充填し、R22との性能比較およびR22用既設器機の再調整方法等について報告した公的な技術資料は殆どなく、特に遠洋鮪延縄漁船に見られる超低温装置では皆無である。 またR22の生産量は、2004年までに65%の生産規模に縮小されその後も、段階的に生産の縮小を行い、2020年には製造全廃となるが、現装冷凍装置にそのまま置換できると言われているR417Aの性能調査、技術的資料の取得は急務であり、これらを実際に調査研究することを目的とする。
10. 環境保全型マイクロ水力発電装置用プロペラ     事業グループ
技術チーム
  現在、地球湿暖化抑制のため二酸化炭素排出を削減させるため自然エネルギーである太陽光、風力、波力、水力、潮力、バイオマス等の研究が進められている。 水力はダムを建設することで安定的に得られ現在最も利用されている自然エネルギーであるが、ダムの建設費用が嵩むことに加え環境破壊等によりダム建設は終焉を迎えつつある。今、この水力発電を手軽に得る動きがある。それは小規模発電機や低落差発電である。このような水力発電機は、送電の行えない離島や山岳部、発展途上国の国々の需要が期待できる。 今回実用化を目指すマイクロ水力発電とは日本に無数ある川などの超低落差で発電可能な小型水力発電装置である。同発電装置は潮流発電装置にも使用でき、装置の組み合わせとしては、舶用で使用されているサイドスラスタ技術の転用と発電機をセットしたものである。特に潮流発電の場合には耐食性等の舶用技術が必須となる。 本調査研究では、同マイクロ発電装置の重要な部分となるエネルギー回収用プロペラの最適な材質、形状及び回転方法について、舶用で蓄積したサイドスラスタ用プロペラの技術を応用し、サイドスラスタと発電装置を組み合わせたエネルギー回収装置としての最適なプロペラの設計法を求め、装置全体としての早期実用化を目的とする。
11. 新冷媒に対応したヒートポンプ式、オールシーズン除湿機     事業グループ
技術チーム
  先に開発したヒートポンプ式オールシーズン除湿機は、再熱に電気ヒーターを使用せず省エネルギーを重視し、主に造船ブロック塗装、二重底内塗装、船倉内塗装用に開発されたもので、高温多湿な時期のみならず、冬季のヒーティングによる除湿においても有効な製品として、すでに幅広く使用されている。しかし、上記開発品に使用していたHCFC系冷媒はモントリオール議定書で、近年全廃されることが決まった。 このため本調査研究では、取扱いが容易で信頼性の高い、新冷媒に対応したヒートポンプ式オールシーズン除湿機の開発を目的に実施する。







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